平成8年版 通信白書

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第3章 情報通信が牽引する社会の変革―「世界情報通信革命」の幕開け―

3 技術創造立国に向けた情報通信技術の開花

 (1) 情報通信技術の研究開発をめぐる最近の動向

ア 研究開発リソースに見る動向

 研究開発活動の状況を把握する上で、研究費、研究人材(研究者数)を研究開発の2大リソースとしてとらえ、情報通信分野に関するこれらの推移を概観する。
 研究費について見ると、情報通信分野の中核を占める通信・電子・電気計測器工業は、3年度に2兆 3,728億円に達した後、4年度、5年度は連続して減少したが、6年度は対前年度比0.4 %増の2兆 576億円とやや回復の兆しが見られる。また、昭和60年度を 100として、全産業と比べると、いずれも3年度をピークに2年続けて減少しているが、減少度合いは通信・電子・電気計測器工業の方が大きかった。しかし、6年度になると、通信・電子・電気計測器工業はわずかながら増加に転じている。
 一方、研究者数について見ると、通信・電子・電気計測器工業は、昭和61年(4月1日現在)は6万2千人であったが、その後堅調に増加を続け、7年(4月1日現在)は10万4千人まで増えている。また、昭和61年(4月1日現在)を 100として、全産業と比べると、通信・電子・電気計測器工業は、全産業より順調な伸びを示し、7年(4月1日現在)は全産業が 149.6に対して、通信・電子・電気計測器工業は 167.3となっている(第3-2-26図参照)。

イ 学会での論文発表件数に見る動向

 情報通信技術に関連する代表的な研究課題ごとの研究の推移を分析するため、国内の情報通信分野での学会研究活動の主流の一つとなっている電子情報通信学会の動向を見てみる。6年3月から7年9月の電子情報通信学会全国大会の発表件数を研究課題ごとに見ると、発表件数が多く、増加傾向にあるのは、無線システム、光通信システム、光エレクトロニクス/レーザ・量子エレクトロニクスの3分野であり、何十年と伝統的に脈々と続いてきたこれらの分野の研究開発活動が、我が国の情報通信分野における研究開発活動を依然としてリードしている。
 また、この2年間に新たに加わったのは、ヒューマンコミュニケーション、マルチメディア・仮想環境基礎、有機エレクトロニクスの3分野である。特にヒューマンコミュニケーション、マルチメディア・仮想環境基礎の2分野は、4つのソサイアティ(基礎・境界ソサイアティ、通信ソサイアティ、エレクトロニクスソサイアティ、情報・システムソサイアティ)と同格に位置付けられたヒューマン・コミュニケーション・グループに属し、我が国の情報通信分野における新たな研究開発活動の核を形成し始めている。
 さらに、発表件数をソサイアティごとに見ると、電子情報通信学会の特性として、基礎・境界の分野、情報・システムの分野の研究が低調であり、発表件数も減少しているが、一方でエレクトロニクスの分野の研究が活発化している(第3-2-27図参照)。これは、基礎分野等が弱いと言われる我が国の研究開発の特性と同じ傾向を示している。


第3-2-26図 情報通信分野の研究費、研究者数の推移

第3-2-27図 電子情報通信学会の論文発表のシェアの推移

 

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