平成8年版 通信白書

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第2章 情報通信政策の動向

(5)  移動衛星通信サービスの提供

 ア Sバンドを利用する国内移動衛星通信の新展開
 国内の移動通信は、利用者のニーズの多様化や通信需要の急速な拡大に伴い、サービスエリアの一層の拡大が望まれている。これらの需要に応じるためには、衛星を利用した新たな移動通信システムの構築が効果的であり、その早期導入が求められている。
 そこで、郵政省は、Sバンド( 2.6/2.5GHz 帯)を利用する国内移動衛星通信システムの導入を図るため、7年8月、「無線局免許手続規則」等を改正し、Sバンドを利用する国内移動衛星通信システムの導入に必要となる無線設備の技術基準を定め、無線局の局種、無線設備の操作等に関する規定を整備した。
 また、7年8月のN-STARa人工衛星打ち上げに続き、8年2月のN-STARb人工衛星にも成功しており、これらの人工衛星の中継による、海上及び陸上での国内移動衛星通信サービスの提供が8年3月から開始される。
 イ インマルサットの新サービスの導入
 (ア)  インマルサット陸上移動衛星通信サービスの導入
 インマルサット陸上移動衛星通信システムは、自動車等に対して衛星通信サービスを全世界的に提供するシステムであり、地上系通信システムの利用が困難な地域や災害時等における迅速かつ確実な手段として早期の実用化が期待されている(第2-4-5図参照)。
 そこで郵政省は、8年3月、インマルサット陸上移動衛星通信サービスの導入のために、「無線設備規則」等を改正した。
 これにより、インマルサット陸上移動衛星通信サービスにおけるインマルサットA型、B型、C型、M型及びミニM型の携帯移動地球局の無線設備に関する条件等が定められた(第2-4-6表参照)。
 (イ)  インマルサット船舶地球局への高速データ通信システムの導入
 インマルサット船舶地球局のインマルサットA型システムに、これまでの音声やファクシミリ通信等に加えて、ISDN回線との接続を可能とし、高品質音声伝送、蓄積型の動画伝送等の新しいサービスに対応できる高速データ通信システムを導入するため、郵政省は、7年10月、「無線設備規則」の一部を改正した。
 ウ 高度海上通信システムの推進
 高度海上通信システムとは、海上における遭難及び安全に関する世界的な制度(GMDSS)で、従来のモールス通信を主体としたものに代えて、衛星通信技術やデジタル通信技術の利用により、船舶がどのような海域を航行していても遭難、安全に関する通信を確実に陸上の救助機関や付近を航行する船舶に伝え、陸上と船舶が一体となった捜策救助活動を可能とするシステムである。我が国において、モールス通信を主体とする従来システムから高度海上通信システムの適用に移行した船舶は7年12月末で 413隻と対象船舶約2万1千隻の3%強という状況にある。
 このような状況から、官民一体となって高度海上通信システムの計画的な導入を図るため、郵政省は、7年10月、水産庁、運輸省及び海上保安庁並びに関係団体とともに「GMDSS導入促進連絡協議会」を設立し、その事業として8年3月「GMDSS導入促進シンポジウム」を開催した。
 また、高度海上通信システムにおける義務船舶局に備えなければならない無線設備に代替できる船舶地球局の無線設備に、インマルサット船舶地球局のインマルサットB型無線設備を加えるため、郵政省は、7年10月、「電波法施行規則」を改正した。
 エ 低中軌道周回衛星通信システム(LEOシステム等)の推進
 近年、全世界をサービスエリアとする非静止衛星通信システムの導入が欧米各国で計画されている。このシステムは、低・中高度の軌道を周回する数十個の衛星を利用することから電波が届かないブラインドエリアがほとんどなく、地上のどこからでもアクセス可能である特徴を有している。このため、ビル陰や地形によってサービスが制約される地上系通信網を補完しグローバルな情報通信ネットワークを実現するための有望なシステムとして、我が国においても2〜3年後をめどに複数のシステムによるサービスの開始が計画されている。
 郵政省は、当該システムの円滑な導入を図るため、7年9月、電気通信技術審議会に対し、「非静止衛星を利用する移動衛星通信システムの技術的条件」について諮問を行った。同審議会では、移動衛星通信システム委員会を設置して審議を行っており、8年6月以後に一部答申が出される予定である(第2-4-7図参照)。
 オ 遠隔医療診断等のための移動衛星通信活用技術の開発
 電波を利用した情報通信基盤は、有線と比べ、移動通信に適している、地勢に左右されず整備しやすい、災害に強い等の特徴を有していることから、情報通信基盤の整備が立ち遅れている地域でも活用できるメディアとしてその有用性が再認識されているところである。
 そこで、郵政省では、7年度第一次補正予算で通信・放送機構に出資し、通信・放送機構は、5か年計画で衛星を利用して情報通信基盤の整備が立ち遅れている地域での、公的サービス等の向上を実現する技術開発を行っている。具体的には、医療分野をモデルケースとして、衛星通信回線を使用して医療研究機関等と地域を巡回する移動検診車との間で高品質な診断画像データを伝送し、地域医療の向上に資するような、機動性のある遠隔医療支援通信システム等の研究開発を実施するものである。

第2-4-5図 インマルサット陸上移動衛星通信システム概要図

インマルサットシステムのC型及びM型の携帯移動地球局

インマルサットシステムのC型及びM型の携帯移動地球局

第2-4-7図 移動衛星通信システムの構成図

 

 

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