平成7年版 通信白書

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第1部 平成6年情報通信の現況

1 情報通信の高度利用

 

(1)  遠隔教育


 カナダのニューブランズウィック州においては、テレエデュケーションと呼ばれるネットワークを利用した遠隔教育が既に実施されている。
 同州では、図書館、コミュニティセンター、病院、学校及び民間企業の提供する場所等を利用して、州内に約50か所の遠隔教育拠点を設け、同州の大学等の教育施設と電話回線で結んでいる。各遠隔教育拠点には、テレビ会議システム、パソコン等を設置しており、学生は、これらの設備を利用して、大学等が提供しているこの遠隔教育用に用意された遠隔教育プログラムにネットワークを介して参加できる仕組みになっている。授業は、教師側が作成したグラフィックスに音声で解説を加え、生徒は授業内容に対する質問やコメントをパソコンに付いている入力用キーパッドを使用して伝送しながら、双方向的に進められる。
 提供されるプログラムとしては、看護学の学士取得コース、コンピュータ技術の取得コース等があり、1994年2月現在で98コースが提供されている。
 これらのコースの提供に当たっては、カナダ政府及び同州が、経費の半分を1コース当たり75,000ドルを限度として補助することとなっている。
 同州では、1994年5月現在で約 861人の学生がこの遠隔教育システムを利用している。
 

(2)  遠隔医療


 米国テキサス州では、1991年4月から、テキサス・テレメディシン・プロジェクトと呼ばれるへき地における医療を支援する遠隔医療サービスが実施されている。
 このサービスでは、テキサス州オースチンの州立病院を含む3つの医療機関とオースチンから56マイル離れた人口約 4,000人のギディングスの4つの診療機関との間を光ファイバ、無線等で結び、テレビ会議システムを利用して、腎臓病、心臓病、神経病、肺疾患、泌尿器疾患等の患者に対する医療サービスを行っている。
 ギディングスにおける診療機関の一つである透析センタでは、腎臓の人工透析を地域の患者に対して行っているが、透析用の機器を患者から外す前に、遠隔医療システムのテレビ会議システムを利用して、オースチンの腎臓病の専門医の診察を受けている。これにより、患者の容体を確認し、異常がある場合は処置及び専門の病院への移送の指示等を受けることが可能となっている。従来は、オースチンの腎臓病の専門医は、ギディングスへの往復時間を含めて7時間をかけて人工透析の診療を行っていたが、現在では、テレビ会議システムによる診察を行うことにより、移動等の時間を1日6時間削減することが可能となり、その時間を外来患者の診療や往診等に充てている。
 この遠隔医療サービスにより、専門医の不足するへき地においてレベルの高い医療が受けられることに加え、患者の移動や医師の往診等の削減により、従来の医療サービスに比べ医療にかかる費用が14〜22%低下している。
 

(3)  行政サービス


 シンガポールにおいては、NCB(国家コンピュータ庁)が中心となって、IDネットと呼ばれる各省庁間のネットワーク化が進展しており、これを利用した「ワンストップ住所変更報告サービス」と呼ばれる行政サービスが提供されている。
 シンガポールでは、住所を移転した際に、国家登録庁または最寄りの交番に住所変更の届け出をすることが義務づけられているが、一度申告すれば、省庁間のIDネットを通じて関連の通信省、保健省、教育省等の省庁や年金基金に情報が伝送されて、一か所で手続きを終了させることができるようになっている。
 このため、自動車登録や年金基金の住所登録等など、複数の機関に出向いて手続きをすることが必要なくなっている。
 また、マレイシアにおいては、MAMPU(マレイシア行政近代化・管理計画局)が中心となって、郵便局に設置されたコンピュータ・ネットワークを利用した行政窓口サービスの開発が進められている。ここでは、道路運送省が主管する運転免許の更新について、1993年8月から実験を開始し、1994年5月からは全国49の郵便局で行えるようになっている。

 

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