平成9年版 通信白書

第1章 平成8年情報通信の現況

（1）　リーディング産業として成長する情報通信産業

　ここでは、情報通信産業の国内生産額、粗付加価値及び労働生産性を推計し、これらの推移を定量的に分析、検証することで、リーディング産業として発展する情報通信産業の現状を明らかにする（注8）。
ア　情報通信産業の国内生産額、粗付加価値の動向
　情報通信産業の実質国内生産額の推移を見ると、昭和60年が52.8兆円、2年が80.6兆円及び7年が92.6兆円である。年平均成長率は、昭和60年から2年にかけては8.8％、2年から7年にかけてが2.8％であり、我が国産業全体の実質国内生産額のそれぞれ同期間の年平均成長率4.6％、0.7％と比較すると、より高い水準で推移している。また、情報通信産業の実質国内生産額が我が国産業全体の実質国内生産額に占める比率は、昭和60年に7.7％、2年が9.3％であったが、7年には10.3％と初めて10％を超え、その拡大が続いている。
　2年から7年にかけての年平均成長率を各産業別に見ると、情報通信産業内においては、移動体通信（19.7％増）、国際電気通信（7.9％増）等が高い伸びを示している。また、「情報通信サービス計」の成長率が、「情報通信支援財計」の成長率を上回っており、情報通信産業内においても、サービス部門の優位性が進展していることが分かる。一方、主要製造業においては、鉄鋼（4.1％減）、化学製品（1.1％減）、輸送機械（0.8％減）等の成長率がマイナスに転じている（第1-4-2表及び第1-4-3図参照）。
　一方、情報通信産業の名目粗付加価値（名目ＧＤＰに相当）の推移を見ると、昭和60年が26.6兆円、2年が38.4兆円及び7年が42.7兆円である。年平均成長率は、昭和60年から2年にかけてが7.6％、2年から7年にかけてが2.1％であった。我が国産業全体の名目粗付加価値額の同期間の年平均成長率は昭和60年から2年にかけてが6.2％、2年から7年にかけてが2.4％となっている。
　情報通信産業内では、移動体通信（2年から7年にかけての成長率15.1％増）、国際電気通信（同6.3％増）における伸びが顕著である反面、情報通信支援財計（同0.3％増）の伸びが低く、ここでもサービス部門の優位性がうかがえる。また、主要製造業においては、鉄鋼（同3.4％減）の成長率がマイナスとなり、輸送機械（同0.2％増）等の成長率が低くなっている（第1-4-2表及び第1-4-4図参照）。
イ　情報通信産業の労働生産性の動向
　情報通信産業の労働生産性（注9）の推移を見ると、昭和60年が雇用者1人当たり1,600万円、2年が2,053万円及び7年が2,348万円であり、我が国産業全体のそれぞれ同期の労働生産性1,491万円、1,675万円、1,610万円と比較すると高い水準で推移している。また、2年から7年にかけては我が国産業全体の年平均成長率が0.8％減とマイナスになったのに対し、情報通信産業では同期間に2.7％の上昇を記録しており、情報通信産業においては事業の効率化が順調に進んでいることがうかがえる。
　個別産業においては、国際電気通信（2年から7年にかけての年平均成長率10.3％増）、国内電気通信（同8.6％増）の伸びが顕著である。また、移動体通信（同0.4％減）の成長率がマイナスとなっているが、これは、2年から7年にかけて雇用者が大幅に増加したことによるものである。主要製造業においても、鉄鋼（同1.5％減）、化学製品（同0.8％減）の成長率がマイナスとなっている（第1-4-2表及び第1-4-5図参照）。
ウ　通信産業の設備投資額の推移
　各産業における各年度の設備投資額の推移を見ると、電力、通信産業（電気通信事業及び放送事業の合計）（注10）以外の主要産業においては、3年度をピークに設備投資額が大きく落ち込んだのに対し、通信産業はほぼ一貫して増加を続け、7年度には3.9兆円となった。この間に通信産業における設備投資規模は、5年度に輸送機械製造業における投資額を、また7年度には電気機械製造業における投資額をそれぞれ超えて、電力に次ぐ設備投資規模を持つ産業に成長した（第1-4-6図参照）。
　また、各産業における設備投資額の年平均成長率においても、通信産業は対前年度比24.6％増と、他産業と比較して高い伸びを示している（第1-4-7図参照）。

第1-4-2表　情報通信産業の現状

第1-4-3図　情報通信産業の実質国内生産額の推移

第1-4-4図　情報通信産業の名目粗付加価値の推移

第1-4-5図　情報通信産業の労働生産性の推移

第1-4-6図　各産業における設備投資額の推移

第1-4-7図　各産業の設備投資規模の年平均成長率