（2）　情報化の進展：平成9年版通信白書

　過去10年間の地域情報化の進展を利用環境指標を用いて以下のような様々な視点から分析すると、情報格差が地域により拡大している様子がうかがえる。
ア　過去10年間の時系列分析
　利用環境指標の平均点の推移を見れば、過去10年間、着実に情報化が進展しているのが分かる。
　しかし、過去10年間全く情報化が進展していない地域もある一方で、情報化が急速に進展している地域もあり、両者の差は拡大している（第1-4-64図及び第1-4-65図参照）。
イ　人口規模別分析
　利用環境指標を人口規模別に示したものが第1-4-66図であり、これを見ると5年度以降、10万人以上の都市においては、情報化が急激に進展している。5年度は、携帯・自動車電話事業者によるサービス提供が全国各地に拡大し、インターネットの普及も本格的に始まった年である。サービス普及の黎明期にあっては、事業者にとって、収益が確保できる都市部中心に整備が行われている様子が分かる（第1-4-67図参照）。
ウ　都道府県別の情報化の進展状況
　地域情報化の進展状況を都道府県別に見ると、情報化の進展度に差異が生じている。例えば、北海道、宮城県、兵庫県及び福岡県のように、政令指定都市があるところほど同一都道府県内における差異が大きい（第1-4-68表参照）。
　また、19の府県においては県庁所在地よりも情報化が進展している市があり、必ずしも、各都道府県の県庁所在地において情報化が一番進展しているわけではないことが分かる（第1-4-69図参照）。
エ　過疎地域の状況
　過疎地域（注23）と過疎地域以外の市町村の地域情報化指標の分布について比較すると、過疎地域の市町村は、過疎地域以外の市町村に比較し、指標値がより低い位置に分布している（第1-4-70図参照）。また、過疎地域と過疎地域以外の市町村の過去10年間の情報化の推移を指標のポイントで見た場合、年々その差が広がっている（第1-4-71図参照）。
　このように、過疎地域の市町村においては、情報化は着実に進展しているものの、過疎地域以外の市町村に比べて情報化が遅れ、その結果、徐々に過疎地域以外の市町村との格差は拡大する傾向にある。
オ　地域情報化と各種指標との相関分析
　情報化の進展と市町村の有する特性（財政力、人口、産業別就業人口比率、高齢者比率）との相関について分析を行う。
(ア)　財政力指数
　財政力指数（注24）と地域情報化指標の関係を示したものが第1-4-72図である。
　地域情報化指標は、財政力指数との間に正の相関が見られ、財政が豊かな地域ほど地域情報化が進んでいる傾向が現れている。
(イ)　人口
　人口（注25）と地域情報化指標の関係を示したものが第1-4-73図である。
　情報化の進展は、人口規模との間に正の相関が見られ、人口が多い市町村ほど情報化が進んでいる傾向が現れている（第1-4-65図参照）。
(ウ)　産業別就業人口比率
　産業別就業人口比率（注26）と地域情報化指標の関係を示したものが第1-4-74図である。
　地域情報化指標は、各市町村ごとの第一次産業就業人口比率との間に負の相関が見られ、第三次産業就業人口比率との間には正の相関が見られる。また、第二次産業就業人口比率との相関は見られなかった。この結果、第三次産業就業人口比率が高い地域ほど情報化が進んでいる傾向が現れている。
　我が国の経済がソフト化し、第三次産業へのシフトが進展している今日、情報通信は各市町村の産業基盤として重要な役割を果たしていることが分かる。
(エ)　高齢者比率
　高齢者比率（65歳以上の人口比率）（注27）と地域情報化指標の関係を示したものが第1-4-75図である。
　地域情報化指標は、高齢者比率との間に負の相関が見られ、高齢者比率が高い市町村ほど情報化が遅れている傾向が現れている。

第1-4-64図　利用環境指標の推移
第1-4-64図利用環境指標の推移（1）