平成7年版 通信白書

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第3部 マルチメディア化と情報通信市場の変革

2 主な情報通信政策

 

(1)  電気通信分野への競争導入


  ア 背景
 電気通信におけるEUの行動の基本的な目標は、電気通信が、域内市場統合による利益の全面的な享受、世界的な経済競争における欧州の地位向上、欧州の団結力強化等に中心的役割を果たすべく、電気通信機器の広大な共同市場を創出し、欧州の電気通信網とサービスを世界全体の中で競争力のあるものとすることにある。この行動の包括的枠組みとなっているのが、1987年6月の「電気通信サービス及び機器の共同市場の発展に関するグリーン・ペーパー」である。
 EUでは、これまでは基本サービス(音声電話サービス)提供に関する加盟各国の排他的権利を認める一方、それ以外のサービスの提供については自由化することとしていた。
  イ 概要
 EUの電気通信自由化スケジュール案は、第3-1-2-1表 のようになっている。1993年4月、欧州委員会は、1998年までに音声電話サービスの完全自由化を実施することをポイントとする「電気通信サービス部門における状況見直しの諮問結果に関するコミュニケーション」を採択し、音声電話サービスを含む電気通信サービスの自由化に関するスケジュールを、電気通信閣僚理事会に提案した。これを受け、電気通信閣僚理事会は、域内音声電話サービスの自由化の原則的実施期限を、1998年1月1日とすること等に関する決議を1993年6月に採択した。但し、スペイン、ポルトガル、ギリシャ及びアイルランドは、実施について5年間の猶予が与えられ、ルクセンブルグ及びベルギーについても2年間の猶予が与えられている。
 同決議を受け、欧州委員会は、1994年10月及び1995年1月に、情報通信基盤の自由化に関するグリーン・ペーパーを相次いで採択し、電気通信閣僚理事会に提出した。その概要は次のとおりである。
 [1] 情報通信基盤の自由化に伴う、欧州の産業の競争力の強化を最大の便益と位置付けた、自由化の段階的実施の提案
 [2] 電気通信部門の完全な競争のための規制の枠組み確立に係る実質的内容(ユニバーサル・サービスの提供、インフラ及びサービスの相互接続性等)の検討
 また、1994年11月の電気通信閣僚理事会において、1998年からEU域内におけるすべての電気通信インフラに関する規制を撤廃するという決議が採択された。一方、欧州委員会が1995年からの自由化を提唱していた、ケーブルテレビネットワークや各加盟国で認可されている電力事業者及び鉄道事業者等の公共事業者の、自社用通信網(既存代替インフラ)を利用した通信サービスの提供に関しては、加盟国の合意が形成されず、最終的に設備ベースの規制撤廃期限を1998年とすることで合意をみている。
 

(2)  汎欧州ネットワーク構築に向けた行動計画


  ア 背景
 雇用の創出、国際競争力の強化等、EU域内において達成すべき課題を示すため、1993年12月、白書「成長・競争力・雇用-21世紀に向けた取組方法」が欧州理事会で採択された。この中で、EUは2000年までに 1,500万人の雇用を創出し、高い水準で推移しており深刻な問題となっている失業率(第3-1-2-2図参照) を半減させることを目標として掲げている。また、同白書では、こうした目標を達成するための手段の一つとして情報通信基盤の整備がうたわれており、真の単一市場の形成及び経済発展のための基盤として、電気通信分野の汎欧州ネットワーク(TEN:Trans European Network)構築の必要性が指摘されている。
  イ 概要
 TEN実現の具体策を検討するため、前述の白書における勧告に基づき組織された専門家グループによって、1994年6月の欧州理事会に「欧州ならびにグローバル情報社会-欧州理事会への勧告」と題されたレポート(バンゲマン・レポート)が提出され、支持を得た。その主なポイントは、[1]電気通信の自由化の一層の促進、[2]欧州レベルでの規制機関の設立、[3]ネットワークの相互接続性、サービスとアプリケーションの相互運用性の確保、[4]標準化の加速、欧州標準化プログラムの見直し、[5]国際通信、長距離通信及び専用回線の料金の見直し、[6]知的所有権、プライバシー及び情報セキュリティの保護に関する共通で合意された規制枠組みの確立、[7]10のアプリケーションの提案、となっている。
 欧州委員会はこれを受け、その具体的な行動計画を示した「情報社会に向けた欧州の取り組み方-行動計画」を1994年7月に採択した。この中で、欧州委員会はそれまで採用・検討が行われた行動や提案を評価し、今後必要な行動を周知するとともに、「規制及び法的枠組み」、「ネットワーク、基本サービス、アプリケーション及びサービス内容」、「社会的・文化的側面」及び「情報社会の促進のための活動」の4分野について、具体的スケジュールに基づき関係機関が検討を行うことを要請している。


第3-1-2-1表 EUにおける電気通信自由化スケジュール案

第3-1-2-2図 EU主要国,米国及び日本における失業率の推移
 

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