平成10年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

第1章 デジタルネットワーク社会の幕開け〜変わりゆくライフスタイル〜

第4節 サービスが抱える問題(ネットワークサービスを安心して利用できる環境の整備)

 情報通信の高度化に伴い出現している様々な問題に対する対応を検討することが必要となっている。
 郵政省では9年8月から、「高度情報通信社会に向けた環境整備に関する研究会」を開催してきたが、10年3月、報告書を取りまとめた。その概要は、1〜4及び7のとおりである。また、5では、情報流通ルールの在り方、6では、放送視聴者政策について紹介している。


  1. 個人情報保護

(1) 背景
 インターネットなどのオープン・ネットワークの急速な発展は、コンピュータの小型化にみられる技術革新とあいまって、現実の世界では全く見ず知らずの個人同士の情報交換や企業・消費者間等の電子商取引を世界規模で行うことを可能としている。このような環境においては、ネットワークを通じて、電子情報である個人情報を容易に収集・蓄積することが可能になり、アクセス・ログ等が本人の知らない間に収集されたり、また、不正なアクセスで、個人情報が予期しない形で収集、利用される可能性がある。このようなことに対して、国民に不安感があり、早急に対策を取る必要がある。

(2) 対応策の現状と課題

ア 我が国における個人情報の保護の現状
 個人情報保護に関する我が国の対応としては、行政機関における個人情報のコンピュータ処理の拡大及びこれに伴う個人の権利利益の侵害のおそれ等を背景に、昭和63年に「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」が制定され、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の取扱の基本的事項を定めるとともに、行政機関に対する個人の情報開示請求権の創設等個人の権利利益の保護が図られた。
 地方自治体レベルでは、9年4月現在で1,312団体、全体の39.5%の地方自治体が個人情報保護条例を制定している。これら個人情報保護条例の対象としては、公的部門の電子計算機処理に係る個人情報を規定している団体が多いが、民間部門の保有する個人情報についても対象とし、民間事業者に対する努力義務を規定する地方自治体も増加している。
 しかしながら、民間部門では、貸金業の規制等に関する法律及び割賦販売法において信用情報の目的外使用を禁止する規定があるものの、「個人情報」の取扱い制限を明文で規定する法律は存在せず、電気通信、放送、金融など分野ごとに関係省庁や民間団体がガイドラインを作成して民間事業者の自主的な取組を促すことにより対応している。例えば、発信電話番号表示サービスの利用における個人情報保護については、9年11月に「発信者情報通知サービスの利用における発信者個人情報の保護に関するガイドライン」が策定・公表されている。
 また、電子商取引における個人情報の取扱については、9年12月に、電子商取引の実証実験を推進する民間団体であるサイバービジネス協議会が「サイバービジネスに係る個人情報の保護に関するガイドライン」を制定し、 [1] アクセス・ログ等の情報収集の事実、利用の可能性について本人に明確にしておくこと、 [2] 個人情報の取扱方法についてはホームページ上で情報提供を行うなどの周知措置を講ずることなど、電子商取引にかかわる事業者がインターネットの特質を踏まえた自主的な保護ルールを整備することを促している。

イ 個人情報保護における課題
 ガイドラインによる対応手法は、民間事業者が収集する個人情報の内容、利用・提供の方法などに保護対策を講じ得るという点でメリットがあるが、 [1] 業界団体に参加していないアウトサイダー的な企業や悪意による個人情報の流出といった事例には対処できないこと、 [2] EU等の諸外国の施策との調和・統一も考慮する必要があること、に鑑みればその効力には一定の限界がある。

(3) 今後の制度整備の方向性と問題点
 個人情報の保護は、ネットワーク利用に対する信頼性を高めるための環境整備の重要な要素であり、今後、包括的な個人情報保護法の検討・マーク付与制度等による民間の自主的な個人情報保護の取組みの促進など保護対策の充実を図っていくことが必要である。

 

2. 諸外国の情報リテラシー政策 に戻る 2. 無権限アクセス対策 に進む