平成9年版 通信白書

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第3章 放送革命の幕開け

(2)放送番組制作事業者の現状

ア 主要業務
 放送番組制作事業者の主な業務として、テレビ番組、テレビCM、ビデオソフト等の企画・制作がある。調査によると、「テレビ番組の企画・制作」を主要業務としている会社が最も多く(81.0%)、次いで「ビデオソフトの企画・制作」(70.2%)、「テレビCMの企画・制作」(61.2%)となっている。また、最も売上げの大きい業務が、「テレビ番組の企画・制作」である会社は、57.8%で、「テレビCMの企画・制作」を入れると、67.5%となり、テレビ放送に大きく依存していることが分かる(第3-3-1図参照)。
イ 経営規模
 資本規模、初期投資額、売上高、従業員数について、調査結果により、放送番組制作事業者の経営動向を分析する。
(ア) 資本規模
 資本金について見ると、3,000万円未満の会社が75%程度、8割以上の会社が5,000万円未満の中小規模である(第3-3-2図参照)。
 また、出資者について見ると、放送局関係(84%)が最も多く、次いで映画・ビデオ制作業(55%)、個人(20%)となっている。
(イ) 初期投資額
 初期投資額について見ると、1社当たりの平均額が6,187万円で、8割以上の会社が5,000万円未満の投資規模である(第3-3-3図参照)。
(ウ) 売上高
 6年度の放送番組制作事業者の総売上高について見ると、1億円以上、5億円未満の会社が半数近くを占めており、1社当たりの年間売上高は、5億円弱となっている。また、7年11月に実施された郵政関連業実態調査報告(以下、本節では「実態調査」という)によると、総売上高のうち、「放送番組制作業務」の売上高は、各社平均で56.3%を占めており、その内訳は、テレビ番組制作が82.4%と大部分を占め、次いで、テレビCM制作が13.1%となっている(第3-3-4図及び第3-3-5図参照)。
(エ) 従業員数
 従業員数について見ると、正社員が1社当たり平均34.3人で、50人未満の会社が全体の8割以上を占めている。その他、出向者が1社当たり平均8.2人、アルバイトが同5.4人である。また、正社員のうち、約半数が企画・制作の業務に携わっている(第3-3-6図参照)。
ウ 財政基盤(資金調達手段)
 放送番組制作事業者の資金調達は、不動産を担保とする融資、放送事業者からの受注契約が固まっている場合の回収日までのつなぎ融資による資金調達が一般的である(第3-3-7図及び第3-3-8図参照)。
 資金の調達先について見ると、内部資金の運用に次いで、銀行又は個人からの借入が多く、親会社や取引先からの資金の流れは少ない(第3-3-9図参照)。
 顧客別の売上高の構成を見ると、地上放送事業者の比率がやはり高く、全体の75%程度を占め、地上放送事業者に依存した経営体質になっている(第3-3-10図参照)。
エ 設備の装備状況
 設備投資額の動向を見ると、5年度から6年度にかけて減少した設備投資額が、7年度の実績額から増加に転換した(第3-3-11図参照)。また、会社別の設備投資状況を見ると、7年度から8年度にかけて、1,000万円未満の投資額の会社が減り、1億円以上の投資額の会社が増える傾向が見受けられる(第3-3-12図参照)。
 設備の導入率の高い機器は、カメラ、VTR、編集機材の順となっている。リース比率は、いずれの機器もそれほど高くなっていない(第3-3-13図参照)。
オ デジタル設備導入状況と今後の見通し
 設備のデジタル化のための投資額は、7年度実績で、1社当たり平均1,680万円(投資額全体の64%)に対して、8年度見込みで、同3,771万円(同97%)と急増している。また、事業者別のデジタル化のための投資状況から見ても、7年度から8年度にかけて、増加する傾向がうかがえる(第3-3-14図参照)。
 デジタル化の現状は、カメラや編集用機材をデジタル化している会社が25%程度にとどまっており、デジタル化設備の全くない会社も30%ある。今後のソフト制作のデジタル化に対応するため、設備投資が「大幅に増加する」又は「増加する」と考えている会社が、全体の70%近くあり、設備のデジタル化が急速に進展すると考えられる。
カ 経営上の課題
 放送番組制作事業者は、実態調査によると、受注量の不安定さをはじめとして、資金調達面、人材面、ソフト制作設備面について、事業運営上の課題が生じている(第3-3-15図参照)。
キ 放送産業の変化に向けた期待
 放送のデジタル化の進展による放送産業の今後の変化について、調査によると、半数以上の放送番組制作事業者が、放送ソフトが不足し、質の低下が起こるという危惧を持ちながら、一方では、放送と通信の融合化が進展し、新しいサービスや事業が誕生するという期待を抱いている(第3-3-16図参照)。
 調査によれば、放送のデジタル化・多チャンネル化による放送番組制作事業の変化予測の設問に対して、7割の会社が、事業環境がそれほど好転するとは思えないと回答している一方、2割を超える会社が、放送番組制作事業者の地位が向上し、事業環境が好転すると考えている(第3-3-17図参照)。
 好転すると思われないと回答した主な理由に、既存放送事業者の影響は相変わらず強く、放送番組制作事業者の地位が向上するとは思われない、多チャンネル化により、ソフト制作の単価が下がるなどが挙げられている(第3-3-18図参照)。
 一方、好転すると回答している主な理由は、良質なソフトの不足により、相対的に放送番組制作者事業者の地位が向上する、という前述の回答とは正反対の考え方があり、さらに、国内で二次利用のマーケットが確立され、放送番組制作事業者の自立的なソフト流通管理・運用が可能となる、という回答が見られるなど、放送ソフトの二次流通市場の形成に対する期待がうかがえる(第3-3-19図参照)。
ク 今後の事業戦略
 今後の放送番組制作事業者の事業戦略として、最も力を入れたい事業内容は、国内地上放送向け番組制作及び販売が44%と多いが、衛星デジタル多チャンネル放送向け番組の制作及び販売がパッケージ商品(ビデオ等)化とともに、約10%ずつと上位に挙がっている(第3-3-20図参照)。

第3-3-1図 主要業務別会社数の比率

第3-3-1図 主要業務別会社数の比率

第3-3-2図 資本金別会社数の比率

第3-3-2図 資本金別会社数の比率

第3-3-3図 初期投資額別会社数の比率

第3-3-3図 初期投資額別会社数の比率

第3-3-4図 売上高別会社数の比率

第3-3-4図 売上高別会社数の比率

第3-3-5図 放送番組制作業務別の売上高比率

第3-3-5図 放送番組制作業務別の売上高比率

第3-3-6図 従業員数別会社数の比率

第3-3-6図 従業員数別会社数の比率

第3-3-7図 資金調達の流れ(例)

第3-3-7図 資金調達の流れ(例)

第3-3-8図 銀行借入時の担保利用状況

第3-3-8図 銀行借入時の担保利用状況

第3-3-9図 主要な資金調達手段

第3-3-9図 主要な資金調達手段

第3-3-10図 顧客別売上げ高の構成比

第3-3-10図 顧客別売上げ高の構成比

第3-3-11図 1社当たりの平均設備投資額

第3-3-11図 1社当たりの平均設備投資額

第3-3-12図 設備投資額の推移

第3-3-12図 設備投資額の推移

第3-3-13図 機種別設備導入状況

第3-3-13図 機種別設備導入状況

第3-3-14図 デジタル設備投資額(7年度実績額/8年度見込額)

第3-3-14図 デジタル設備投資額(7年度実績額/8年度見込額)

第3-3-15図 放送番組制作作業者の経営上の問題点

第3-3-15図 放送番組制作作業者の経営上の問題点

第3-3-16図 放送のデジタル化の進展による放送産業の変化予測

第3-3-16図 放送のデジタル化の進展による放送産業の変化予測

第3-3-17図 放送のデジタル化・多チャンネル化による放送番組制作業の変化予測

第3-3-17図 放送のデジタル化・多チャンネル化による放送番組制作業の変化予測

第3-3-18図 放送のデジタル化・多チャンネル化により放送番組制作業が好転しない理由

第3-3-18図 放送のデジタル化・多チャンネル化により放送番組制作業が好転しない理由

第3-3-19図 放送のデジタル化・多チャンネル化により放送番組制作業が好転する理由

第3-3-19図 放送のデジタル化・多チャンネル化により放送番組制作業が好転する理由

第3-3-20図 今後、最も力を入れたい事業内容

第3-3-20図 今後、最も力を入れたい事業内容

 

 

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