平成10年版 通信白書

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第2章 平成9年情報通信の現況

第8節 海外の動向

  1. 電気通信の動向

(1) 米国の動向

ア NII構想
 米国では、情報通信基盤の高度化が産業競争力の強化と社会的諸問題の解決に不可欠であるとの基本認識に基づき、NII(National Information Infrastructure:全米情報通信基盤)の構築に向けて積極的に取り組んでいる。NIIは、クリントン大統領が大統領選時の公約の一つとして挙げていたもので、その具体的施策は、1993年9月に示された「NII行動計画」で明らかにされた。
 「NII行動計画」では、情報通信基盤を「 [1] 数千の相互連結し相互に操作可能な電気通信ネットワーク、 [2] コンピュータ・システム、テレビ、ファクシミリ、電話、その他の「情報機器」、 [3] ソフトウェア、情報サービス、情報データベース(デジタル図書館等)、 [4] これらのシステムを構築し、維持・操作する訓練を受けた人々によって構成される」ものとし、NII計画を単なる通信網の開発にとどまらず、高度通信のソフト、人材の開発を含む総合的国家プロジェクトと位置づけている。また、NII導入については民間部門が主導的役割を果たし、政府の役割はその効果を補完、強化することにある。
 なお、このNII構想の実現に向けて米国政府は、情報通信分野の技術開発、アプリケーション開発等を省庁横断的に推進するためのHPCC(高性能コンピュータ通信)計画を策定、1992年から1996年の間に約46億ドルの予算を投じている。

イ 1996年米国電気通信法
 米国では、1996年2月に連邦通信法が62年ぶりに抜本改正され、従来は垣根が設けられていた長距離通信会社と地域通信会社の相互参入が認められるなど、この法改正により、電気通信分野や放送分野における競争が激化していくことが予想されている。その概要は次のとおりである。
  [1]
地域通信市場における競争の促進のため、相互接続義務をはじめとする接続ルールが明確化され、また、電力・ガス事業者等の参入が認められた。
  [2]
AT&T分割の際の修正同意審決(MFJ)により、業務範囲の制限されていたRBOCs(ベル系地域電話会社)による長距離通信分野への参入は、営業区域内から発信されるサービスについて分離子会社によること、地域の競争条件が整備されていることについての承認を得ること、地域通信分野における設備ベースの競争相手との競合が存在すること等、一定の条件の下、認められた。
  [3]
地域電話会社とケーブルテレビの相互参入が認められた。
  [4]
テレビ局、ラジオ局について、集中排除原則及び免許期間等の緩和、また、ケーブルテレビについて、料金規制の緩和が行われた。
  [5]
暴力事件の多発を背景に、13インチ以上のテレビ製造メーカーに対して、暴力や性的シーンの多い番組をブロックするVチップの内蔵が義務付けられた。
  [6]
このほか、インターネット等によるわいせつな通信についての規制が強化されたが、「下品な(indecent)」及び「明らかに不快な(patently offensive)」表現の規制については、表現の自由に反するとして、1997年6月、連邦最高裁判所において違憲判決がなされた。

(2) EUの動向
 EUは、1996年、音声電話サービスを含む全サービス、電気通信インフラストラクチャへの参入を1998年1月1日付けで完全自由化する旨の完全自由化指令を採択した。現在、この指令にしたがって、スケジュールの遅れは見られるものの、加盟各国は、国内法の整備を行っているところである。また、1992年に署名されたEU条約(いわゆる「マーストリヒト条約」)に規定された汎欧州ネットワーク(TEN:Trans-European Network)の実現に向け、汎欧州ISDNや各種アプリケーションの開発のため、1993年から1996年の間に、EUとして、欧州投資銀行による53.6億ECUの融資、欧州地域開発基金による4.7億ECUの補助金等の手当を講じてきている。さらに、第4次研究開発フレームワークプログラム(1994〜1998年)において、高度通信、アプリケーション等の情報通信研究開発を支援している。

(3) アジアの動向
 アジアでは、情報通信を自国の経済成長の起爆剤と位置づけ、情報通信ハブ基地化を目指す国々が近年多く出現している。
 例えば、シンガポールは、1991年8月に発表した情報通信技術を活用したインテリジェントアイランド化を目指す「IT2000構想」の実現に向け、1996年6月「シンガポール・ワン計画」を発表した。これは、シンガポール国内の情報通信インフラ整備や計画に参加する国内外の情報通信関連企業に対する税制優遇措置等を包括的に推進する計画である。1997年6月に正式にスタートし、1998年中に実用パイロットネットワークを構築する予定である。
 マレイシアは、1995年8月、「マルチメディア・スーパー・コリドー計画」を発表した。これは、2020年までにマレイシアを先進国入りさせるという国家ビジョン「ビジョン2020」の達成に向けて、現在の首都クアラルンプール市内に建設中のシティセンター、同市郊外に建設中のプトラジャヤ新行政府、新空港を結ぶ地域に光ファイバを敷設するほか、国内外の情報通信関連企業を誘致するための各種優遇措置を実施し、ビジネスや研究開発の拠点を創設しようとする計画である。

 

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