平成8年版 通信白書

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第3章 情報通信が牽引する社会の変革―「世界情報通信革命」の幕開け―

1 情報通信の高度化による国民生活の変化

 (1)  ライフスタイルにおける変化

ア 家庭における情報通信の利用動向

 家庭における情報通信の利用動向について、郵政省の「通信利用動向調査(世帯調査)」及び経済企画庁の「家計消費の動向」に基づき見てみると次のとおりである。
 (ア)  情報通信機器の普及状況等
 家庭における新しい情報通信の利用状況を見るため、最近利用が伸びている情報通信機器の普及状況及び情報通信サービスの利用状況を、2年から7年までの期間について見てみる。
 情報通信機器の普及状況として世帯当たり情報通信機器の保有率について見ると、各機器とも増加傾向であり、7年においては、ファクシミリが16.1%(対前年同期比 2.4ポイント増)、無線呼出しは15.0%(同 3.1ポイント増)、パソコンは15.6%(同 2.0ポイント増)及び携帯電話は10.6%(同 4.8ポイント増)となっている。特に携帯電話は、近年、保有率が大幅に増加している(第3-3-1図参照)。また、パソコンの保有率の着実な増加に比べ、パソコン通信の利用率については過去数年間において横ばいである(第3-3-2図参照)。しかし、家庭における今後の利用意向の伸びや、近年の主要な商用パソコンネット会員数の急激な伸び等から、今後、家庭における利用率も増加すると思われる(第3-3-3図〜第3-3-4図参照)。
 また、世帯における情報通信機器等の個人利用が進展している。特に個人専用による利用率が高いものは、無線呼出し(90.3%)、携帯電話(73.6%)、カー・ナビゲーション・システム(73.6%)といった移動通信機器が多くなっている(第3-3-5図参照)。
 (イ)  利用時間
 情報通信メディアの利用動向を見るため、他のメディアを含めて、各メディアの一日当たり国民全体の平均利用時間を、昭和45年から7年までの期間について5年間隔で見てみる。
 テレビ、ラジオ、本・雑誌・マンガ、レコード・CD・テープ及びビデオの利用時間の和を、メディアの総利用時間として見てみると、昭和60年に減少している以外は、その前後ではいずれも増加傾向である。特に7年の総利用時間は 302分となり、昭和45年以降では最も長くなっている(第3-3-6図参照)。
 各メディアの一日当たり平均利用時間が増加しているのは、食事や仕事等、その他の行動と同時にメディアに接触している場合の「ながら」利用の増加が要因の一つであると思われる。また、起床在宅時間は減少しているにもかかわらず、自由時間が増加していることから、携帯型端末の普及等により、外出先においても活発に情報収集が行われていることも要因となっていると推測される(第3-3-7図参照)。
 メディアごとの利用動向を見てみると、利用時間としては常にテレビの利用時間が圧倒的に長くなっているが、近年、ビデオ、レコード・CD・テープの利用が伸びてきている。後者のメディアの特徴は、利用者が個人の好みに合ったソフトを選ぶことができるところにあり、人々の情報に対するニーズの多様化を示している。テレビの利用時間についても、昭和60年にいったん減少した後、再度増加傾向に転じている。これは、昭和62年、衛星放送による独自番組の放映が開始されたことや多チャンネル放送を行う都市型ケーブルテレビの登場等により、テレビが人々の情報に対するニーズの多様化を満たすメディアとして再び支持を得たことを反映したものとも推測される。

イ 情報通信の高度化による新しいライフスタイル

 (ア)  新しいライフスタイルの進展状況
 (テレワークによる新しいライフスタイル)
 最近では、電子メールやパソコン通信等の情報通信を利用し、事務所に通勤するかわりにサテライトオフィスでの勤務や在宅勤務等が可能となる「テレワーク」という勤務形態を導入する例が見られるようになってきている。
 テレワークにより、個人の都合に合わせた働き方が可能となり、個人のプライベートな生活において時間的な余裕が生まれるばかりでなく、移動が困難であったり、長時間の拘束に対応できないために就労が阻害されていた、主婦や高齢者等の社会参加が実現し、新しいライフスタイルが進展しつつある。
 テレワークの先進国たる米国のある実証研究等の成果によれば、テレワークの普及は、社会全般に対して様々な波及効果を及ぼすことが想定されると結論付けている。例えば、テレワークの普及により、労働者に対しては、主体的に時間管理を行うことができる度合いの増大、通勤に伴うストレスからの解放等、企業に対しては、生産性・従業員の労働意欲の向上、経営コストの削減等、社会全般に対しては、交通問題の解消、エネルギー・環境問題への貢献等の効果があるとしている。
 (テレワークの現状等)
 (社)日本サテライトオフィス協会の「日本のテレワーク人口調査研究報告書」(8年2月)によると、我が国で何らかの形でテレワークを実施している人口は、約95万人と推定されている。さらに、郵政省郵政研究所が7年度に実施した調査研究によれば、テレワーク人口は、普及シナリオにもよるが、12年には全労働者の4%にあたる 300万人弱が、22年には最大で全労働者の20%にあたる 1,300万人となるものと予測されている。
 また、「日本のテレワーク人口調査研究報告書」(8年2月)で、現在、何らかの形でテレワークを行っている人のうち、在宅勤務及び業務先への直行直帰の勤務形態をとっている人による、情報通信の利用状況を見てみる。自宅で利用している情報通信機器類については、パソコン、ワープロ及びファクシミリが多い。会社に対する報告の際に利用される情報通信機器等については、やはり電話は多くなっているが、ファクシミリ、電子メールもかなりの割合で利用されていることが分かる(第3-3-8図参照)。
 (非常災害時のテレワーク)
 テレワークにより、災害時の通勤困難あるいは不可能な状況下においても仕事をすることが可能となる。そのため、テレワークは、非常災害時の国民生活への影響を最低限に抑制するための企業の機能分散、危機管理等のための手法の一つとしても、積極的な導入が期待されている。
 郵政省郵政研究所の実施した調査研究「阪神大震災と通勤及び仕事環境の変化」(8年1月)(注60)によれば、神戸市内に事業所を持つ企業の従業員の片道通勤時間を調査したところ、震災前には60分以内とした人は77.0%いたが、震災後、輸送機関の完全回復までの期間においては、90分以上とした人が59.3%にのぼった。比較的職場と自宅が近接していると言える神戸市においても、災害時においては長時間通勤を強いられたことが分かる。
 このことから、同調査研究では、多数の遠距離通勤者を抱える首都圏に大地震が発生すると、大量の通勤者が都心に取り残されたり、出社が不可能となることが想定されるため、テレワークの導入により、日常的にオフィスの機能の分散を図っていく必要があるとしている。
 (イ)  導入事例
 福島県のあるテレワークセンターでは、CD-ROMの制作、インターネットに関するコンサルティング業務、テレマーケティング等を主な業務としている。打合せや成果の報告等、社員が会社との連絡を取る際、電子メールが効率的に利用されている。この電子メールの利用により、在宅勤務を実現している。
 同テレワークセンターでは、現在、15人の社員が在宅勤務制度を利用している。ほとんどが主婦であるほか、障害者も含まれており、通勤が困難なためにこれまで就労の機会を逸していた層が、社会参加を果たした例となっている。


第3-3-1図 世帯における主な情報通信機器類の保有率の推移

第3-3-2図 世帯におけるパソコン通信利用率の推移

第3-3-3図 世帯におけるパソコン通信の利用意向の推移

第3-3-4図 主要な商用パソコンネット4社の会員数の推移

第3-3-5図 世帯における情報通信機器の個人利用の進展

第3-3-6図 メディアの1日当たり平均利用時間の推移(国民全体)

第3-3-7図 起床在宅時間及び自由時間の関係(国民全体)

第3-3-8図 テレワークにおいて利用されている情報通信機器

 

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