平成7年版 通信白書

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第3部 マルチメディア化と情報通信市場の変革

1 マルチメディア化

 テキスト、データ、音声、動画を統合して利用し、効果を上げている例として、住宅設計時のコンサルティングに3次元コンピュータグラフィックス(CG)によるシミュレーションを導入している実験と教育の現場でビデオ・オン・デマンドを活用している事例を紹介する。
 

(1)  3次元CGを利用した対話型住宅設計コンサルティングシステム


 関西文化学術研究都市において、新世代通信網実験協議会が実施主体となって進めている広帯域ISDN実用化実験の一つとして、大手住宅販売会社等が、広帯域ISDNによる3次元CGデータの伝送を利用した住宅設計時の対話型のコンサルティングシステムの実験を、6年7月から行っている。
 この実験では、住宅設計時のコンサルティングに3次元CGによるシミュレーションを導入して視覚によるプレゼンテーション効果を高め、顧客があらかじめ住宅の出来上がりを立体の映像で確認すると同時に、遠隔地にいる設計者との間で動画と音声を利用した対話を交えて、住宅に対する要望を設計に反映させていくことを狙いとしている。
 このシステムでは、顧客のワークステーション(WS)と離れた所にいる専門家(設計者等)のWSが広帯域ISDNで接続されており、大量のデータを必要とする3次元CG化した映像とともに互いの映像と音声が伝送できるようになっている。設計者はWSを操作して、設計する住宅の出来上がりの予想を3次元CGで再現し、顧客側のWSに伝送する。
 これまでの住宅設計では、顧客と設計者との打合せは平面図面に基づいて行われるため、一般の顧客にとって、設計図から出来上がりのイメージを想像することは非常に難しかった。しかし、このシステムでは、出来上がりの外観や内装について、図面を基に3次元CGの技術を利用して映像化しているので、顧客は住宅の外観や内装をいろいろな角度から眺めたり、実際の住宅の回りや内部を歩いているような感覚で視点を変えて見ることができ、実際の住宅の出来上がりのイメージを仮想的に体験することができる。顧客が映像を確認しながら、内装の色や材質、間取り等の設計変更の希望を設計者に伝えると、設計者は設計変更を行い、その結果はリアルタイムで顧客側のWSで確認することができる。また、設計者は、テレビ電話的に顧客の表情を確認することができるので顧客の満足度を確かめながら作業を進めることができる。
 このように、3次元CGやテレビ電話的な機能を複合的に利用することにより、住宅設計時のコンサルティングを遠隔地にいながら、より効果的に進めることが期待される(第3-2-3-1図参照) 。
 

(2)  教育分野でのデジタル・ビデオ・オン・デマンドの利用


 通信・放送機構では、一般会計からの出資を受け、愛知県岡崎市に通信・放送機構岡崎リサーチセンターを整備し、「フルネットワークに関する研究開発」を進めており、その一環として、公共的分野におけるアプリケーションの先導的開発が進められている。
 岡崎市では、この岡崎リサーチセンターと市内の小中学校との間を光ファイバで結んで、デジタル・ビデオ・オン・デマンドを活用した授業が6年11月から行われている。
 ここでは、デジタル・ビデオ・オン・デマンドのリアルタイムで複数の端末から検索できる特長をいかして、これまでに市の教員が制作した映像教材をデジタル化してビデオ・サーバに取り込み、マルチメディア・データベースとして利用している。これにより、児童・生徒達が必要な映像教材を授業のなかで能動的に利用することが可能となっている。
 これまで、理科や社会の授業では、児童・生徒がグループに分かれて、あるテーマについて、図書や辞典等を調べながらまとめあげるグループ学習を取り入れていたが、デジタル・ビデオ・オン・デマンドを導入することによって、デジタル化された動画の教材が新たに利用できることとなった。映像教材は、教科別・テーマ別等に分類されてメニュー化されているため、児童・生徒自ら端末を操作し、テーマと自分の関心に応じて、必要な映像を瞬時に検索をすることが可能であり、早送り・一時停止等の機能を活用して効率的に学習を進めている。また、複数の端末からの同時アクセスが可能なので、複数のグループが効率的に学習を進めることも可能となっている。
 岡崎市では、7年度には、市内の30の小中学校をセンターと接続して、ビデオ・オン・デマンドを利用した授業を拡大する予定である。


第3-2-3-1図 対話型住宅設計コンサルティングシステムの利用イメージ図

デジタル・ビデオ・オン・デマンドを利用した授業風景,デジタルVTR編集設備
 

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