平成10年版 通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

第3節 第2次情報通信改革に向けた電気通信行政の推進

  2. ネットワークの高度化・多様化

(1) ネットワークの高度化・多様化に関する検討
 郵政省では、急速に進展する技術革新、ニーズの高度化・多様化を踏まえ、円滑なネットワーク展開に資するため、9年3月から「ネットワークの高度化・多様化に関する懇談会」を開催し、9年12月報告書を取りまとめた。その概要は、次のとおりである。

ア 21世紀型ネットワークの動向と推進方策
 2010年のネットワークとして最も有望なネットワークは、進化型インターネットである。進化型インターネットとは、リアルタイム性、セキュリティ性、インテリジェント性等のそれぞれの需要に応じて現在のインターネットがそれぞれの特性に優位を持ち発展し、特化された形態のことである。我が国としては、21世紀の経済発展の牽引力となる情報通信の分野で、世界のイニシアティブを取るため、進化型インターネットへの移行を急ぐ必要があり、 [1] 公正競争環境整備による多様かつ創造的な技術開発力の醸成、 [2] 技術の国際化の推進、 [3] ユーザーニーズの反映によるアプリケーション開発の推進、につき早急に対応を行う必要がある。

イ FTTH
 今後、高速・広帯域の通信サービスを、従来よりも低廉な料金で提供されるようFTTHの早期実現を図っていくことが必要であり、そのためには以下の推進方策が必要である。
(ア) ネットワークの円滑な構築のための環境整備
 光ファイバネットワークの円滑な構築を図るため、 [1] 公共収容空間の利用の円滑化、 [2] NTTや電力会社の電柱、管路の空きスペースの利用の円滑化、 [3] 下水道・上水道管等の既存の施設を活用したビル等への光ファイバの引き込み管等の確保の検討が必要である。
(イ) 自営の光ファイバ網の電気通信事業等への活用
 自営の光ファイバ網の整備動向を注視しつつ、民間主導原則との整合性を十分留意し、その利活用の在り方について検討を進めていくことが望まれる。
(ウ) 無線系ネットワークを含めたシームレスネットワークの実現
 ネットワーク全体としてシームレスなネットワークを実現することが重要であり、このために必要な技術の研究開発、実証実験等を推進することが必要である。

ウ xDSL
 近年のインターネットの急速な普及により、電話回線を用いたインターネット・アクセスの伝送速度に対する不満が高まっており、アクセス回線の高速化が大きな課題となってきているが、xDSLとは、メタル回線上での高速伝送(最大6Mbps)を可能にする技術の総称であり、近年のインターネットの普及に伴い、各国で脚光を浴びている。xDSLの導入により、高速な通信環境に適したアプリケーションの開発が促進されるという意味で、xDSLは、光ファイバ化実現への「橋渡し」的技術としての役割が期待される。
(ア) 光ファイバ化との関係
 xDSLサービスの提供が、メタル回線の光ファイバ化への更改の障害となるのではないかとの指摘がある一方、xDSLの時限的提供等の対応策があるとの指摘もあり、この点に関しても更なる検討が必要である。
(イ) 実証実験の早期実施
 xDSLサービスの導入に当たっては、技術的課題等について、実際のサービス提供環境に近い環境での実証実験(フィールドテスト)が必要である。
 実証実験は、広く他事業者やベンダー等の参加するオープンな形での実験とするとともに、実験結果についても公表し、広く一般の意見を聞くことが望ましい。

(2) 加入者系無線アクセスシステム
 加入者系無線アクセスシステムは、地域通信市場における競争の促進、マルチメディアアプリケーションの早期普及に有効であり、全国整備を推進している光ファイバ網を一部補完するものとしても注目されている。郵政省は、9年7月、現行システムより高速で各種アプリケーションを可能とする加入者系無線アクセスシステムの技術的条件について、電気通信技術審議会に対し、諮問を行った。10年3月、一部答申を得る予定である(第3−3−2図参照)。

第3-3-2図 加入者系無線アクセスシステムの概要
(3) トータルデジタルネットワーク構築技術の研究開発
 21世紀初頭における高度情報通信社会の実現には、デジタル化された無線と有線のネットワークインフラをシームレスに接続し、情報通信の利用者が個々のネットワークインフラの特性を意識しない「トータルデジタルネットワーク」の構築が必要である。郵政省では、10年、トータルデジタルネットワークの構築に向け、デジタル化の進展している公衆通信網、ケーブルテレビ網、LAN、防災行政無線網等の円滑な接続のための基盤的な技術につき、開放型実験施設を活用しつつ、研究開発及び標準化を推進する予定である。

(4) IX(インターネットエクスチェンジ)の活用の検討
 インターネット・プロバイダ間の相互接続点となるIXは、回線費用を抑え、無駄な中継のない効率の良いネットワーク構築に資するものである。
 郵政省では、インターネットの効率的・安定的な相互接続に欠かせないIXについての理解を深め、将来のIX間、IX及びISP間の協調体制の構築に資するとともに、IXのサービスの向上によるインターネット利用者の利益増進の観点から、9年5月に「IX研究会」を開催し、IXを運営する上での課題等について検討を行い、同年9月に報告書を取りまとめた。
 その概要は次のとおりである。

ア 地域振興策としての地域IXに対する支援
 地域IXは商用IXとは異なり、地域のインターネット・プロバイダ間の情報交換の場を提供するなど、地域情報化政策の中心となるため、地域IXに対する公的な支援措置が取られることが重要である。

イ 政府による研究開発への積極的な支援
 研究開発については、Wideプロジェクトが運営するNSPIXPが、課題となる技術の研究開発等を担当するとともに、その成果の他のIXへの移転、更には、政府による積極的な支援が望まれる。

ウ 世界的視野の必要性
 我が国のIXが外国のインターネット・プロバイダから利用されるように環境を整え、IX間、インターネット・プロバイダ間の競争環境を整備することにより、我が国のインターネットにおける国際ハブとしての役割が一層高まることが期待される。

 

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