平成7年版 通信白書

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第3部 マルチメディア化と情報通信市場の変革

1 研究開発をめぐる企業提携の動向

 研究開発をめぐるマルチメディア時代に向けた企業提携の具体的事例として、携帯情報機器/通信ソフトウェア、セット・トップ・ボックスの動向を取り上げる。
 

(1)  携帯情報機器/通信ソフトウェア


 第1節で述べたように、新たなコンセプトの「パーソナル・コミュニケータ」としての携帯情報機器を目指して、米国のあるベンチャー企業が提案するシステム・ソフトウェアをめぐり、活発な企業提携が繰り広げられている。携帯情報機器の製品化には、システムの核となるOSやMPU、小型軽量化技術や量産技術が必要となる。さらに、「パーソナル・コミュニケータ」の実現には、通信網との密接な連携も欠かせない。そこで、同社は自社が提案する技術を世界的な標準として確立するため、世界中の有力企業と協力する戦略を取り、これまでに日米欧の多くの端末機器メーカー、通信事業者等と提携関係を結んでいる(第3-3-3-1図) 。
 この企業提携は、同社がシステム・ソフトウェアを供与し、端末機器メーカーはそのシステム・ソフトウェアを組み込んだ機器を製造し、事業者はそのシステム・ソフトウェアを活用したサービスを提供する図式となっている。こうした企業提携が成立した背景には、将来の携帯情報機器市場が大きく拡大すると予測される中で、携帯情報機器市場でのデファクトスタンダードを確立することで、端末機器メーカーは情報端末などの機器を売りやすくなり、通信事業者はネットワーク利用による増収が期待でき、コンテンツ等のサービス提供者は市場に参入しやすくなることがあげられる。
 同社と提携関係を結ぶ企業のうち、端末機器メーカーについては、1994年から1995年にかけて本システム・ソフトウェアを組み込んだ製品が米国で相次いで発表され、さらに今後もこのOSを採用した製品がいろいろと発表される予定である。また、通信事業者については、1994年から同社のシステム・ソフトウェアを活用したサービスが米国で開始され、我が国でも同様のサービス提供に向けた取り組みがなされている。
 

(2)  セット・トップ・ボックス


 第1節で述べたように、双方向サービスに対応する次世代セット・トップ・ボックスには、新たにコンピュータメーカー、家電メーカー等が市場に参入している。市場の参入にあたり、従来よりセット・トップ・ボックスを手掛けてきた企業との間で提携が行われている。
 コンピュータメーカーを始めとする各企業は、今後大きな成長が予測されるセット・トップ・ボックス市場への参入を図る際に、必要な仕様を絞り込むにあたって従来よりセット・トップ・ボックスを手掛けてきた企業から協力を得ること、従来のセット・トップ・ボックスの市場で大きなシェアを持つ企業を囲い込むこと等を目的としている。
 一方、第1節で述べたように、セット・トップ・ボックス市場の覇権を握ろうと、日米の大手メーカーの合従連衡も行われている。そのひとつが、日本の家電メーカーと米国のソフトウェア会社によるマルチメディア分野での包括提携であり、この米国企業が開発中のビデオサーバに接続するセット・トップ・ボックスの共同開発を表明している。また、別の日本の家電メーカーと米国のコンピュータメーカーが提携し、この日本企業がゲーム機として販売するマルチメディア・プレーヤーをベースとしたセット・トップ・ボックスの開発をはじめとした、マルチメディア関連機器の共同開発を表明している。


第3-3-3-1図 携帯情報機器をめぐる技術提携
 

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