平成9年版 通信白書

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第1章 平成8年情報通信の現況

(2) 個人の情報化

 国民生活における情報化は、新しい情報通信機器及びサービスの出現に伴い、その普及形態は家庭を単位としたものから個人を単位としたものへと変化しつつある。
 郵政省の委託調査による「情報通信とライフスタイルに関するアンケート」(8年12月)(注18)により、パソコン通信利用者の個人生活における情報化の進展状況を概観すると以下のとおりである。
ア 生活様式の変化の状況
(ア) これまでの変化の状況
 情報通信サービスの利用による日常生活の変化の内容については、「趣味、娯楽、教養、社会活動が活発になった」、「人との連絡がスムーズにとれるようになった」、「友人・知人との交流が増加した」といったような、個人の私的生活を豊かにすることにつながる分野が上位を占めている。一方、「在宅勤務等、職場以外での勤務が実現」は9.5%となっており、個人の生活時間において大きな比重を占めている勤務時間の在り方においても変化が進展しつつあることが分かる(第1-4-43図参照)。
(イ) 今後の変化への期待
 今後利用してみたい新しい情報通信サービスについて、全体では、「図書館、博物館等のデータベースへのアクセス」、「在宅勤務等、職場以外での勤務」、「ホームショッピング」、「通信教育・遠隔授業の受講」、「自治体のオンライン住民サービス」等が上位となっている。情報通信を利用したサービスの導入分野の拡大への期待は、娯楽の分野よりも個人生活における習慣を改善させる分野において高くなっていることが分かる。
 これを職業別に見ると、「図書館、博物館等のデータベースへのアクセス」、「自治体のオンライン住民サービス」、「通信講座・遠隔授業の受講」で専門職・教職員が、「在宅勤務等、職場以外での勤務」で会社員・公務員が、「ホームバンキング」では会社役員・自営業がそれぞれ1位となっている。それぞれの職種ごとに上位に挙げられたサービスについては、それぞれの業務に関係深いものとなっていると思われる(第1-4-44図参照)。
(ウ) 在宅勤務実現者等の情報通信の利用状況
 情報通信の先進的な活用実態の分析として、個人生活のこれまでの変化の状況において、「在宅勤務等、職場以外での勤務が実現」した層(以下、「在宅勤務者」という。)について、業務におけるインターネットの利用状況を見る(第1-4-45図参照)。
 まず、インターネットを業務に利用している在宅勤務者について、職業別に見ると、会社員に次いで自営業、主婦等が含まれている「その他」が多くなっていることが分かる。次に、インターネットの利用時間を見ると、インターネットを業務で利用している回答者全体(以下、「回答者全体」という。)では、8時〜19時が最も多く、時間帯が進むにつれて比率が低くなっているのに対し、在宅勤務者においては、三つの時間帯にほぼ平均して分散している。また、インターネットを業務で利用する際の使用目的では、回答者全体に比べ、在宅勤務者においては、連絡・打合せ等、成果物の提出について比率が高くなっている。
イ 私的時間におけるインターネットの利用に見る生活の変化
(ア) 趣味・娯楽としての利用
 主な利用目的ごとに、私的時間におけるインターネット利用者の平均月額総利用額を見ると、「不特定多数に向けた情報発信」が最も高くなっており、「ゲーム等の娯楽」、「アダルト情報の閲覧」、「ホームショッピング」等が続いている(第1-4-46図参照)。
 私的時間におけるインターネットの主な利用目的としてこれらの娯楽性の高い利用目的を挙げた回答者については、現時点では利用者数自体は少ないものの、インターネット利用料金への支出は比較的高くなっていることが分かる。このことから、これらの利用目的については、利用者の拡大に伴い市場が拡大する可能性が考えられる。
(イ) その他の生活時間への影響
 インターネットの利用により、費やす時間が減少したその他の生活時間帯について見ると、「テレビを見る時間」、「睡眠時間」、「読書時間」、「電話をする時間」等が上位に挙げられている(第1-4-47図参照)。
 インターネットの利用の増加に対するテレビ視聴や読書等の利用の減少は、情報ソフトを一方的に受け取るだけの受動的な情報の利用から、利用者の意志により積極的な情報の受発信を行う能動的な情報の利用へと、情報利用行動が積極的なものへと変化している様をうかがわせるものである。
 また、従来、個人が主に外部からの情報を受け取る際の窓口となっていたテレビ、書籍といったメディアの利用が大きく減少するとともに、電話、外出・移動時間、家族の団らんといった他者との直接的な交流も減少しており、今後、個人生活における外部との接触手段については、インターネット等の情報通信を介したものへと比重が高まることが考えられる。
(ウ) 自宅以外での私的時間におけるインターネットの利用
 私的時間におけるインターネットの利用に当たり、利用場所を自宅以外としている層について利用時間帯を見ると、8時から19時の間の利用が62.6%と最も高くなっている(第1-4-48図参照)。
 これは、昼間の時間を業務により拘束されている利用者が、休憩時間等にインターネットを利用することにより、自宅に戻らなくても私的空間を持つことができる可能性をうかがわせるものである。このような自宅以外での私的時間におけるインターネットの利用の状況は、情報通信の利用による個人生活における時間的・空間的制約からの解放の実例となっている。
ウ インターネットの利用動向
 私的時間におけるインターネットの今後の需要予測について、インターネット利用者では69.8%、利用意向のある未利用者では65.6%が「着実に増える」としているのに対し、利用意向のない未利用者では、「専門的な研究や趣味としてある程度利用されるが伸びは横ばい」及び「一時的なブームとして下火になる」というように、需要は伸びないとする回答が75.1%を占めている。このように、インターネット利用者及び利用意向のある未利用者と利用意向のない未利用者では、意識の差が大きくなっていることが分かる(第1-4-49図参照)。
 インターネットの需要が伸びないとする回答者について、その主な理由を見ると、「思ったほど有益な情報がない」が最も多くなっている。また、「ランニングコストが高い」、「操作性が悪い」、「初期投資が高い」等の、コスト意識に根差した項目が多く挙げられている(第1-4-50図参照)。
エ 携帯電話・PHSの利用に見る情報通信のパーソナル化の状況
(ア) データ通信利用のニーズの存在
 携帯電話・PHSの利用形態を見ると、「通話」(92.8%)が圧倒的多数を占めている一方、通話との併用を含む「データの送受信」(6.8%)による利用も出てきていることが分かる。このデータ通信利用者層について、携帯電話・PHSの利用状況の詳細を見る(第1-4-51図参照)。
 職業別に見ると、会社員・公務員が最も多くなっているが、これに次いで自営業者も多くなっている。また、発信利用頻度については、「1日10回以上」及び「1日数回以上」の利用において、いずれの項目においても携帯電話・PHS利用者全体の状況に比べ高くなっている。さらに、月額利用額について携帯電話・PHS利用者全体と比較してみると、データ通信利用者では7,726円、利用者全体では6,171円となっており、データ通信利用者が大口利用者となっていることが分かる。
(イ) 自宅利用のニーズ
 携帯電話・PHSを自宅においても利用する層(以下、「自宅利用者」という。)は、「受発信ともPHSや携帯電話を利用する」(6.4%)及び「発信にPHSや携帯電話を利用することもある」(26.1%)を合わせて携帯電話・PHS利用者全体の32.5%にのぼっている。この自宅利用者は、20才以上29才以下がその約半数を占めており、また単身者に多く見られる。
 携帯電話・PHSに感じるメリットでは、自宅利用者においては、「かけたい時に連絡が取れる」、「誰からの電話なのか区別できる」、「他人に聞かれたくない話ができる」といった、在宅時に有効なメリットについても携帯電話・PHS利用者全体に比べ評価が高くなっていることが分かる(第1-4-52図参照)。
(ウ) 利用上の問題点に対する意識
 携帯電話・PHSの普及の拡大に伴い、利用者の利用マナーの欠如、自動車の運転等のその他の行為をしながら利用する「ながら利用」に対する危険性等、様々な問題点の存在が指摘されている。
 ここでは、携帯電話・PHSの利用上の問題点について、利用者に対してはそのような問題点の指摘に対してどのように認識しているのか、また、未利用者に対しては、利用者に対しどのような問題点を感じているのか、それぞれの立場における意識について見る(第1-4-53表参照)。
 利用者においては、「自分は気をつけて使っているので大丈夫」が圧倒的に多く、次いで「他人が使っているのは気になる」、「迷惑をかけていると思うが使わざるを得ない」となっている。これを性別で見ると、「自分は気をつけて使っているので大丈夫」、「他人が使っているのは気になる」等において男性が女性を上回っているのに対し、「問題点はあるが便利さは捨てがたい」、「迷惑をかけているとは思うが使わざるを得ない」等において、女性が男性を上回っている。このことから、男性においては携帯電話・PHSの利用を正当化する傾向があり、女性においては、利用に当たりまず周囲に配慮する傾向があることがうかがわれる。
 未利用者においては、「自動車の運転中の利用は事故につながり危険」、「通話に夢中で周囲の人の存在を無視している」、「通話している人の声がうるさい」の順に多くなっている。これを性別で見ると、「通話している人の声がうるさい」、「公共の空間に私的空間を持ち込むのはわがまま」等において男性が女性を上回っている一方、「自動車の運転中の利用は事故につながり危険」、「精密機器の誤作動を招くおそれがあり危険」等において、女性が男性を大きく上回っている。このことは、男性の未利用者においては利用マナーを重視する傾向があり、女性の未利用者においては機能的な問題を重視する傾向があることをうかがわせる。
オ 情報通信機器の個人専用化
 私的時間におけるインターネット利用時の利用端末及び携帯電話・PHSについて、「自分専用」で利用している、端末の個人専用利用率を見ると、それぞれ87.4%、90.6%となっており、いずれも個人専用利用率が高くなっている。
 一方、これらの端末の個人専用利用の状況を年収との関係で見ると、インターネットの利用端末においては、年収400万円以上の階層ではいずれも専用利用率の平均を超えている。また、携帯電話・PHSにおいては、高年収階層においても専用利用率の平均を下回っている場合もあることが分かる(第1-4-54図参照)。
 このことから、インターネットについては、年収400万円以上の年収層においては、個人専用利用化が一様に進み、また、携帯電話・PHSにおいては、年収の多寡に関わりなく個人の必要度に応じて個人専用利用化が進んでいるというように、新しい情報通信端末の個人専用利用率と年収との間には、相関関係はあまり強く働かないと考えられる。

第1-4-42図 住宅情報化配線実施図
第1-4-42図 住宅情報化配線実施図

第1-4-43図 情報通信メディアを利用することによる生活の変化
第1-4-43図 情報通信メディアを利用することによる生活の変化

第1-4-44図 今後利用したい新しい情報通信サービス
第1-4-44図 今後利用したい新しい情報通信サービス

第1-4-45図 インターネットを利用した在宅勤務の状況
第1-4-45図 インターネットを利用した在宅勤務の状況

第1-4-46図 私的時間におけるインターネットの利用目的と利用額
第1-4-46図 私的時間におけるインターネットの利用目的と利用額(1)
第1-4-46図 私的時間におけるインターネットの利用目的と利用額(2)

第1-4-47図 私的時間におけるインターネットの利用により減少した生活時間
第1-4-47図 私的時間におけるインターネットの利用により減少した生活時間

第1-4-48図 自宅以外での私的時間におけるインターネットの利用率
第1-4-48図 自宅以外での私的時間におけるインターネットの利用率

第1-4-49図 私的時間におけるインターネットの今後の需要予測
第1-4-49図 私的時間におけるインターネットの今後の需要予測

第1-4-50図 インターネットの利用は伸びないとする理由
第1-4-50図 インターネットの利用は伸びないとする理由

第1-4-51図 携帯電話・PHSのデータ通信利用の状況
第1-4-51図 携帯電話・PHSのデータ通信利用の状況

第1-4-52図 携帯電話・PHSの自宅における利用状況
第1-4-52図 携帯電話・PHSの自宅における利用状況

第1-4-53表 携帯電話・PHSの利用上の問題点に対する意識
第1-4-53表 携帯電話・PHSの利用上の問題点に対する意識

第1-4-54図 端末の個人専用利用率
第1-4-54図 端末の個人専用利用率

 

 

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