平成7年版 通信白書

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第2部 情報通信政策の動向

2 放送のデジタル化の推進


 

(1) 「放送のデジタル化に関する研究会」の開催


 郵政省では、衛星系、地上系、有線系の各放送分野へのデジタル技術の導入について総合的に検討するため、5年5月から「放送のデジタル化に関する研究会」を開催し、検討を行った。
 6年4月に取りまとめられた報告書では、放送のデジタル化の動向を踏まえ、放送システムのデジタル化により、多様で高度な機能が追加され、インテリジェント化(高機能化・多チャンネル化・双方向化)が実現できるとされている。
 その基本方針として、[1]統合デジタル放送(ISDB:Integrated Services Digital Broadcasting )の採用、[2]サービスの新展開に柔軟に対応できる伝送容量とそれを確保できる適切な周波数帯域の設定、[3]圧縮符号化方式としてMPEG-2方式の実用化の推進、[4]地上系の変調方式としてOFDM変調方式の開発実用化、[5]適切な周波数帯域幅を単位とする免許方式の導入、[6]放送番組を委託して放送できる制度の地上放送への導入があげられ、急速な技術の進展や諸外国の規格化、ITUの標準化、我が国の実用化の動向に対応するため、8年頃を目途として標準化等に取り組むことが必要であるとされている。
 

(2) デジタル化の基本政策の検討


 21世紀のマルチメディア時代における放送の調和ある円滑な発展を図っていくためには、適切な視聴者保護を確保しつつ、技術動向及び国際的な潮流をも十分に見据えながら、技術開発、事業化投資、需要拡大等の一層の円滑化を図っていくことが必要であり、視聴者、放送事業者、メーカー等関係者の立場を十分に踏まえながら、長期的な展望を適宜適切に明らかにしていくことが重要との観点から、郵政省では、6年5月から、「マルチメディア時代における放送の在り方に関する懇談会」を開催した。7年3月に取りまとめられた報告書では、放送のデジタル化の推進方策として、デジタル放送の将来を展望し、[1]技術開発・標準化の推進、[2]周波数の確保及び割当、[3]視聴者保護のためのサイマル放送の検討、[4]制度面の整備、[5]公的支援、[6]NHKの先導的役割を内容とする環境整備の必要性が提言されている。
 また、デジタル放送導入の開始可能時期については、通信衛星(CS)によるテレビ放送では1996年から、地上テレビ放送では2000年代前半から、地上音声放送では遅くとも2000年代前半頃までには、それぞれデジタル放送の導入が可能となるような環境整備に努める必要があるとしている。また、CATVについても1996年頃からデジタル放送の導入が可能となるような環境整備に努めることが必要であるとしている。
 放送衛星(BS)によるテレビ放送に関しては、現行放送方式による視聴者の利益を確保しつつ、ハイビジョン放送の本格的普及を図り、デジタル放送の導入は、2007年以降の実用化を課題として検討すべきであるという意見と、デジタル技術の急速な発展や国際動向を踏まえ、次期放送衛星(BS-4)の後発機の段階から、デジタル放送方式を含む放送方式の中から放送事業者による選択が可能となるような環境を整備すべきであるという意見に分かれた(第2-2-5-1表参照) 。
 さらに、ハイビジョンの普及方策として、[1]ハイビジョン放送の充実、[2]ワイドテレビへのM/Nコンバータの内蔵化、[3]ハイビジョン番組制作設備の整備に対する金融、税制上の支援、[4]立体ハイビジョン番組制作技術の開発、[5]放送以外の分野におけるハイビジョンの活用、[6]ハイビジョン番組の国際交流の促進、[7]CATVにおけるハイビジョン番組伝送の促進が提言されている。
 

(3) デジタル放送方式に係る技術基準の策定


 デジタル放送の導入により、放送メディアは、進展著しい情報通信メディアの中で今後とも競争力の強化が図られ、より豊かな国民生活の実現に貢献することが期待できること、及び諸外国及びITUにおいてデジタル放送に対する規格化の動きが急速に活発化していること、我が国においても衛星によるデジタル放送を早期に実施したいという要望があること等を踏まえ、郵政省では、6年6月、電気通信技術審議会に、デジタル放送に係る技術的条件について諮問を行った。
 ここでは、デジタル技術は、メディア横断的な技術であることから、通信等の他のメディアとの整合性を考慮しつつ、地上放送、衛星放送、ケーブルテレビの各メディアについて横断的、総合的な検討が行われている。このうち、通信衛星による衛星デジタル放送及びデジタルCATV放送については、7年3月に、放送方式の機能及び性能の実証実験に使用するための暫定方式が取りまとめられ、実証実験が開始されている。
 また、専門家レベルで、日・欧間でデジタル放送方式に関する情報交換を進めるため、6年10月、フランクフルトにおいて、第1回目の日・欧専門家会議が開催され、放送のデジタル化の推進に関する考え方、実用化計画、放送方式の検討状況について議論され、今後も継続的に開催していくこととなった。
 

(4) 高度デジタル技術を活用した放送番組制作の促進


 放送のデジタル技術等の導入に伴い、受信された情報をいったん受信設備に蓄積し、視聴者が個々の関心に応じて多様な方法で視聴することができる放送番組の放送が可能となったが、このような技術革新を活用した放送番組の制作を促進するため、[1]同番組制作の施設整備事業を行う者に対し、産業投資特別会計からの出資を原資として、通信・放送機構から出資、[2]番組制作者が同番組制作のために、金融機関から借入を行うことに対し、通信・放送機構が債務保証、[3]通信・放送機構に補助金を交付することにより同番組の制作に関する情報提供を行うこと、を内容とする支援を行うこととし、関連の法律を整備することとしている。
 

(5) 次世代デジタルテレビジョン放送システムに関する試験研究の支援


 高品質な移動体受信、放送中継波における同一周波数の利用及びゴーストや雑音のないきれいな画像や各種データの受信が可能なOFDM変調方式を用いた地上デジタルテレビジョン放送システムの試験研究を行うため、7年3月、(株)次世代デジタルテレビジョン放送システム研究所が設立された。これには、基盤技術研究促進センターのほか、NHK、民放キー局、大手家電メーカーが出資しており、6年度から10年度までの計画で研究が行われることになっている。
 

(6) インテリジェント放送システム研究開発基盤施設整備事業の推進


 デジタル技術を導入したインテリジェント放送システムの研究開発を行える施設の整備、同施設を利用に供すること及び維持・管理の業務を行う「インテリジェント放送システム研究開発基盤施設整備事業」を推進するため、同施設を整備する者に対し、通信・放送機構を通じ、産業投資特別会計からの出資による支援を行うこととしている。
 

(7) デジタル技術政策等の推進体制の整備


 郵政省では、デジタル技術等放送技術の抜本的革新による放送システム全体の変革期における行政の効率的な運営体制を整備するため、7年度において、放送メディアの横断的・総合的な放送技術政策の企画、立案、推進等を行う放送技術政策課、デジタル技術を活用した放送全体のデジタル化の開発等を行うデジタル放送技術開発課を設置することとしている。


第2-2-5-1表 デジタル放送導入の将来展望
 

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