平成9年版 通信白書

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第2章 情報通信政策の動向

第5節 情報通信のグローバル化に対応した国際政策の推進

 1 WTO基本電気通信交渉と電気通信分野の世界的自由化

 21世紀に向けた新たな世界貿易体制の確立のため、7年1月に世界貿易機関(WTO)が発足した。
 WTOは、ウルグァイ・ラウンド交渉の妥結を受けて世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(WTO協定)に基づいて設立された国際機関であり、従来のGATTの下での機能・権限をより強化したものである。
 WTO協定に附属書一Bとして含まれている協定の一つである「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)」は、サービスの貿易を国際的に規律する初の協定であり、通信分野については特に、公衆電気通信へのアクセス及び利用に関する規則を規定する電気通信に関する附属書が作成されている。
 音声電話サービス等の「基本電気通信分野」については、基本的かつ重要なインフラであり、ウルグァイ・ラウンド交渉期限内に自由化約束を行うことが困難であるという認識を各国が有していた。このため、基本電気通信分野における自由化に向けた交渉である「基本電気通信交渉」は、ウルグァイ・ラウンド交渉終了後も、8年4月末を期限に自由化に向けた交渉を継続し結論を得ることとされ、6年5月から交渉が開始された。
 しかしながら、交渉終結期限とされていた8年4月末、米国から、1)国際通信分野においては、相手国の市場開放度に応じて参入を認める相互主義的事前審査を必要とする、2)衛星通信市場においては、各国市場への参入の確保の見地から、各国の現状の自由化約束は不十分であり見直しを必要とする、といった主張がなされた結果、交渉期限がさらに9年2月まで延長された。
 本交渉は8年7月から再開され、ほぼ毎月1回、ジュネーヴにおいて交渉が行われるとともに、8年9月、米国のシアトルにおいて開催された四極閣僚会合、8年12月、シンガポールにおいて開催された第1回WTO閣僚会合等においても、交渉の成功に向けた各国の決意が確認された。
 このような議論を経て、9年2月、スイスのジュネーヴにおいて基本電気通信交渉ハイレベル最終交渉が開催され、多数の国から自由化約束の提出・改善が行われた。この結果、最終的にWTO加盟130か国中69か国が自由化約束を提出し(第2-5-1表及び第2-5-2表参照)、交渉期限内に合意が成立した。
 本交渉における合意の結果、各国においては基本電気通信分野の自由化及び競争を通じ、料金の低廉化、サービスの多様化等が図られ、サービス利用者に対し利便性の向上がもたらされるとともに、電気通信市場の一層の活性化が図られることが期待されている。
 我が国は、8年4月時点において、第一種電気通信事業者(NTT、KDDを除く。)について、無線局も含め一切の直接・間接の外資規制の撤廃を提案するなど、交渉の成功に向け積極的に貢献してきた。今回の交渉の成果を踏まえ、我が国としては今後とも電気通信の世界的な発展に向け一層の貢献を果たしていくこととしている。

第2-5-1表 WTO基本電気通信交渉自由化約束提出国
第2-5-1表 WTO基本電気通信交渉自由化約束提出国(9年2月15日現在)

第2-5-2表 主要国の自由化約束の概要
第2-5-2表 主要国の自由化約束の概要(9年2月15日現在)

 

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