平成7年版 通信白書

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第2部 情報通信政策の動向

6 21世紀の宇宙時代に向けた宇宙通信政策の展開

 

(1)  宇宙通信システムの将来像と今後の研究開発の推進方策の検討-マルチメディア衛星通信の実現に向けて-


 今日の宇宙通信分野においては、情報通信基盤整備の必要性の増大、世界的な移動体衛星通信システム構想の具体化、通信衛星による国境を越えた放送の増加等に見られるように、そのとりまく環境が大きく変化している。
 このような状況の下、宇宙通信システムが高度情報通信社会において十分な役割を果たし、国民の利便性向上に寄与していくためには、その将来像を踏まえた体系的かつ効率的な研究開発を進めていくことが必要である。
 このため、郵政省では7年1月、電気通信技術審議会に対して、宇宙通信システムの将来像と今後の研究開発の推進方策について諮問を行い、同審議会では、「宇宙通信開発委員会」を設置し、宇宙通信システムの将来像を展望し、その実現に必要な研究開発課題の整理を行うとともに、研究開発の推進方策等について審議を行っている。
 

(2)  高速衛星通信に関する検討


 高速・広帯域なネットワークを迅速かつ広域にわたり実現するためには、地上系のネットワークの構築に加え、同報性、回線設定の柔軟性・迅速性、耐災害性といった特長をも併せ持つ高速・広帯域な衛星通信ネットワークの構築が不可欠となっている。
 特に、このような高速・広帯域な衛星通信ネットワークはGIIやAIIの構築において重要な役割を担うものと考えられている。
 このため、7年2月から「高速衛星通信に関する調査研究会」を開催し、今後の高速・広帯域な衛星通信ネットワークとそのアプリケーションを展望して、ギガビットクラスの高速衛星通信の実用化に向けた高速衛星通信ネットワークの技術開発課題、構築方法、構築における国際協力の進め方等について調査検討を行っている(第2-2-3-13図参照) 。
 

(3)  通信・放送衛星等の静止軌道上検査・修理システムの研究


 衛星通信・衛星放送技術等の高度化・多様化とともに、通信・放送衛星等は、社会経済活動の広範な分野において利用が拡大し、国民生活を支える重要なインフラストラクチャとなっている。このため、一旦通信・放送衛星等に不具合が発生すると、社会経済活動や国民生活に重大な影響を及ぼすこととなることから、より一層の信頼性の向上が求められている。
 通信・放送衛星等は静止軌道上の衛星が主体であるが、不具合が発生した場合の対処としては、現在のところ、衛星からのテレメトリデータによりその原因を推測し、予備系への切替え等により機能回復処置を行うといった方法しかなく、不具合箇所の特定、原因の究明及び適切な対処方法の決定に関する情報が十分でない上に、アンテナの展開障害等予備系のない機器の不具合には対応が不可能となっている。
 このため、郵政省では、7年度から、「電波を利用した宇宙インフラストラクチャの整備方策に関する調査研究」において、静止軌道上において衛星の外観検査やマニピュレータによる修理を行うことが可能なサービス衛星及び地上の情報処理・遠隔操作設備により構成される総合的な検査・修理システムについて概念検討を行うこととしている。
 

(4)  宇宙通信分野における国際協力


 ア 先進国間での国際協力
 7年2月に開催された「情報社会に関する関係閣僚会合」において、情報インフラ整備についてのビジョンを実現するための具体的行動として国際共同プロジェクトが合意されたが、この中でGIIにおける衛星通信の役割の検証のための高速衛星通信実験の実施が合意された。
 郵政省としても、国際共同プロジェクトを積極的に推進することとしているところであり、国際共同での高速衛星通信実験の実施に向けて検討を行っている。
 イ 開発途上国への国際協力
 郵政省では、4年度から宇宙開発事業団と協力し、宇宙通信分野での国際協力として、衛星電波伝搬実験や衛星通信を利用した共同実験等を通じて、開発途上国に対する衛星利用技術の移転を図る「パートナーズ計画」を推進している。
 このパートナーズ計画では、技術試験衛星V型を用いて、アジア・太平洋地域の衛星通信回線構築に必要となる衛星通信伝搬特性実験等を実施するほか、開発途上国との間で遠隔教育や遠隔医療等の衛星通信アプリケーションの実証実験を実施している。


第2-2-3-13図 検査・修理システムの概念図
 

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