平成7年版 通信白書

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第2部 情報通信政策の動向

3 国際協力の推進

 

(1)  ODAによる協力実績


 情報通信は、社会経済のあらゆる分野における活動の活性化・効率化を促し、先進国と開発途上国とを問わず、社会経済の発展に必要なインフラである。しかしながら、開発途上国においてその整備を図るためには、膨大な資金及び高度な技術を備えた人材の確保・養成が必要であり、先進国による資金・技術両面における支援へのニーズが高まっている。
 最近5か年間の通信分野に対する我が国の政府開発援助(ODA)実績をみると、平均して全体の5%前後を占めている(第2-2-2-3表参照) 。
 

(2)  人材養成ニーズへの対応


 情報通信分野における開発途上国からの人材養成に関するニーズの最近の傾向として、事業経営のノウハウ等に関するものが増えている。これに対応するため、郵政省は、国際協力事業団(JICA)ベースによる集団研修においても、研修コースやカリキュラムの見直しに努めている。
 また、開発途上国のニーズに、より機動的かつ柔軟にこたえられるよう、(財)海外通信・放送コンサルティング協力(JTEC)に補助金を交付して人材養成の拡充を図っており、技術研修員の受入れのほか、通信・放送分野で将来の国づくりを担う若年層を対象とした研修員を我が国に招へいしている。
 このほか、従来の技術協力に加え、情報通信分野における開発途上国の自立的な研究開発能力の向上を図るため、1994年度には開発途上国の電気通信研究者を我が国の研究所に受け入れ共同研究を実施した。
 

(3)  アジア・太平洋地域における国際協力


  ア APTへの対応
 アジア・太平洋電気通信共同体(APT)は、アジア・太平洋地域の電気通信の開発促進及び地域電気通信網の整備・拡充を主たる目的とした政府間国際機関であり、1995年3月現在、加盟28か国、準加盟4地域、賛助加盟員32事業体の計64会員で構成されている。
 我が国は、アジア・太平洋地域の電気通信網の高度化に必要な人材の育成に貢献するため、郵政省ODA予算から80万米ドルの特別拠出を1992年から行っており、これにより研修員の受入れ、専門家の派遣、セミナーの開催等を実施している。
 この一環として、1994年4月、「APT衛星セミナー」が東京で開催され、映像国際放送と衛星通信の在り方について討議が行われた。
 また、同年8月には、我が国の提案により、AIIに関する臨時会合がタイのバンコクにおいて開催された。同会合では、各国の情報通信基盤の整備計画に関する発表が行われたほか、AIIの概念や必要性についての共通の理解が得られ、今後、APTにおいて、AIIに関する議論を継続することが合意された。
  イ PECCへの対応
 太平洋経済協力会議(PECC)は、太平洋地域における経済協力関係の推進を目的とした官界・経済界・学界で構成される国際的フォーラムである。
 環太平洋地域での運輸・通信・観光分野の国際協力の推進を目的とした「運輸・通信・観光小委員会」においては、現在、我が国が中心となり、非常災害時における防災情報伝達のための通信システム構築に向けた「防災プロジェクト」等を実施している。
  ウ APPUへの対応
 UPU憲章に基づく地域的限定連合の一つであるアジア・太平洋郵便連合(APPU)に対し、我が国は同連合下の一機関であるアジア・太平洋郵便研修センター(APPTC)への、郵便業務研修に関するコンサルタントとして職員の派遣等による支援を行っている。
 1994年6月、オーストラリアのクィーンズランド州において開催されたAPPU執行理事会及びAPPTC運営理事会では、APPU及びAPPTCの財政等について審議が行われ、また、EMSの競争力の強化、地域郵便マーケティング・センターの設立を含む郵便の地域活動の強化等に取り組むことが決議された。
  エ AICへの対応
 ISDN国際共同研究会(AIC)は、自主的かつ独立の非営利任意団体として、平等の立場においてISDN等高度電気通信技術の共同研究活動を行うことを通じて、日本、韓国、中国及び東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国における電気通信基盤の健全な発展を推進することにより、それらの国々の社会経済の発展と国民生活の向上に寄与することを目的とする国際共同研究会である。1994年10月現在、8か国が加盟し、主管庁、電気通信事業者、通信機器メーカー、研究機関等計76会員で構成されている。
 1994年10月、マレイシアのクチンにおいて開催されたマレイシア会合では、ISDNに関する研究に加え、広帯域ISDN及び情報通信基盤に関する研究を開始することが合意された。AICでは、アジア地域への高度電気通信技術の普及支援を行うため、参加各国が平等な立場で研究に参画することで技術協力及び人材育成を行っている。
 

(4)  旧ソ連諸国及び東欧諸国への支援


 我が国は、旧ソ連諸国及び東欧諸国の通信・放送分野の発展に貢献するため、視察団の派遣、研修員の受入れ、セミナーの開催等により、同地域への協力・支援を行っている。
 旧ソ連諸国に対しては、1994年11月から12月にかけて、ロシア、ウクライナ、モルドヴァ及びベラルーシの電気通信関係者幹部を東京に招へいし、「対NIS諸国技術的支援計画電気通信分野行政研修」を実施した。また、1994年5月には、キルギス及びカザフスタンにおいて、「中央アジア電気通信・放送現地セミナー」を開催した。このほか、1995年3月には、ODAの対象国である中央アジア5か国及びアルメニアに対し、「中央アジア電気通信経営管理コース」を東京で実施した。
 一方、東欧諸国に対しては、1995年1月から2月にかけて、前年に引き続き「東欧電気通信経営管理コース」を東京で実施した。


第2-2-2-3表 通信分野における援助実績
 

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