平成7年版 通信白書

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第2部 情報通信政策の動向

第4節 多様な情報流通に向けた電気通信の展開

 1 電気通信事業政策の着実な推進

 

(1)  電気通信産業政策の新たな展開


 ア NTTの在り方に関する政府措置の推進
 郵政省は、2年3月30日に決定された「日本電信電話株式会社法附則第2条に基づき講ずる措置」(いわゆる「政府措置」)について、広く国民・利用者への周知に努めるとともに、その具体的推進について、電気通信審議会に適宜検討状況を報告し、同審議会での審議結果を踏まえつつ取り進めている。政府措置は、公正有効競争を促進するため、事業部制の導入・徹底、移動体通信業務の分離、デジタル化の推進等の措置を講ずること、NTTの経営の向上等のため合理化の推進等の措置を講ずること、これらの措置の結果を踏まえNTTの在り方について7年度に検討を行い結論を得ること等を主な内容としている。
 イ サービスの多様化に向けた接続の在り方について
 昭和60年の電気通信制度の改革による競争原理の導入後、料金の低廉化等が進行してきたが、電気通信市場のさらなる持続的発展のため多彩なサービスによる一層の競争の実現が重要になる。しかしながら、多彩なサービスを展開するうえで必要不可欠となる事業者間接続において、接続の意義、形態等の基本的事項、接続費用の負担方法、接続に伴う利用者へのプライバシー保護等について当事者間の合意が得られないため接続協議が円滑に進まない事例が生じてきた(フレームリレーサービスにおける異役務接続に関する意見対立、VPNサービス(注) における事業範囲に関する意見対立等)。
 フレームリレーサービスについては、同サービスの提供にあたり、事業者間の接続協議が不調に終わり、6年10月に日本テレコム(株)よりNTT地域網との接続を求め、電気通信事業法第39条第1項の規定に基づき郵政大臣の接続協定の締結命令の申立てが行われたが、その後NTTとの間で接続協議が調い、申立ては取り下げられた。
 また、VPNサービスについても、同サービスの提供にあたり、事業者間の接続協議は不調に終わり、6年11月に第二電電(株)、日本テレコム(株)、日本高速通信(株)より郵政大臣の接続協定の締結命令の申立てが行われた。これを受け、郵政省では、6年12月にNTTに対する聴聞会を行った。NTTから質問があったVPNサービスに関する事業法解釈について同省としての見解を示した上で、本接続によりVPNサービスの競争が促進され、利用者に多様な選択の機会が与えられ、公共の利益を増進するために必要であるという視点に立って、6年12月に接続協定を締結すべきことを命じた。
 このような状況を踏まえ、郵政省では、7年2月、NTTに対して指導文書「NTT地域通信網との接続協議の手順の明確化等について」を発出し、接続協議における基本的な手順の策定、接続費用の分担方法の明確化、接続協定の公開、接続に必要な技術情報等の開示の範囲、方法等の改善及び他の電気通信事業者等への情報提供について指導した。
 ウ 規制緩和
 (ア)  携帯・自動車電話等移動機の売り切り制の導入
 6年4月、携帯・自動車電話、簡易陸上移動無線電話、マリネット電話の移動機について売り切り制度が導入された。これにより、利用者の移動機選択の幅が広がるとともに、市場に新たに参入するメーカーの増大により激しい商品開発、販売競争が展開され、市場は急速に拡大している。
 (イ)  無線呼出受信機の売り切り制の導入
 無線呼出受信機の売り切り制の導入は、政府の緊急経済対策として5年9月に取りまとめられた規制緩和等の実施94項目の1項目となっていた。郵政省では、6年1月、無線呼出受信機の売り切り制度の導入に先立ち、販売主体、対象受信機の範囲、レンタル制度の扱い、技術的な条件の在り方等について方針を決定した。
 また、6年5月の電気通信技術審議会答申(「端末設備としての移動機に求められる技術的な条件」)を踏まえ、郵政省では、6年11月、無線呼出受信機の不正使用等を防止するための技術基準を整備した。
 このように利用者にとって望ましい売り切り制度の導入のための条件が整備され、7年3月より無線呼出受信機についても売り切り制度が導入された。
 (ウ) 専用線の利用自由化に向けて
 「今後における規制緩和の推進等について」(6年7月閣議決定)の規制緩和策の一環として、郵政省では、7年2月、専用線の自由化に向けて具体的な方策を以下の通り講じた。
[1] 国内における音声系の専用線と公衆網の接続については、遅くとも9年中の完全自由化を目指し、段階的な開放を促進する。具体的には、7年4月から、専用線の片側に公衆回線を接続する、いわゆる「公-専」片端接続を可能とする。さらに、次の段階への移行時期、内容については、「公-専」片端接続による第一種電気通信事業者への影響を1年後に評価したうえで決定する。
[2] 国際VANサービスにおける基本音声サービスの提供については、段階的な開放を促進する。具体的には、7年4月から、公衆網と接続のない形態での国際専用回線による基本音声サービスの提供を行うことを可能とする。さらに、公衆網との接続については、第一種電気通信事業者の経営への実態的な影響を2年後に評価し、その評価及び国際的な検討を踏まえ、その実施時期、内容を決定する。
 これらの措置により、企業による柔軟なネットワークの利用が実現され、ニュービジネスの創出や企業活動の効率化・情報化が一層推進されるものと期待される。
 なお、国内における「公-専」片端接続について、郵政省では、7年3月、電気通信事業者6社に対して、専用線の利用自由化を内容とする電話サービス契約約款等の一部変更の申請を認可した。これにより7年4月から、電話網やISDN網と専用線との接続を通じて、利用者が情報通信ネットワークをビジネス等に活用できる事業環境が整備されることになった。
 (エ)  OEM機器に係る技術基準適合認定の手数料の減額
 「今後における規制緩和の推進等について」(6年7月閣議決定)の規制緩和策の一環として、郵政省では、6年11月、端末機器の技術基準適合認定に係る省令の一部を改正し、OEM(注) 供給を受けた電話機、構内交換設備、ボタン電話装置、モデム、ファクシミリ、無線呼出受信機等の端末機器の技術基準適合認定の手数料を大幅に減額することにした。これにより、OEM製品を発売するメーカーの負担が軽減され、端末機器の提供形態が多様化し、端末機器市場の拡大が促進されることが期待される。
 (オ) 第一種電気通信事業に係る許可申請に関する提出書類の簡素化
 「今後における規制緩和の推進等について」(6年7月閣議決定)の規制緩和策の一環として、郵政省では、7年3月、電気通信事業法施行規則の一部を改正し、第一種電気通信事業者の許可申請に関する提出書類を簡素化し、申請者の負担を軽減することとした。
 (カ) 工事担任者資格の規制緩和
 「今後における規制緩和の推進等について」(6年7月閣議決定)の規制緩和策の一環として、郵政省では、7年3月、工事担任者規則の一部を改正し、アナログ種とデジタル種の両方の資格を必要とする工事への対応を容易にするため、新たに「アナログ・デジタル総合種」資格を設けることとした。
 (キ) 電気通信機器に貼付するマークの一元化
 従来、電気通信機器に貼付されるマークには、端末機器の技術基準適合認定マーク、無線設備の技術基準適合証明マーク、無線設備に対する呼出符号又は呼出名称の指定のマークの3種類が存在し、例えばコードレス電話やPHSの場合は、3種類のマークをすべて貼付する必要があった。そこで、郵政省では、7年3月、端末機器の技術基準適合認定に関する規則、特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則及び電波法施行規則の一部を改正し、7年4月から、これらの省令に基づいて電気通信機器に貼付されることになっているマークの一元化を行うこととした(第2-2-4-1図) 。
 エ ニュービジネスの振興
 (ア)  PHSの事業化の促進
 「パーソナル通信分野における基本サービス」、「身近なマルチメディア」として期待されるPHSについて、その社会的受容性確認、技術確認のため、5年10月より簡易型携帯電話システム実用化実験協議会の下で、PHSの実用化実験が行われてきた。
 同協議会からの報告を受け、6年10月、郵政省は、「簡易型携帯電話システム実用化実験評価研究会」においてPHSの実用化に向けての最終報告をまとめた。それによると、サービス面に関する実験結果からは、約9割の利用者(モニター)がPHSに対する利用意向を示している。料金面では、加入一時金 5,000円以下、月額基本料 3,000円以下、3分当たり市内通話料30円〜50円程度でのサービスを希望する人が最も多いという結果になった。また、技術面に関する実験結果からは、無線機能、ネットワーク機能、インタフェース機能のいずれについても、十分に実用化の段階に達していることが検証された。一方、事業化の留意事項として、公衆網事業者は、公衆網にPHSを接続するための装置を整備する計画をオ-プンにするとともに、PHS事業者との接続にあたっては接続料金等で公正を講ずる必要があること、PHS事業者は、PHSの普及を促進するために加入時の負担をできる限り低廉化するとともに、多様かつ分かりやすい料金体系を実現すべきであるとしている。
 郵政省では、同研究会の報告、実用化実験の実施者・利用者の意見等を踏まえ、PHS事業化の方針を以下の通り決定した(6年6月、基本方針、6年11月、最終方針)。
[1] 全国を11ブロックに分け、各ブロックごとに3以内の事業者に周波数を割り当てる。
[2] PHS事業者は、事業開始後5年以内に、地域ブロック内の人口のおおむね50%以上が居住する区域でサービス提供できるよう努める。
[3] PHS事業者は、PHSの普及のため、低廉かつ多様な料金と広範なサービスエリアにより事業を実施する。
[4] 公衆網事業者は、PHSが接続する公衆網の整備、公正な接続条件を講ずるよう努める。
[5] 各PHS事業者が利用者に付与する番号体系は、
   050 - XX - XXXXX とする。
  サーヒ゛ス   事業者  加入番号
 識別番号  識別番号
 また、この事業化の方針を受けて、郵政省では、7年2月、「事業用電気通信設備規則の細目」(昭和60年郵政省告示 228号)の一部改正を行い、PHS事業に関する番号計画を策定した。
 このPHS事業化の最終方針の決定により、先にPHS事業化に向けて準備会社を設立した3グループの計23社(6年度末現在)に対して、PHS事業が許可された。これにより、首都圏を中心に7年7月から順次サービスが開始される見通しとなった。また、6年5月の電気通信技術審議会答申を踏まえ、郵政省では、6年11月、PHSの端末設備に関する技術基準(端末設備規則の規定に基づく移動電話端末等の送信タイミング条件等)を制定した。
 また、PHS方式の海外への普及については、香港でも日本の方式を導入することが決定され、来年にもサービスが開始される見通しとなった。また、(財)電波システム開発センター(RCR)では、6年12月にシンガポール、マレイシア、インドネシアの3か国の要請で、7年3月にフィリピン、タイの2か国の要請で日本のPHSを紹介するセミナーを開催した。
 (イ) CATVを利用した電話サービスの事業化の検討
 CATVを利用した電話サービス(以下「CATV電話」という。)は、地域情報通信市場の活性化のため、郵政省が、5年12月以来、CATV事業者による通信サービスも含めた「フルサービス」の実現の促進を重要施策として盛り込み、事業化への機運が高まってきたところである。このような状況を踏まえ、郵政省では、6年11月、CATV事業者、電気通信事業者等からのヒアリングを踏まえ、CATV電話の事業化のガイドラインを定めた。それによると、CATV電話事業を営む事業者は電気通信事業法に基づく第一種電気通信事業者となることを要件としたうえ、NTTと共通の番号体系を採用できること、ネットワークの接続は事業者間の協議により適切な条件で円滑に実施されること、低廉かつ多様な利用者の料金を設定すること等が望ましいとしている。また、このガイドラインを受けて、郵政省では、7年2月、「事業用電気通信設備規則の細目」(昭和60年郵政省告示 228号)の一部改正を行い、NTTやCATV事業者等の固定電話事業者、無線呼出し事業者等の番号計画を策定した。
 (ウ) 情報通信端末機器の高度化の推進
 電気通信審議会答申(6年5月)では「社会経済システムの情報化のためには、光ファイバ網の整備と連携した多様なアプリケーション・端末の開発が必要」と指摘されたところである。また、6年4月の携帯・自動車電話移動機の売り切り制導入、7年3月の無線呼出受信機の売り切り制導入により市場は急速に拡大しており、今後とも情報通信端末機器市場はますます多様化するものと予想される。このような状況を踏まえ、郵政省では、情報通信端末機器の高度化に向けた施策を総合的に推進する体制を整備した。
 オ 電気通信の番号計画
 6年4月の売り切り制の導入に伴う携帯・自動車電話の番号需要の増大、電気通信分野における多彩なサービスの進展や、通信・放送融合サービスの登場が予想されることから、今後の電気通信の番号に対するニーズはますます増大かつ高度化していくものと考えられる。また、世界的な情報通信基盤の構築に向けた国際的な取り組みが進められている中で、欧米各国でも番号計画や番号管理の在り方の検討が行われている。
 このような状況を踏まえ、郵政省では、我が国の今後の番号需要への対応、ニュービジネスの振興及び国際的連携の推進などの観点から今後の電気通信の番号計画及び番号管理の在り方について検討を進めるため、「電気通信の高度化のための番号の在り方に関する研究会」を6年11月から開催しており、7年4月を目途に研究結果を取りまとめる予定である。
 

(2)  新世代通信網の整備


 郵政省では、電気通信の利便性を飛躍的に高める新世代通信網の整備をはかるため、3年から「電気通信基盤充実臨時措置法」により、光ファイバや同期デジタル伝送装置等で構成される高度通信施設整備事業の推進を図ってきた。
 現在、当該事業として認定を行った事業者は17社であり(7年3月現在)、税制支援措置として、法人税における特別償却、固定資産税の特例措置、日本開発銀行等からの低利融資等の支援措置が実施されている。


第2-2-4-1図 一元化された電気通信機器への貼付マーク
PHSの利用光景(イメージ)
 

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