平成7年版 通信白書

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第1部 平成6年情報通信の現況

1 電気通信サービス


 6年の国際電気通信サービスの動向としては、国際電話サービスにおける選択料金サービスの充実、国際専用回線サービス及び国際ISDNサービスにおける通信速度の多様化・高速化等、様々な利用者ニーズへのきめ細かな対応が一層進展している。
 また、需要増及び事業者の経営の合理化・効率化等により得られた利益を利用者に還元するため、国際電話サービス及び国際専用回線サービスの料金値下げが行われたほか、国際ISDNサービス及び海事衛星通信サービスにおいても値下げが行われている。
 

(1)  国際電話サービス

 我が国における国際電話サービス取扱地域(注) の数は、6年度末現在で 233地域となっており、このうち国際ダイヤル通話は全体の約95%に当たる 221地域で取り扱われている。
 また、3年度から企業等に向け開始されている国際VPN(仮想私設通信網)型サービスは、一般の国際電話網を用い、我が国と海外の拠点を内線番号で結び、利用者独自の国際通信網を構築するもので、取扱地域数は6年度末現在で23地域に拡張している。
 一方、海外旅行者・出張者等に向け、海外からクレジットカードによる国際ダイヤル通話を提供するサービスは、6年度末現在で36地域に拡張し、海外から我が国のオペレータを経由(日本語対応が可能)して国際電話を取り扱うサービスも、6年度末現在で66地域に拡張するなど、国際交流の進展に伴う、国際電話の利用機会の促進や利便性の向上が図られている(第1-1-2-2表参照) 。
 6年度においては、個人利用者層を対象とした選択料金サービスである、特定通話先に係る割引サービス等の導入が行われ、利用者の通信量及び利用形態に応じた料金選択の幅が広がった。また、同年12月に国際電話料金の値下げ(KDD及び国際デジタル通信(株)(IDC):平均 4.1%、日本国際通信(株)(ITJ):平均 4.6%)が実施された。
 5年度における国際電話サービスの発着信合計分数(KDD、ITJ及びIDCの合計)は、23億 9,240万分であり、対前年度比10.0%(3年度18.6%、4年度 8.9%)増と、元年度から減少傾向が続いていた対前年度伸び率が再び増加に転じた。
 これを発着別にみると、我が国からの発信分数は対前年度比 9.9%増の14億 1,120万分、また、着信分数は同10.1%増の9億 8,120万分であり、発着信分数の比率は59:41と、発信が着信を上回る傾向が続いている(3年度は58:42、4年度は59:41)。
 また、取扱地域別にみると、前年度に引き続き米国との通話が全体の約28.0%と最も多く、以下、上位10地域のうち7地域をアジアNIEs、中国及びASEANの一部が占めており、我が国とこれらの地域との社会的・経済的関係の強さがうかがえる(第1-1-2-3図参照) 。
 

(2)  国際専用回線サービス

 6年度末現在 103地域で取り扱われている国際専用回線サービスは、企業等の利用者による海外との高速ファイル転送、データ伝送等の需要にこたえ、中・高速符号伝送用回線(通信速度1,200b/s〜6Mb/s :ファクシミリ、データ伝送、高速ファイル転送、テレビ会議等に利用)の取扱いが拡張しているほか、回線速度の多様化も図られている。
 6年12月に、KDDの国際専用回線サービスにおいて、回線使用料の値下げ(平均15.4%)及び一契約者の取扱地域の数に応じた回線使用料の減額(5%〜15%)が実施され、7年2月にはITJ及びIDCにおいても同様の値下げ(それぞれ平均19.0%、20.2%)、減額(ともに5%〜15%)が実施された。
 国際専用回線サービスの5年度末の総提供回線数(KDD、ITJ及びIDCの合計)は、対前年度末比 1.2%・20回線増の 1,666回線である。これを品目別にみると、音声級回線(帯域品目:電話等に利用)は同24.6%・ 107回線減の 328回線、電信級回線(速度 200b/s 以下の符号品目:テレタイプ通信等に利用)は同 8.6%・23回線減の 245回線と、音声級回線は昭和62年度をピークに、電信級回線は昭和56年度をピークに減少傾向が続いている。
 これに対し、中・高速符号伝送用回線は対前年度末比15.9%・ 150回線増の 1,093回線と大幅に増加し、総提供回線数に占める割合も、同 8.3ポイント増の65.6%となっている。このように国際専用回線サービスにおいては、音声級、電信級回線から中・高速符号伝送用回線への移行を含む、企業ユーザー等による高速・大容量の通信需要へのシフトが顕著となっている(第1-1-2-4図参照) 。
 回線数の伸びが著しい中・高速符号伝送用回線の回線数(5年度)について取扱地域別にみると、米国との回線数が最も多いという点は前述の国際電話サービス(発着信合計分数)の傾向と同様である。しかし、上位5地域に着目すると、国際電話サービスにみられた中国、台湾及びフィリピンは国際専用回線サービスにおいては含まれず、その代わりに香港、シンガポール及び英国が含まれるといった違いがみられる。
 また、中・高速符号伝送用回線の上位5地域の回線数が合計に占める割合は、4年度末とほぼ同じ約80%だが、その内訳において、シンガポール(4年度末第4位)が英国(同第3位)と入れ替わり第3位に、韓国(同第6位)がオーストラリア(同第5位)と入れ替わり第5位に上昇するなど、我が国とアジアNIEsとの回線数が伸びており、主なユーザーである企業等において、アジアNIEsとの結びつきが一層高まっている状況がうかがえる(第1-1-2-5図参照) 。
 

(3)  国際テレビジョン伝送サービス

 国際テレビジョン伝送サービスは、高品質のテレビジョン映像を通信衛星経由で伝送するKDDのサービスであり、これを利用して放送局の「衛星中継」等が行われている。取扱地域は、6年度にパプア・ニューギニア及びフィジーが追加され、6年度末現在 136地域となっている。
 通常の固定設備からの利用のほか、移動式の車載型地球局(6年10月に使用料値下げ)を利用した日本全国各地から海外への映像伝送や、映像用可搬型地球局を利用した海外から我が国に向けた映像伝送も可能になっている。
 

(4)  国際ISDNサービス

 国際ISDNサービスは、一本のデジタル回線によって、電話、ファクシミリ、パソコン等様々な端末を接続することができ、海外とのG4ファクシミリ、テレビ会議、高精細な静止画伝送や高品質な音声伝送等に利用されるサービスである。取扱地域は、6年度に新たに5地域(フィリピン、アイルランド、マレイシア、フィンランド及び韓国)が加わり、6年度末現在で27地域に拡張している。
 また、料金の値下げが6年4月にKDD(平均 0.8%)、5月にITJ(平均0.95%)及びIDC(平均 1.0%)によりそれぞれ実施された。
 

(5)  企業通信ネットワークサービス

 企業活動のグローバル化、高速デジタル回線や伝送システムに関する技術の高度化とともに、国際的な企業通信ネットワークの構築が活発となっている。企業通信ネットワークサービスは、企業ユーザーを中心とする国際通信の品質、安全性及び経済性への高度かつ個別の要求にこたえるため、国際通信システムの管理等の支援を含めた包括的な国際電気通信サービスとしてKDDにより提供されている。5年度末現在の利用者数は24となっている。
 

(6)  海事衛星通信サービス

 海事衛星通信サービスとは、船舶に船舶地球局設備を搭載し、赤道上に打ち上げられたインマルサット衛星と海岸地球局を通じて、船舶と陸地間又は船舶相互間の通信を行うサービスである。
 KDDにより、アナログ方式のインマルサットA型無線設備を用いた国際電話、テレックス、ファクシミリ及びデータ通信の提供、小型・軽量かつデジタル方式のインマルサットC型無線設備を用いた蓄積交換型データ通信等の提供、デジタル方式のインマルサットB型及びインマルサットM型無線設備による国際電話及びファクシミリ等の取扱いが行われており、船舶との間の通信の充実、船舶の航行安全、運航管理の一層の効率化等が図られている。
 同サービスでは、海上における人命及び船舶の安全への寄与を目的に、インマルサットA型、B型、C型及びM型無線設備による海事衛星通信サービスにおける、遭難・緊急/安全通信料金(船舶発)の無料化が図られ、医療活動等が困難な海上における人命救助や医療援助に一層の貢献を果たしている。また、インマルサットA型、B型及びM型無線設備による通常の通信料金の値下げ(平均17.5%)及び閑散時割引の時間帯の拡大が、6年5月に実施されている。さらに、規制緩和の一環として、船舶地球局設備新設時の電波検査においてKDDがその業務の一部を利用者に委託する運行者委託制度が、7年3月から導入されている。
 一方、GMDSSで注目されているインマルサットCのサービスは、従来オーストラリア経由で行われていたが、7年3月からKDD山口海岸地球局経由で行われている。
 

(7)  航空衛星通信サービス

 航空衛星通信サービスは、航空機に搭載した航空機地球局設備によりインマルサット衛星を経由して地上と通信を行うもので、航空衛星電話サービスと航空衛星データ通信サービスがKDDにより提供されている。
 航空衛星電話サービスは、航空機内の操縦室と地上の航空会社との間の通話や、航空機内から地上への一般通話を提供するものである。
 また、航空衛星データ通信サービスは、航空機が地上の航空会社等と行う、運航情報や気象情報等のデータ伝送を提供するもので、航空機の運航の安全と効率化に寄与している。
 

(8)  国際テレックスサービス及び国際電報サービス

 国際テレックスサービスの5年度取扱数(発着信合計)は 898万回(対前年度比19.3%減)と、昭和59年度の需要のピークを境に減少傾向が続いているが、6年12月、同サービスにおいて選択料金制が初めて導入され、利用者の通信量に応じた料金の低廉化が図られた。
 一方、国際電報サービスの取扱数も年々減少しており、5年度は対前年度比26.7%減の33万通となっている。
 

(9)  国際VANサービス

 国際VAN(付加価値通信網)サービスは、国際特別第二種電気通信事業者が国際第一種電気通信事業者から電気通信回線を借り、蓄積パケット交換、電子メール、蓄積交換ファクシミリ等の付加価値電気通信サービスを提供するものである。
 

(10) 国際通信回線設備

 7年1月、我が国とロシア及び韓国を結ぶR-J-Kケーブルの運用が開始された。同ケーブルは、我が国とロシアを結ぶ初めての光海底ケーブルであり、両国間で高品質かつ安定した国際通信サービスの提供が可能となるうえ、韓国との間でも、増大する国際通信需要にこたえるものである。我が国と世界とをつなぐ国際電気通信網は、年々拡充を続けている(第1-1-2-6図参照) 。
 このほか6年度においては、第1-1-2-7表 にあるとおり、光海底ケーブルの建設保守協定が締結されている。このように、安全性・信頼性の向上を目指した国際通信回線設備の増強が、国際電気通信事業者によって積極的に推し進められている。
 

(11) 国際電気通信料金

 国際電気通信料金は、KDDが昭和54年に国際専用回線サービスの値下げを実施して以来、通信量の増大や技術革新によるコストダウン等により、低廉化が進展しており、6年度においても、国際電話サービス、国際専用回線サービス等の料金値下げが実施されている。
 この状況は、日本銀行による「企業向けサービス価格指数」においても顕著に現れており、昭和60年平均を 100とした6年7月〜9月平均の国際電気通信全体の料金指数は51.8となっている。企業向けサービス全体の平均値が 116.5と上昇している中で、国際電気通信の価格水準は着実に下降しており、さらには、国内電気通信全体の平均値(84.1)をも大きく下回っている。国際電気通信サービスは、国内電気通信サービスと比較しても低廉化が顕著に進展していることがうかがえる(第1-1-2-8図参照) 。
 一方、急速な普及が進む携帯・自動車電話における、国際電話の不正利用防止対策として、料金収納業務に著しい支障を及ぼすことを事由とする通話停止規定の追加等(6年10月)、「みなし契約締結方式」から「個別契約締結方式」への変更等(7年2月)をそれぞれ内容とする、国際電話サービス等契約約款等の一部変更に係る認可が行われた。
 また、国際通信料金の支払い窓口については、従来からの金融機関、郵便局等に加え、ライフスタイルの多様化や生活時間の深夜化に対応して、全国の主なコンビニエンスストア等への一層の拡大が図られ、料金の決済が可能な商用クレジットカードの種類も増加するなど、利用者に対する利便性がさらに向上している。

第1-1-2-2表 主な国際電話サービスの取扱地域拡張状況(6年度)

第1-1-2-3図 取扱地域別国際電話取扱数比(発着信合計分数)

第1-1-2-4図 国際専用回線サービスの推移

第1-1-2-5図 取扱地域別国際専用回線数比(中・高速符号伝送用回線)

阪神・淡路大震災における車載型地球局の活躍

第1-1-2-6図 世界の国際電気通信網

第1-1-2-7表 6年度における光海底ケーブルの建設保守協定の締結状況

第1-1-2-8図 企業向けサービス価格指数の推移

 

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