平成9年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

第2章 情報通信政策の動向

(2)電子決済・電子マネーの利用とその環境整備

 郵政省は、7年11月から、「電子決済、電子現金とその利用環境整備に関する調査研究会」を開催し、電子決済やプライバシー保護に対して必要不可欠な暗号鍵に関する暗号政策並びに電子マネーの現状と課題及び将来の方向性について検討を行ってきたが、8年4月、報告が取りまとめられた。その概要は、次のとおりである。
ア 暗号技術の活用
 暗号技術の機能には、「守秘」(通信メッセージを秘匿すること)及び「認証」(通信相手及び通信メッセージの真正性を確認すること)があるが、従来は、守秘機能が主として活用されてきた。今後は、ネットワーク化の進展に伴い、認証機能を活用して、電子商取引、電子マネー等の新しいネットワーク・サービスを定着させていくことが必要である。
イ 電子マネーの制度上の課題
 利便性・経済性・安全性等の消費者・販売者のニーズを満たす電子マネーの普及を図ることによって、1)小規模事業者のビジネスチャンスの拡大、2)ソフトウェア商品の需要の拡大、3)コンテント・ビジネスの確立等の効果が期待され、その利用環境の整備が必要とされている。
 電子マネーの制度上の課題として、法制上の位置付け、コスト負担、事故・不正使用が発生した場合の責任・損失の負担、電子マネーの国際流通について検討することが必要である。
 また、消費者保護のため、現行の契約法令を電子商取引に合わせて見直すことを検討する必要があるほか、電子データの内容等の証明に関する制度の整備及び電子商取引における個人情報・プライバシー保護の制度を検討することが必要である。
ウ 認証機関の在り方
 認証機関は、取引の相手が他の認証機関に公開鍵を登録していても取引を行うことができるよう、認証基準や運用方法を統一し、他の認証機関との相互接続性・相互運用性を確保することが望ましいと考えられる。
 利用者と認証機関の間で、帰責事由や責任者の特定できない事故・不正が発生した場合の損失負担の在り方については、法制の整備も含めて検討する必要がある。
 キー・エスクロー・システム(暗号鍵寄託制度)(注9)については、憲法上保障されている「通信の秘密の確保」及び「検閲の禁止」の趣旨を踏まえながら、国際的連携を図りつつ、その制度の是非について検討し、一定の水準以上の認証サービスの提供を受けることができるよう、認証機関の設立・運用に関する国際的な基準を作ることが必要である。

 

第2章第3節2(1)サイバービジネスの実現に向けた次世代電子商取引実験 に戻る (3)ネットワークを通じた認証業務の在り方 に進む