平成7年版 通信白書

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第1部 平成6年情報通信の現況

4 地域の情報化


 ここでは、都道府県ベースのデータにより、情報化の進展状況について概観するとともに、地域における情報交流の特色、情報化の進展状況等について、具体的な事例として、愛媛県及び青森県八戸市を取り上げて紹介する。愛媛県は、全国47都道府県中人口密度がほぼ中位であり、県内では郵政省のテレトピア構想モデル指定が4地域、都市型ケーブルテレビの開局が4局と、情報化に関する事例が顕著にみられることから取り上げることとした。また、青森県八戸市は、政令指定都市、県庁所在地、首都圏といった交流の中核となる都市ではなく、この10年の半ば頃(昭和63年〜2年)にテレトピア地域に指定されていること、同市が属する県域に過去10年間にテレビジョン放送及びラジオ放送が新たに開局したこと等から、10年間の情報化の進展度合いが大きいことが予想され、また同市が情報化施策に積極的であることから取り上げることとした。
 

(1)  データにみる地域の情報化


 地域の情報化の進展について、都道府県ごと、単位人口当たりで、5年度の対昭和60年度伸び率を以下の項目における比較により概観すると、加入電話契約数では、兵庫県が 155%と最も大きく伸びており、以下、神奈川県、茨城県、沖縄県及び長崎県と続いている。
 また、有線テレビジョン放送加入契約者数では、長崎県が 315%と最も大きく伸びており、以下、埼玉県、三重県、石川県、福井県と続いている。
 一方、引受内国郵便物数では、岡山県が 192%と最も大きく伸びており、以下、群馬県、香川県、埼玉県、宮崎県と続いている(第1-4-1-37図参照) 。
 

(2)  愛媛県にみる地域の情報化


  ア 県の概要
 四国の北西部に位置する愛媛県は、約 5,600Km2の県土に約 151万人の県民が暮らしている。気候は温暖で、県土の約7割を林野が占めている。
 県内は、新居浜市、西条市、今治市等を中心とする東予、松山市を中心とする中予、大洲市、八幡浜市、宇和島市を中心とする南予の3地域に区分され、それぞれ特色ある風土を形成している。みかんの生産高が全国第1位であるほか、漁業及び養殖業の生産額においても全国第3位となっている。
  イ 電話トラヒックにみる情報交流の状況
 郵政省が6年9月に発表した「トラヒックからみた電話の利用状況(平成5年度)」において、加入電話の都道府県間トラヒック交流状況をみると、5年度に愛媛県内で発信された通話(8億 7,100万回)のうち、県外に発信される通話は、東部に隣接する香川県あて( 2,500万回)が最も多く、以下大阪府( 1,800万回)、東京都( 1,100万回)、瀬戸内海をはさんで北部に隣接する広島県( 1,000万回)と続いている。
 また、県内に終始する通話(7億 6,300万回)について、11に区分される県内の各単位料金区域(MA)における発着通話回数(同一MA内に終始する通話を除く)をみると、松山MAに発着するトラヒックが最も多く、以下、今治MA、新居浜MA、宇和島MA及び大洲MAと続いている(第1-4-1-38図参照) 。
 一方、一定割合以上のトラヒック交流があるMA相互間を線で結び、各MAを結ぶ線の太さで関係の強さを表すと、第1-4-1-39図 のようになる。これをみると、愛媛県内では松山MAを中心とした通話圏が形成されているほか、南予地域の八幡浜、宇和島及び宇和の各MAが小さな通話圏を形成していることがうかがえる。
  ウ 情報化の進展動向
 愛媛県における単位人口当たりの情報通信利用の推移をみると、加入電話総加入数及びNHK放送受信契約数については、堅調な伸びがみられ、昭和60年度を 100とした5年度の指数は、それぞれ 123、 109となっている(第1-4-1-40図参照) 。
 県内における都市型ケーブルテレビは、今治市(2年8月開始)、新居浜市(2年9月開始)、宇和島市(3年9月開始)及び松山市(3年10月開始)の4地域で提供されており、提供エリアは第1-4-1-41図 のようになっている。また、携帯・自動車電話は、現在2社が提供しているが、その提供エリアは第1-4-1-42図 のようになっている。
  エ 主な情報化の取組
 県内における郵政省のテレトピア構想モデル地域は、松山地方生活文化経済圏(昭和60年指定)、今治市・新居浜市(ともに元年指定)及び宇和島市(3年指定)の4地域となっており、システムの中には共通してケーブルテレビを利用メディアとして活用した情報提供等が含まれている。このうち、宇和島市において5年から開始されている海洋情報システム(漁業監視システム)は、赤外線カメラ及びデータ通信を利用して、宇和海における魚介類の盗難防止及び漁場管理の強化を図るという、ユニークな取組である(第1-4-1-43図参照) 。このほか、県内における郵政省の情報化施策としては、民活法施設整備事業(新居浜テレコムプラザ:昭和63年度認定)、民放テレビ放送難視聴解消事業(野村町、一本松町、日吉村:6年度実施)、衛星放送受信設備設置助成事業(津島町:3年度実施、重信町:5年度実施)及び新世代ケーブルテレビ施設整備事業(弓削町:8年度開局予定)がある(第1-4-1-44図参照) 。
 

(3)  青森県八戸市にみる地域の情報化


  ア 市の概要
 青森県の南東部に位置する八戸市は、青森市及び弘前市とともに、同県の三大都市の一つであり、太平洋に面した約 213Km2の地域に約24万人の市民が生活している。同県では、歴史的経緯から青森市及び弘前市を含む北西部が津軽地域、南東部が南部地域と呼ばれており、八戸市は南部地域の中心都市である。昭和30年代後半から、急速な工業集積や都市化が進展したほか、水産業の発展が著しく、八戸港は全国有数の漁港・貨物港となっている。気候は青森県内においては比較的穏やかで、冬期の積雪量も少なく、日照時間が長いことから、いちご、花き類等のハウス栽培が盛んである。
  イ 電話トラヒックにみる情報交流の状況
 5年度の加入電話によるMA間通話交流状況についてみると、八戸市及び隣接する9町村から構成されている八戸MAは、青森県内の10のMAの中では、青森MA及び隣接する十和田MAとの通話量が特に多くなっている。青森県外では、仙台MA(宮城県)が最も多く、以下東京、盛岡及び久慈の各MAがこれに続いている(第1-4-1-45図参照) 。
  ウ 情報化の進展動向
 八戸市における単位人口当たりの情報通信利用の推移をみると、加入電話総加入数及びNHK放送受信契約数については、堅調な伸びがみられ、昭和60年度を 100とした5年度の指数は、それぞれ 124及び 109となっている(第1-4-1-46図参照) 。
 一方、同市において昭和61年からサービスが開始されている都市型ケーブルテレビは、全世帯数に占める加入世帯数の割合が年々増大しており、5年度末には 6.9%となっている(第1-4-1-47図参照) 。また、その提供エリアは第1-4-1-48図 のようになっている。
 この都市型ケーブルテレビは、6年12月28日に発生した「三陸はるか沖地震」(第2部第1章第1節3参照)に伴う断水への対応として、給水を行っている場所・時間等に関する情報の提供を行った。
  エ 主な情報化の取組
 八戸市は、昭和63年に郵政省のテレトピア構想モデル都市の指定を受け、同市において、産業構造の活性化、都市環境の整備及び文化・教育・医療面の充実を目標に、市民大学システム、学校教育システム、健康・医療情報ネットワークシステム、教育情報ネットワークシステム及びCRPシステムの5システムについて運用が開始されている。教育情報ネットワークシステムは、市の教育機関をパソコン通信及びファクシミリでネットワーク化し、公文書の送受信、データベース化された教育関係資料の利用で学校教育活動の情報化を推進している(第1-4-1-49図参照) 。また、CRPについては、第3セクターにより5年にサービスが開始され、市内全域で提供可能となっているほか、青森市のCRPサービスとの相互接続を行っているなど、積極的に取り組んでいる。
 同市では、昭和63年以降の情報化施策の評価を行うとともに、情報化施策を中心とする今後の諸施策の推進に資するための意見、要望等の収集を行うため、市民、事業所等に対してアンケート調査を実施するなど、情報通信利用者のニーズの掘り起こしに努めている。


第1-4-1-37図 情報通信利用伸び率上位5都道府県(5年度の対昭和60年度伸び率)

第1-4-1-38図 愛媛県内に終始する加入電話のMA間トラヒック交流状況(5年度)

第1-4-1-39図 愛媛県内におけるMA間トラヒック交流状況(通話回数ベース)5年度

第1-4-1-40図 愛媛県における情報通信利用の推移

第1-4-1-41図 愛媛県における都市型ケーブルテレビ提供地域

第1-4-1-42図 愛媛県における携帯・自動車電話提供地域

第1-4-1-43図 宇和島市における海洋情報システムの構成図

第1-4-1-44図 愛媛県内における郵政省の情報化施策

第1-4-1-45図 八戸MAを中心とする各MA間トラヒック交流状況(5年度)

第1-4-46図 八戸市における情報通信利用の推移

第1-4-1-47図 八戸市における都市型ケーブルテレビ加入世帯の推移

第1-4-1-48図 八戸市における都市型ケーブルテレビ提供地域

第1-4-1-49図 八戸市の教育情報ネットワークシステムの構成図

青森県八戸市の教育情報ネットワークシステム
 

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