平成8年版 通信白書

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第2章 情報通信政策の動向

(4)  ITUの動向

 ア 年次理事会の動向
 1995年6月、スイスのジュネーブにおいて年次理事会が開催された。今次理事会は、1994年9月、京都市において開催されたITU全権委員会議において改選された選挙職が対応する最初の理事会であり、従来より2日短い新審議手続きを採用しつつも、「世界電気通信政策フォーラム」等の戦略問題をはじめとして財政、人事等多岐にわたる審議を行い、新執行体制におけるITUの効率的運営の方向付けを行った。主な決定事項は次のとおりである。
[1] 世界電気通信政策フォーラムのテーマを、我が国から提案した「衛星によるグローバルな移動パーソナル通信」に決定した。
[2] ITU初の2年予算を採択するとともに、大幅な予算削減により、1単位あたりの分担金を微増に抑制した。
 イ ITU各部門の活動動向
 (ア)  ITU-T
 ITU-Tは、電気通信の技術、運用及び料金等の標準化に関する研究及び勧告の作成を行っている。ITU-TにはWTSCとその下に15の研究委員会(SG)がある。最高意思決定機関であるWTSCは4年ごとに開催されることとなっており、1996年に第2回WTSCが開催されることとなっている。
 1996年1月には、宮崎市において第11研究委員会が開催され、将来のマルチメディアに欠くことのできない広帯域ISDN関連技術等、多数の勧告を作成するための審議が行われた。
 (イ)  ITU-R
 ITU-Rは、無線通信の技術・運用等の問題の研究、勧告の作成、無線通信規則の改正、周波数の割当て、登録等を行っている。ITU-Rには、RA及びWRCの二つの会議があり、2年に1度開催されることとなっている。ITU-Rの総会であるRAは、無線通信研究委員会(SG)の構成等、ITU-Rの組織の決定、SG議長・副議長の任命、作業方法の見直し、無線通信に関する研究課題及び勧告の承認を行っている。また、WRCは、電波利用に当たっての国際的な取決めである無線通信規則を改正するために開催される会議であり、国際的な周波数分配の決定、周波数及び静止衛星軌道の使用のための手続きの整備等を行っている。
 1995年10月、スイスのジュネーブでRA-95が、また、それに続く10月から11月にかけて、同じくジュネーブでWRC-95がそれぞれ開催された。RA-95及びWRC-95では、周回衛星を利用した衛星通信システムの問題が主要な審議項目の一つとなった。
 周回衛星は、静止衛星に比べ低い軌道(静止軌道:3万 6,000km、周回衛星:数百km〜1万km)に位置していることから、信号が地上から衛星を介し再び地上に戻ってくるまでの損失が少なく、またそれに要する時間が短くなる。このため、静止衛星に比較し、より小型の機器で伝送遅延の短い通信が可能である。このような特徴を踏まえ、2000年ごろのサービスの提供開始を目指し、複数のシステムの開発が進められている。
 このような経緯から、RA-95では、周回衛星を利用した移動衛星通信システムの導入の基本となる諸勧告の承認が行われ、WRC-95では、周回衛星を利用した通信衛星システムへの周波数の決定及び関連規定の整備が行われた。
 特に、WRC-95では、 840機の周回衛星を利用するなどの大規模な固定通信システムのための周波数が決定されたが、この周波数の一部は、現在、我が国で静止衛星システムに利用しているものである。このため、郵政省では、WRC-95で策定された決議に従い、同周回衛星固定通信システムと我が国の静止衛星システムとの周波数共用の可能性について検討していくこととしている。
 なお、周回衛星に係る事項のほか、RA-95では、FPLMTS及びデジタル放送技術に関する諸勧告についての承認が行われており、WRC-95では、衛星放送プランの見直し及び短波放送のための使用手続きの検討並びに電波利用手続きの簡素化を目的とした無線通信規則の全面改正が行われた。
 (ウ)  ITU-D
 ITU-Dは、開発途上国に対する電気通信開発の促進のための技術協力等を担当しており、最高意思決定機関であるWTDCを全権委員会議から全権委員会議の間において開催することとなっている。
 WTDCの決議2に基づき、電気通信開発戦略・政策を扱う開発研究委員会1、技術問題を扱う開発研究委員会2が設置され、1995年春から活動が開始されている。

 

 

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