平成7年版 通信白書

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第1部 平成6年情報通信の現況

第2節 経営動向


 1 電気通信事業者


 第一種電気通信事業者の5年度の営業収益をみると、全体としては、前年度と比べて増加している。その中でも携帯・自動車電話等の移動系の営業収益の伸び率が昨年に引き続き高い伸びをみせている。
 また、電気通信が自由化された昭和60年度以降の第一種電気通信事業者の電気通信事業営業収益(注) の伸び率を他の産業と比較してみると、第一種電気通信事業者は、他の産業のような大きな上下変動がなく、比較的安定して伸びているといえる(第1-2-2-1図参照) 。
 6年度上半期の第一種電気通信事業者の電気通信事業営業収益の対前年度同期比の伸び率は、5年度上半期の対前年度同期比より高くなっている。
 第二種電気通信事業者の5年度の営業収益(推計)は、前年度と比べて増加しているものの、伸び率は昨年の半分以下になっている。
 また、第一種電気通信事業者及び第二種電気通信事業者の設備投資動向をみると、第二種電気通信事業者は年度によって上下変動があるが、第一種電気通信事業者においては、比較的安定して推移している(第1-2-2-2図参照) 。
 営業収益及び設備投資額の伸び率の推移をみると、電気通信事業者は、景気の変動等の影響をあまり受けることなく、安定的な伸びを示しているといえる。
 

(1) 電気通信事業者の経営動向


 5年度の第一種電気通信事業者の経営状況についてみると、電気通信事業営業収益は対前年度比 5.9%増の7兆 3,235億円であり、国内第一種電気通信事業者は、同 5.8%増の6兆 9,955億円、また、国際第一種電気通信事業者は同 8.1%増の 3,280億円であった。
 「法人企業統計年報」(大蔵省)によると、全産業の5年度の営業収益は、対前年度比 1.8%減、製造業は同 3.3%減、非製造業は、同 1.2%減であった。5年度営業収益対前年度比、昭和61年度以降の対前年度比の推移、昭和60年度を 100とした場合の指数の推移を他の産業と比較しても、第一種電気通信事業者の営業収益は順調な伸びであったといえる(第1-2-2-1図 、1-2-2-3図参照) 。
 6年度上半期の第一種電気通信事業者の電気通信事業営業収益は、5年度上半期の対前年度同期比の伸び率 4.9%より高くなり、5年度上半期比 5.9%増の3兆 7,970億円となっている。これを国内電気通信と国際電気通信に分けてみると、国内は対前年度同期比 6.0%増の3兆 6,271億円、国際は同 3.9%増の 1,698億円であった。国内電気通信事業者の電気通信事業営業収益のうち、特に携帯・自動車電話、無線呼出し等の移動系が引き続き伸びており、5年度上半期の対前年度同期比より大きな伸びを示している。一方、国際電気通信事業者の電気通信事業営業収益のうち、主力である電話は5年度上半期の対前年度同期比に比べると低くなっているが、専用線が順調に伸びている(第1-2-2-4表参照) 。
 また、6年度上半期の第一種電気通信事業者の経常利益は対前年度同期比53.0%減の 760億円となっている。これを国内電気通信と国際電気通信とに分けてみると、国内は対前年度同期比59.8%減の 567億円、国際は同 5.9%減の 192億円であった。
  ア NTT
 5年度のNTTの経営状況は、総収益5兆 8,815億円(対前年度比 1.3%減)、営業収益5兆 8,090億円(同 1.4%減)、営業費用5兆 5,788億円(同 1.4%増)、経常損益は 1,094億円の黒字(同56.0%減)であったが、減収減益となった(第1-2-2-5表参照) 。
 この減収減益は、主に、5年10月に実施された市外料金値下げの影響と移動体分離の影響による携帯・自動車電話及び無線呼出しの収入減によるものと思われる。
 電話役務営業損益のうち加入電話の状況をみると、基本料は、1兆 1,521億円の営業収益(対前年度比 2.1%増)に対し、営業費用は1兆 3,169億円(同 3.1%増)で、営業利益は 1,648億円のマイナス(同11.0%増)、市内通話は、1兆 6,671億円の営業収益(同 3.6%増)に対し、営業費用は1兆 6,356億円(同 3.2%増)で、営業利益は 314億円のプラス(同27.1%増)、市外通話は、 9,787億円の営業収益(同13.9%減)に対し、営業費用は 4,576億円(同 2.4%増)で、営業利益は 5,211億円のプラス(同24.4%減)となっている(第1-2-2-6表参照) 。
 また、4年4月から事業部制の導入・徹底等が行われているが、その事業部制による経常損益をみると、地域通信事業部は、 2,230億円(対前年度比26.9%増)の赤字となる一方、長距離通信事業部は、 3,594億円(同21.0%減)の黒字となっている(第1-2-2-7表参照) 。
 5年度の各地域通信事業部の経常損益は、昨年同様東京、関東、関西は、黒字で、東京は前年度より黒字額が増加しているが、その他の地域は、赤字となり、ほとんどの地域で赤字額が増加している(第1-2-2-8表参照) 。
 4年7月にNTTから分離し、5年7月に地域別運営へ移行したNTTDoCoMo等地域別9社の5年度の営業収益は 5,740億円(対前年度比75%増)、営業費用は 5,336億円(同72.3%増)、経常損益は 198億円の黒字(同 178.9%増)であった。
 6年度上半期のNTTの経営状況をみると、営業収益は対前年度同期比 1.9%減の2兆 8,566億円、営業費用は同 0.8%増の2兆 7,685億円、経常損益は 354億円の黒字であったが、対前年度同期比の65.9%減で、3年続けて減収減益となった。
 これは、5年10月に実施された市外料金値下げの影響によるものと思われる。営業収益全体に占める電話収入の割合も77.5%(前年度78.3%)と昨年に続き 0.8ポイント減少している。
  イ 長距離系新第一種電気通信事業者
 5年度の長距離系新第一種電気通信事業者3社の経営状況は、営業収益が対前年度比26.5%増の 6,006億円と昨年に比べると大きな伸びとなる一方、営業費用は同33.3%増の 5,529億円となった。これは、5年11月に導入したエンドエンド料金制により、NTT回線使用分が、「収益」・「費用」に計上されることになったためであり、この結果、経常損益は 263億円の黒字となったものの対前年度比は 26.4%減であった。
 6年度上半期の営業収益は対前年度同期比39.0%増の 3,705億円、営業費用は同45.8%増の 3,419億円、経常損益は 128億円の黒字だが対前年度同期比は32.3%減であった。
 このうち各社の中間決算をみると、第二電電(株)の営業収益は対前年度同期比36.1%増の 1,805億円、経常損益は同10.3%増で 148億円の黒字であった。これに対し、日本テレコム(株)の営業収益は同35.7%増の 1,497億円、経常損益は同42.1%減の61億円の黒字、日本高速通信(株)の営業収益は同71.4%増の 402億円であるが、経常損益は81億円の赤字となった。
 第二電電(株)の増益は経費削減とセルラー向けの移動機の販売によるもの、日本テレコム(株)の減益は新株発行費の計上によるもの、日本高速通信(株)の減益は、全国展開の途上にあり減価償却の増加・支払い利子が大きく、経常利益を圧迫したためであると思われる(第1-2-2-9表参照) 。
  ウ 地域系新第一種電気通信事業者
 5年度の地域系新第一種電気通信事業者の営業収益の合計は対前年度比 9.1%増の 753億円、営業費用は同 2.2%増の 601億円、また経常損益の合計は、前年度の11倍の55億円の黒字と大きな伸びを示した。これは、事業が順調に推移したため、経常黒字を示した事業者が増加し、赤字の事業者も赤字幅を縮小したためと思われる。
 6年度上半期の営業収益の合計は、対前年度同期比14.8%増の 441億円と好調な伸びをみせた。一方、営業費用の合計は、同 8.1%増の 347億円と営業収益の対前年度同期比の伸び率より低く抑えることができた。また、経常損益の合計は42億円の黒字となり前年度同期に比べ大幅に増えている(第1-2-2-10表参照) 。
  エ 衛星系新第一種電気通信事業者
 5年度の衛星系新第一種電気通信事業者の経営状況は、営業収益が対前年度比 0.9%増の 331億円と小幅な伸び率にとどまり、営業費用は同 7.8%増の 386億円であった。経常損益は55億円の赤字となり、昨年よりも増加した。
 また、6年度上半期では営業収益が対前年度同期比 3.8%増の 165億円、営業費用は同 2.2%減の 178億円、経常損益は14億円の赤字となっている(第1-2-2-10表参照) 。
  オ 新携帯・自動車電話事業者
 5年度の新携帯・自動車電話事業者9社(日本移動通信(株)とセルラー電話グループ8社)の経営状況は、営業収益が対前年度比26.5%増の 2,317億円、営業費用は同22.2%増の 1,852億円、経常損益は同87.8%増の 308億円の黒字となった。
 また、6年度上半期では営業収益が対前年度同期比70.3%増の 1,868億円、営業費用は同 125.5%増の 1,935億円、経常損益は 230億円の赤字となっている(第1-2-2-10表参照) 。
  カ 新無線呼出し事業者
 5年度の新無線呼出し事業者31社の経営状況は、営業収益は対前年度比25.8%増の 791億円、営業費用は同29.4%増の 683億円、経常損益は同15.9%増の95億円の黒字であった。
 また、6年度上半期では営業収益が対前年度同期比36.4%増の 498億円、営業費用は同33.3%増の 420億円、経常損益は同67.4%増の72億円の黒字と引き続き順調に増加している(第1-2-2-10表参照) 。
  キ KDD
 5年度のKDDの経営状況は、総収益 2,596億円(対前年度比 2.3%増)、営業収益 2,464億円(同 2.7%増)、営業費用 2,275億円(同 2.0%増)であり、経常損益は 282億円の黒字(同 6.0%増)で増収増益であった。
 6年度上半期の営業収益は対前年度同期比 0.1%減の 1,243億円、営業費用は 0.9%減の 1,125億円、経常損益は同 6.3%減の 150億円の黒字と一昨年同様減収減益となった。これは、国際ダイヤル通話の料金値下げの実施や割引サービスの普及の影響によるものと思われる。
 営業収益のうち電気通信事業営業収益は、 1,223億円(対前年度同期比 0.2%増)であった。この内訳をサ-ビス別に前年度と比較してみると、電気通信事業営業収益の主力である電話収入が 1.3%増とわずかながら増加している。一方、テレックス収入、電報収入、データ通信収入及びデータ伝送収入は減少している(第1-2-2-11表参照) 。
  ク 新国際第一種電気通信事業者
 5年度の新国際第一種電気通信事業者の営業収益の合計は対前年度比26.2%増の 862億円、営業費用は同10.2%増の 705億円、経常損益は94億円の黒字となっている。
 6年度上半期の営業収益は、対前年度同期比14.7%増の 476億円、営業費用は同17.3%増の 401億円、経常損益は42億円の黒字と昨年に引き続き順調である。これは、トラヒックの増加及びサービス取扱地域の拡張等により、収入が国際電話サービス( 441億円、対前年度同期比13.7%増)及び国際専用回線サービス(31億円、同19.2%増)とも順調に増加していることによるものと思われる。
 各社別にみると、国際デジタル通信(株)は営業収益が対前年度同期比14.2%増の 249億円、営業費用は同20.8%増の 209億円となり、経常損益は24億円の黒字となっている。一方、日本国際通信(株)は営業収益が対前年度同期比14.7%増の 226億円、営業費用は同13.6%増の 192億円、経常損益は18億円の黒字となっている(第1-2-2-10表参照) 。
  ケ 第二種電気通信事業者
 第二種電気通信事業者全体の営業収益は、5年度推計で1兆 6,223億円(対前年度比 3.2%増)と前年度の伸び率( 6.8%増)よりは減少したものの堅調に増加している。これは、伝送速度の高速化等により顧客ニーズに応えることができたことやネットワークの整備が進んだことにより通信量が増え拡大のはずみがついたためと思われる。
 この内訳をみると、特別第二種電気通信事業者の営業収益は、 9,597億円(推計、対前年度比 2.7%増)となっている。また、一般第二種電気通信事業者の営業収益は、 6,626億円(推計、対前年度比 4.0%増)と順調に増加している。
 

(2)  電気通信事業者の設備投資動向


 6年3月及び10月に郵政省が実施した「通信産業設備投資等実態調査」(注) 等によると、電気通信事業者全体の5年度の設備投資実績額( 557社回答)は、2兆 7,977億円であり、4年度実績額( 550社回答)に比べ 5.1%増加している。
 6年度の設備投資修正計画額( 557社回答)は、2兆 9,119億円であり、対前年度実績額比 4.1%増となっている(第1-2-2-12表参照) 。
 また、「法人企業動向調査報告」(経済企画庁、6年12月実施)によると、全産業の6年度の設備投資修正計画額は、41兆 8,280億円(5年度実績額43兆 3,065億円)で、対前年度実績額比 3.4%減、製造業は同12兆 8,707億円(同14兆 3,661億円)で10.4%減、非製造業は同28兆 9,573億円(同28兆 9,404億円)で 0.1%増となっている。こうした他の産業の伸び率と比較してみると、経済が低迷するなかで、設備投資の伸び率が減少している産業が多いが、電気通信事業者は比較的堅調といえる(第1-2-2-13図参照) 。特に、元年度以降の設備投資実績額(6年度は修正計画額)対前年度比の推移、昭和63年度を 100としたときの指数の推移を他の産業と比較してみても、電気通信事業は順調に伸びていることが分かる(第1-2-2-2図参照) 。
  ア 第一種電気通信事業者
 第一種電気通信事業者全体の5年度の設備投資実績額(85社回答)は、2兆 6,110億円(対前年度実績額比 4.9%増、76社回答)であった。この内訳をみるとNTTが1兆 8,916億円(同 0.4%増)、KDDが 445億円(同28.3%減)、NTTDoCoMo等地域別9社の合計が 2,349億円(同75.7%増)であるのに対し、新第一種電気通信事業者(74社回答)は、 4,399億円(同 7.1%増、73社回答)であり、第一種電気通信事業全体の16.8%を占め、昨年より 0.8ポイント増加している。
 また、第一種電気通信事業者の6年度の設備投資修正計画額は、2兆 6,538億円で対前年度実績額比 1.6%増となっている。この内訳をみると、NTTが1兆 8,400億円(対前年度実績額比 2.7%減)、KDDが 600億円(同34.8%増)、NTTDoCoMo等地域別9社の合計が 2,512億円(同 6.9%増)であるのに対し、新第一種電気通信事業者は、 5,026億円(同14.2%増、74社回答)で、第一種電気通信事業全体に占める割合も18.9%となり、5年度より 2.1ポイント増加している(第1-2-2-12表参照) 。
  イ 第二種電気通信事業者
 第二種電気通信事業者全体の5年度の設備投資実績額( 472社回答)は、 1,867億円(対前年度実績額比 7.6%増、 474社回答)であった。特別第二種電気通信事業者(35社回答)は、 1,686億円(同 8.8%増、32社回答)、一般第二種電気通信事業者( 437社回答)は、 180億円(同 2.2%減、 442社回答)となっている。
 また、第二種電気通信事業者の6年度の設備投資修正計画額( 472社回答)は、 2,580億円で対前年度実績額比38.2%増と大きな伸びを示している。これは、専用線の大容量化、高速化を一層進めていることやフレームリレー等新サービスに積極的に取り組んでいるためと思われる。また、第二種電気通信事業者の6年度の設備投資修正計画額のうち、特別第二種電気通信事業者(35社回答)は、 2,367億円(対前年度実績額比40.4%増)と大幅に伸びている一方、一般第二種電気通信事業者( 437社回答)は、 212億円(同17.7%増)となっている(第1-2-2-12表参照) 。


第1-2-2-1図 業種別営業収益の推移

第1-2-2-2図 業種別設備投資額の推移

第1-2-2-3図 5年度営業収益対前年度比

第1-2-2-4図 第一種電気通信事業営業収益の推移

第1-2-2-5表 NTTの経営状況

第1-2-2-6表 5年度NTTの電話役務損益明細表

第1-2-2-7表 5年度NTTの事業部制収支状況

第1-2-2-8表 5年度NTTの各地域通信事業部の収支状況

第1-2-2-9表 長距離系新第一種電気通信事業者の経営状況

第1-2-2-10表 第一種電気通信事業者の経営状況

第1-2-2-11表 KDDの経営状況

第1-2-2-12表 電気通信事業者の設備投資額

第1-2-2-13図 業種別設備投資6年度修正計画 対前年度実績額比

 

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