平成10年版 通信白書

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第1章 デジタルネットワーク社会の幕開け〜変わりゆくライフスタイル〜

第2節 生活と通信

  1. 生活の変化と情報通信メディア利用

(1) 生活時間及び家計支出から見る生活の変化
 情報通信の利用により、生活がどのように変化したのかについて生活時間及び家計支出の面から概観する。その際に、まずは日本人の全般的な生活の変化をとらえ、さらに情報通信メディアの利用による変化について検討する。

ア 日本人の生活の変化
(ア) 生活時間の変化
 日本人の生活時間の状況が、昭和61年から8年の10年間で、どのように変化してきたのかを、総務庁の「社会生活基本調査」を基に概観すると、仕事等の義務的な性格の強い活動にかける時間は減少し、各人が自由に使える時間が増大する傾向にある。

第1−2−2図 生活時間の変化(グラフ)
生活時間の変化の表
 同調査により、生活時間の全般的変化をより詳細に見ると、食事等の1次活動は微量ながら増加傾向にあり、週全体では1日10時間25分から10時間35分、比較的伸びの大きい土曜日では10時間22分から10時間43分に増加している。仕事等の2次活動は労働時間の短縮及び週休2日制の普及に伴って、全体的に減少傾向であり、週全体では1日7時間48分から7時間13分、土曜日では7時間32分から6時間1分へと減少している。自由時間である3次活動は増加傾向にあり、週全体では1日5時間47分から6時間12分、土曜日では特に増加しており、6時間7分から7時間16分になっている(第1−2−1図参照)。
 3次活動の中では「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」が1日2時間18分から2時間33分へと拡大しており、8年では、3次活動の約41%を占めている。また、「趣味・娯楽」が31分から36分、「スポーツ」が10分から13分へと増加している(第1−2−2図参照)。
第1−2−2図 3次活動の変化(グラフ)
3次活動の変化の表
(イ) 家計支出の変化
 日本人の家計支出の構成比が、昭和62年から9年の10年間で、どのように変化しているのかを、総務庁の「家計調査年報」に基づき概観すると、教養娯楽や交通・通信に対する支出の占める割合が増加している。
 同調査により、家計支出に占める各項目の割合をより詳細に見ると、構成比が増大しているのは、主に教養娯楽費(9.3%から10.3%)、交通・通信費(9.4%から10.5%)、住居費(5.0%から6.7%)、保健医療費(2.6%から3.3%)である(第1−2−3図参照)。

第1−2−3図 家計支出の推移(グラフ)
家計支出の推移の表
 さらに、昭和62年から9年について、教養娯楽費の内訳を見ると、テレビの占める割合が3.2%から2.0%へと減少しているのに対して、パソコン・ワープロが1.5%から3.0%へと増大している。同様に、交通・通信費については、通信機器が構成比自体は小さいが、0.48%から0.70%へと大きく拡大している。

イ 情報通信メディアの利用と生活の変化
(ア) 生活時間の変化
 情報通信メディアの保有者及び加入者を対象に、郵政省が実施した「情報通信と生活に関するアンケート」(9年12月、以下「生活調査」という)(注6)により、生活時間の変化について概観する。
 生活時間の変化として、睡眠時間、仕事時間及び余暇時間を見ると、睡眠時間では、PHS、インターネット及びパソコン通信の利用者の5割程度が「寝る時刻が遅くなった」と回答しており、また4割程度が「寝る時間が減った」と回答している(第1−2−4図参照)。仕事時間については、携帯電話、インターネット及びパソコン通信の利用者の3割以上が「仕事時間が増えた」と回答しており、余暇時間については、携帯電話及びPHSの利用者の2割以上が「余暇時間が減った」と回答している。

第1−2−4図 情報通信メディアの利用者の生活時間の変化(グラフ)
情報通信メディアの利用者の生活時間の変化の表
 以上により、情報通信メディアの利用者は、睡眠時間、余暇時間が減少し、仕事時間が増加する傾向にあるといえる。
 さらに、生活時間の利用の仕方に関する変化を概観すると、CS放送、ケーブルテレビの利用者では、「テレビを見る時間が増えた」とする回答者が多く、逆にインターネットの利用者では、「テレビを見る時間が減った」とする回答者が多かった。雑誌や本を読む時間は、各メディアの利用者とも、「増えた」とする回答者よりも「減った」とする回答者の方が多い(第1−2−5図参照)。

第1−2−5図 情報通信メディアの利用者のテレビ視聴時間等への影響(グラフ)
情報通信メディアの利用者のテレビ視聴時間等への影響の表
(イ) 家計支出の変化
 「生活調査」により、家計支出の変化について概観する。
 通信費用については、各メディア利用者とも5〜6割程度が「通信にかかる費用が増えた」と回答している。「家計調査年報」からも、家計支出での通信に関する費用の微増傾向が読みとれたが、本調査でも同じことがいえる。
 また、通信費の増加に伴い、各メディア利用者の3〜4割程度が「通信にかかる費用を意識するようになった」、「情報の値段や価値を考えるようになった」と回答しており、通信にかかる費用、情報の価値について意識するようになったことが分かる(第1−2−6図参照)。

第1−2−6図 情報通信メディアの利用者の支出に対する意識の変化(グラフ)
情報通信メディアの利用者の支出に対する意識の変化の表
(2) 情報通信メディアの生活各分野への影響
 「生活調査」により、情報通信メディアが生活の各分野に与える影響について概観する(第1−2−7表参照)。
 「友人との情報交換が増えた」、「活動範囲が広がった」、「会社や学校以外での知り合いが増えた」といった生活の変化について、回答者の割合が高かったメディアは、主に、ファクシミリ、PHS及びインターネットであった。これらの項目は、家族・友人関係やコミュニティ活動に関わりがあるといえるので、この結果より、ファクシミリ、PHS及びインターネットが家族・友人関係やコミュニティ活動に影響を与えていることがうかがえる。また、携帯電話よりもPHSの方が、この目的に利用されていることが分かる。

第1−2−7表 情報通信メディアの生活各分野への影響
 「仕事時間が増えた」、「時間が有効に使えるようになった」、「多くの情報を集めてから物事を判断するようになった」といった生活の変化について、回答者の割合が高かったメディアは、主に、インターネット、パソコン通信及び携帯電話であった。このような項目は、仕事と関係があるといえるので、これらのメディアは、仕事時間、仕事の在り方に影響を与えていると考えられる。さらに、前述の結果と併せて、携帯電話とPHSでは、使用目的が異なっていることもうかがえる。
 「テレビを見る時間が増えた(減った)」、「雑誌や本を読む時間が増えた(減った)」、「精神的に豊かになった」、「趣味が増えた」、「海外の出来事・国際問題への関心が高まった」といった、趣味・娯楽と関係するといえる生活の変化については、主に、インターネット、パソコン通信、CS放送及びケーブルテレビのメディア利用者の回答割合が高い傾向が見られ、これらのメディアが趣味・娯楽に影響を与えていると考えられる。特に、精神的な豊かさ、海外への関心について、CS放送及びケーブルテレビが影響のあることがうかがえる。



 

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