平成7年版 通信白書

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第3部 マルチメディア化と情報通信市場の変革

5 モバイル化

 移動の途中や移動先で、ネットワークにアクセスしてデータベースを利用したり、電子メール等を利用してコミュニケーションを図ったりするモバイル化の例として、緊急を要するガス供給業の保安業務での利用と携帯情報機器のネットワーク利用について紹介する。
 

(1)  携帯型地図検索システム


 あるガス供給業者では、ガス供給設備の緊急保安業務を迅速かつ効率的に行うために、緊急保安車両に移動通信を利用した携帯型地図検索システムを導入している。ガス漏れ等の際の緊急保安業務を行うにあたっては、現場のガス管配置図等の正確な情報を入手することが必要である。従来は、車両に常に担当エリアの地図を積み込み、指令基地との情報のやり取りは無線による音声通信に頼っていたが、このシステムの導入により、保安作業に必要な地図及び関連情報等のデータ伝送が可能になり、ガス管の位置やガス管の機能、材質等の関連情報を確認しながら、迅速に保安業務を進めることが可能となっている。
 このシステムでは、緊急保安車両に、ペン入力タイプの携帯型コンピュータとCD-ROM駆動装置及び通信用の自動車電話等を搭載している。担当者はCD-ROMに収められたガス管の配管情報等の地図情報を携帯型コンピュータから検索するとともに、CD-ROMに収められていない最新の情報や詳しい情報については、自動車電話経由でデータベースセンターにアクセスして、携帯型コンピュータ上に表示して確認している。これにより、常に最新の情報を確認しながら、作業を行うことが可能になっている。
 また、グローバル・ポジショニング・システム(GPS:Global Positioning System )の測位データを利用して緊急保安車両の位置を指令基地で確認したり、デジタル・カメラで撮影した事故等の現場の映像を指令基地に伝送して、処置の判断を確認するなどの利用についても実験的に開始している(第3-2-3-6図参照) 。
 

(2)  携帯情報機器のネットワーク利用


 小型の携帯用の端末を持ち歩いて、どこにいてもコミュニケーションをとったり、ネットワークで提供されるサービスを利用したりしたいというニーズに対応するために、従来の電子手帳が提供していたようなスケジュール・住所・電話番号等の管理機能(PIM:Personal Information Management 機能)に加え、コミュニケーション機能を強化した携帯情報機器が登場してきている。
 米国では、このような携帯情報機器を利用するネットワークサービスが1994年9月から始まっている。このサービスでは、GUI(Graphical User Interface)を用いて容易に電子メールを利用したり、着信したメールを発信者や用件に応じて分類したり、他の人に転送したりするなどの処理のできる機能を用意している。さらに、利用者が事前に日程や予算等の情報を入力しておけば、条件に合う飛行機やホテル等の予約が自動的にでき、また、キーワード等の必要な条件を与えておけば、必要な情報をデータベースから一定の期間にわたって検索することができるなど、利用者に代わってネットワーク側がサービスを代理して提供するエージェント通信サービスと呼ばれる機能も計画されている。このようなネットワークサービスの利用が可能な携帯情報機器が、米国では1994年9月に発売されている。
 また、我が国でも、パソコン通信と接続してパソコンや他の携帯情報機器との間で電子メールの交換ができる携帯型情報機器が登場するなど、携帯可能なパーソナルな機器をネットワークと接続して、様々な場所で利用できる環境が整いつつある。


第3-2-3-6図 携帯型地図システムの利用イメージ図
 

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