平成7年版 通信白書

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第2部 情報通信政策の動向

5 環境保全に向けた情報通信の活用及び技術開発の推進

 

(1)  環境保全に向けた情報通信の活用


 高度情報通信社会の基盤として重要な役割を果たす情報通信は、国民生活や企業活動を変化させ、環境問題への対応を実現するための有効な手法となりうるものであり、情報通信の活用等情報化による省資源・省エネルギー等国民生活や企業活動をはじめとする環境負荷の少ないライフスタイルの変化等の分野で環境保全に貢献することができると期待されている。
 このような観点から、郵政省では、6年2月から「情報通信と環境問題に関する調査研究会」を開催し、環境への負荷の総合的低減に資する情報通信の活用について検討するとともに、情報通信の活用による国民生活や事業活動の変化が環境保全に貢献する効果について具体的な検討を行い、7年3月、最終報告が取りまとめられた。
 本報告においては、TV会議システム導入による環境効果、住民サービス窓口分散化による環境効果、パソコン通信導入による環境効果について定量的分析を行い、情報通信システムが環境改善効果をどの程度もつかについて明らかにしているとともに、政策的対応として、最適なシステムの組み合わせの検討等今後さらに検討が必要な課題や情報通信システムの活用のための方針を指摘している。
 郵政省では、本報告の提言を踏まえ、情報通信による環境問題への取組を一層推進していくこととしている。
 

(2)  環境監視のための技術開発


 地球的規模の気候変動のメカニズムを解明するため、地球の水・熱の収支・循環を支配する熱帯域の降雨の状況を観測することが世界的に緊急かつ重要な課題となっている。
 9年度打上げ予定の熱帯降雨観測衛星(TRMM)は、世界で初めて降雨観測レーダを搭載する衛星であり、日米共同プロジェクトとしてその開発が進められている。現在、郵政省通信総合研究所と宇宙開発事業団が協力してTRMM搭載用降雨レーダの開発を行っている。
 また、地球的規模の気候変動メカニズムの解明には、長期間にわたるデータの蓄積が必要であることから、観測の継続を確保するための後継機の打上げが求められている。このため、熱帯降雨観測の継続と観測機能の高度化・多様化を図るための次世代熱帯降雨観測衛星について、6年度より搭載センサの研究を実施している。7年度には、6年度に実施した研究の成果を踏まえ、次世代熱帯降雨観測衛星の搭載センサのうち測雲レーダについて設計検討及び機能確認用研究モデルの試作を行うこととしている。
 さらに、郵政省通信総合研究所では、今後我が国の宇宙開発が本格化し、活発に有人宇宙活動が展開されることが予想されることから、その安全を確保するための「宇宙天気予報システム」の研究開発を昭和63年度から実施している。
 

(3)  地球環境保全に向けた技術開発


 地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨等の地球環境問題は、早急にその対策が求められている世界的な重要問題である。
 地球環境保全の対策のためには、まず、地球環境の悪化の実態を正確に把握し、地球環境問題のメカニズムを解明することが不可欠である。そこで、郵政省では2年度から電波や光を用いた地球環境計測技術の研究開発を次の通り推進している。
[1] オゾン等大気微量ガス成分の計測を行う短波長ミリ波帯電磁波技術の開発
[2] 航空機から地表面を立体的かつ高精度に観測する高分解能3次元マイクロ波映像レーダ技術の開発
[3] 対流圏の各種ガスや水蒸気等を宇宙から観測するための光領域アクティブセンサ技術の開発等
 また、地球環境問題は、全地球的な問題であるため、国際レベルでの環境観測手段の整備等国際的な取組が重要であり、つぎの国際共同研究に取り組んでいる。
[1] オゾン層生成・破壊や地球温暖化等で注目されている中層大気(高度約10〜 100km)の総合的な観測・計測技術の日米共同研究(日米科学技術協力協定に基づきアラスカ大学を中心とする米国との共同研究(4年度から開始)
[2] アジア地域の途上国が自ら電磁波を利用した地球観測が可能となるようにする技術移転と現在圧倒的に不足している低緯度地域の地球環境観測データを取得するための工場排煙、光化学スモッグ等の動きを計測する低層大気観測レーダ技術の共同研究及びエアロゾルや光化学スモッグ等の高度分布、量等を計測する大気観測ライダー(レーザー・レーダ)技術の共同研究(5年度から開始)
 

(4)  環境にやさしい郵政事業の推進


 郵政事業自らが、多くの資源・エネルギーを消費しているとの問題意識に立ち、事業活動そのものの環境負荷の低減を図るとともに、全国2万 4,500の郵便局ネットワークの活用によって、国民と一体となった環境問題への対処を図ることが重要になっている。
 環境保全の必要性が高まる中で、自動車の排気ガスによる大気汚染は都市部を中心に社会問題となっており、また、二酸化炭素排出抑制による地球温暖化防止の観点から、郵政省では6年度までに、排気ガスがなくクリーンな電気自動車について、集配用車両としての導入可能性を幅広く検討するため49両を試行配備するとともに、郵便局宣伝用として27両を配備し、この問題に取り組んでいるところである。
 また、郵便葉書類の再生紙の利用については、6年度においては、絵入り葉書、青い鳥葉書、郵便書簡(ミニレター)、航空書簡の4種類について新たに再生紙の利用を拡大した。
 さらに、郵便局ネットワークの環境問題への活用については、寄附金付年賀葉書・年賀切手及び寄附金付き広告つき葉書(グリーンエコー)の販売によって集まった寄附金を、地球環境の保全のための事業を行う団体に配分し、地球環境保全事業を支援している。
 また、国際ボランティア貯金の寄附金についても、NGOが行う環境保全事業が配分の対象となっており、海外援助に役立てられている。

 

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