平成10年版 通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

第2節 高度情報通信社会の構築に向けた情報通信政策の推進

  6. 高齢者・障害者の情報通信利活用の促進

 郵政省では、すべての人が情報通信の利便を享受できる「情報バリアフリー」環境を整備し、高齢者・障害者が、情報通信の利活用により豊かな生活を送れる社会の実現を図る観点から、そのための方策を検討する調査研究、こうした社会の実現に必要な情報通信技術の研究開発、有効な情報通信システムの実証実験等を総合的に実施している。

(1) 情報バリアフリー環境の整備
 社会経済のあらゆる分野で情報化が進む中で、高齢者・障害者等の「情報弱者」と健常者の間に情報格差が発生し、それが社会的・経済的格差につながるおそれがある。そこで、郵政省では、すべての人々が情報通信の利便を享受できる環境(情報バリアフリー環境)の整備を行っている。

ア 情報バリアフリー型通信・放送システムの研究開発
 高齢者・障害者のハンディキャップを克服するための音声合成技術等と、個々の高齢者・障害者の特性に応じ、これらの機能を最も使いやすいように自動調整して、一台の汎用端末で提供できるシステムの研究開発を10年度から実施することとしている。

イ 情報バリアフリー・テレワークセンター施設の整備
 10年度から、高齢者・障害者対応の情報通信システム等を設置し、高齢者・障害者に最適な情報通信利用環境を実現した、情報バリアフリー・テレワークセンター施設を整備する地方自治体等を補助することとしている(第3−2−12図参照)。

第3-2-12図 情報バリアフリー・テレワークセンター
(2) 高齢者・障害者向け通信・放送サービス開発のための技術開発に対する助成
 郵政省では、9年度から、高齢者・障害者の利便の増進に資する通信・放送サービスを行うための通信・放送技術の研究開発を行う者に対して、通信・放送機構を通じて助成する「高齢者・障害者向け通信・放送サービス充実研究開発助成制度」を実施しており、9件の事業に対して助成金の交付決定を行った。

(3) 金沢市における高齢者・障害者のためのインターネット実証実験
 厚生省、金沢市等と協力し、金沢市を情報長寿社会の実現に向けたモデル地区として、高齢者医療・福祉の高度化等に資する、テレビ電話、パソコン通信等を利用した保健・医療・福祉分野の情報通信アプリケーションに関する実証実験を行っている。郵政省では、当実証実験の一環として、9年度は、10月から、高齢者・障害者のインターネットの利用促進に有効なシステムとして、電話・ファクシミリによりアクセス可能なインターネットに関する実証実験を実施した。

(4) 高齢者・障害者の情報通信の利活用の推進に関する調査研究会の開催
 郵政省では、8年10月から、情報通信が高齢社会において果たす役割の重要性に鑑み、高齢や障害にかかわらず、誰もが等しく情報通信システム等を利用しうる環境の整備に資することを目的として、「高齢者・障害者の情報通信の利活用の推進に関する調査研究会」を開催してきたが、9年5月、最終報告を取りまとめた。
 報告では、 [1] 高齢者・障害者向け学習センターの開設、維持運営への支援、 [2] 高齢者・障害者の特性を考慮した情報通信機器・システムの研究開発、 [3] 高齢者・障害者が参画する先導的実証実験の実施、等提言している。

(5) ライフサポート(生活支援)情報通信システム推進研究会の開催
 高齢者・障害者の自立及び介護者の利便向上等の観点から、国が率先して開発・普及すべき情報通信システム等を選定し、その普及策の検討を通じて、情報通信の利活用による高齢者・障害者の福祉の増進を図ることを目的に、9年11月から、厚生省と共同で「ライフサポート(生活支援)情報通信システム推進研究会」を開催している。調査研究会での検討結果は、10年5月に取りまとめられる予定である。

(6) 視聴覚障害者向け放送の充実に向けた取組

ア 字幕番組・解説番組の充実のための方策
 字幕放送・解説放送は、視聴覚障害者がテレビジョン放送を理解する上で不可欠なサービスであるが、我が国における実施状況は米国等に比較しても十分とはいえず、早急にその充実を図ることが必要となっている(第3−2−13表参照)、(写真参照)。
 そこで、郵政省では、9年5月、放送法及び有線テレビジョン放送法の一部改正を行った(9年10月施行)。その概要は、次のとおりである。
  [1]
テレビジョン放送事業者は、これまで必要とした多重放送の免許なしで字幕番組、解説番組の放送を行えることとした。
  [2]
テレビジョン放送事業者及び有線テレビジョン放送事業者は、字幕番組、解説番組をできる限り多く放送するように努めなければならないこととした。
第3-2-13表 日・米・英の字幕放送等の実施状況及び制度状況
第3-2-14表 字幕放送普及のための指針
 これを受け、郵政省では、9年11月、字幕放送の普及促進を図るため、今後の行政運営のための指針を定め、この目標の下に字幕放送の普及策等を策定していくこととした(第3−2−14表参照)。
 また、これらの措置により、字幕放送を行っている地上民放テレビジョン放送事業者は、10年1月現在、126社中54社(9年9月末時点で14社)と大幅に増加し、着実に普及している。

イ 字幕番組・解説番組の制作に対する助成制度
 字幕番組・解説番組の制作員に対し、経済情勢等に左右されない計画的かつ安定的な助成を可能とするため、既存の衛星放送受信対策基金の運用による助成に加え、国が通信・放送機構に対して補助金を交付し、これを原資とする新たな助成制度を9年度から創設した。

ウ 視聴覚障害者向け専門放送システム実現への支援
 視聴覚障害者向け専門チャンネルを番組制作面で支援するため、9年度に、これら視聴覚障害者向け専門放送番組を制作し、専門放送チャンネルに供給するために必要となる施設の整備について、財政投融資による低利融資を行う制度を創設した。

エ 視聴覚障害者向け放送ソフト制作技術の研究開発
 字幕放送番組等の視聴覚障害者向け放送番組の制作には、多大な制作コストと制作時間を要することから、効率的な番組制作技術の開発を目的として、8年度から通信・放送機構渋谷上原リサーチセンターにおいて、視聴覚障害者向け放送ソフト制作技術の研究開発を行っている。

視聴覚障害者向け放送の例(写真)
 

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