平成7年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

第3部 マルチメディア化と情報通信市場の変革

3 ソフトウェア技術


 

(1)  通信ソフトウェア


 電子メール、電子掲示板をはじめとする情報通信ネットワークを利用した非同期(蓄積)型のメッセージ交換は、従来利用されてきた電話やテレビといった同期(即時)型メディアにはない、[1]利用者が望む時に利用が可能、[2]時差がある時に有効、[3]文章や写真等の伝送に有効などの特長を持つことから、新たなコミュニケーション手段として普及が進んでいる。今後さらに非同期型メッセージ交換の普及が進むにつれて、電話やテレビなどの同期型メディアを補完し、ネットワークを通じた人脈形成や社会活動といった新たなインパクトを社会に与えるものと考えられている。
 最近、急成長しているパソコン通信やインターネットでは各種のGUIを採用し操作性を向上した通信ソフトウェアが製品化されている。また、画像・音声を含めたマルチメディアに対応する通信ソフトウェアの開発の取り組みも行われている。
 ここでは、次世代の通信ソフトウェアの開発を手掛ける米国のあるベンチャー企業の動向に注目する。同社は、マルチメディア通信のための端末〜ネットワークを含めた統一プラットフォームを実現する技術として、携帯情報機器に搭載可能な通信アプリケーションのプラットフォームを提供する基本ソフトウェアと通信アプリケーション用プログラミング言語を開発している。この基本ソフトウェアがサポートする電子メールは、操作性が良く、セキュリティが充実し、イラスト等の送付が簡単であり、また、このプログラミング言語はエージェント機能を備えている。また、メーカー、通信事業者ともに通信ソフトウェア分野においてデファクトスタンダードができることでメリットを受けるとともに、これらは携帯情報機器のOSの主流を担っていくものと考えられることから、同社に対しては内外の多くの企業が出資を行い、提携を結んでいる。
 この基本ソフトウェアを採用した最初の製品は、同社に出資する日本のメーカーが1994年11月に米国市場に送り出した携帯情報機器である。また、同社に出資する米国のメーカーもこの基本ソフトウェアを搭載した携帯情報機器を発表している。さらに、パーソナルコンピュータへの搭載も予定されている。
 また、このエージェント機能をサポートするネットワークサービスは、同社に出資する米国の通信事業者が1994年9月よりサービスを開始している。現在はネットワーク側で代行受信した電子メールのうち不要なものをふるい落とすサービス等の提供だけであるが、今後サービスを拡張し、電子ショッピングサービス等を行う予定である。また、同社に出資する日本の通信事業者も今後日本語版エージェント通信サービスを行う予定であり、本サービス実施に先立ち7年3月よりモニター参加によるエージェント通信のサービス実験を開始している。
 

(2)  マルチメディアOS


 マルチメディアが社会へ普及するにつれ、ネットワークを活用した様々なサービスが登場するものと予想され、それら高度なサービスを受けるとともに音声・画像・映像を始めとする様々な情報を入手し、加工するための情報通信端末としてのパーソナルコンピュータが求められている。そこで、マルチメディアデータの扱いや、外部機器等の制御が行えるようにしたマルチメディアOSが開発されている。マルチメディアOSでは、動画、静止画、音声などのフォーマット等が標準化されるため、ユーザーは、映像、音声の編集を簡単に行うことができる、ネットワークを通じて映像、音声情報のやりとりができるといった利点がある。
 このようなマルチメディアOSの開発において、パーソナルコンピュータのOS市場で主導権を握る米国の各企業が中心的な役割を果たしており、1991年から1992年にかけて相次いでパソコン用のマルチメディアOSが発表された。また、1994年から1995年にかけて各社が発表するマルチメディアOSは、ネットワーク機能が強化されている。具体的には、TCP/IP等のプロトコルが実装されたり、インターネットへのアクセスが簡単にできるように必要ソフトウェアが標準装備されたりしている。

 

2 デジタル技術 に戻る 4 ハードウェア技術 に進む