平成11年版 通信白書

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第1章 特集 インターネット

(3)在宅学習

在宅のまま、米国の私立高等学校卒業資格が取得できる学習システムが登場

 教育分野におけるインターネット利用は、義務教育における情報リテラシーの醸成、大学における市民講座開講といった、既存の教育内容・方法の充実を図るものばかりではない。
 既存の学校教育の枠におさまりきらない領域、例えば、再び学ぶ意欲を持った、過去に不登校の経験のある生徒や、健康上の理由で通学に耐えられない生徒等が、在宅で学ぶことができるシステムを、インターネットが可能にした事例がある。
 インターネット・ハイスクール「風」(http://www.kaze.gr.jp/)は、従来の学校教育という形式に縛られることなく、インターネットを利用して、在宅のまま、好きな時間に興味のある分野を自分なりの方法で学ぶ「高校」である。所定の単位を取得すれば、提携する米国ミシガン州の私立高等学校の卒業資格を取得することが可能で、11年3月には、はじめての卒業生4名が卒業した。
 インターネット・ハイスクール「風」の教育プログラムには、決まったカリキュラムがなく、生徒は、サポートティーチャーと呼ばれる教師と、電子メールを利用して相談しながら、自分だけのカリキュラムを作成する。また、例えば、国語であれば小説を読んだり、美術であれば美術鑑賞で学習は成立する。また、自由参加のスクーリング(通学制のカリキュラム)も用意されているが、インターネットを利用した在宅学習のみでも卒業要件単位は取得でき、事務局によれば、生徒の約半数が在宅学習のみであるという。なお、入校時には、8割程度がパソコン、インターネットの未経験者で、希望者は事務局主催のパソコン・インターネット教室を受講できる。
 インターネットでは、社会系、自然系、精神系、身体系、パソコン関連に分類された講義が提供され、講師陣には、サポートティーチャーだけでなく、弁護士、農家、漁師等の専門家が参加し、生活者の視点を重視した科目構成となっている。インターネットを利用するといっても、決してバーチャルな世界の教育を実践するものではなく、インターネットは、在宅学習という形式の中で、生徒が主体的に学ぶための糸口、手段に過ぎず、単位認定も、原則自己申告制で、インターネット等を利用して学習・調査した時間数を申請し、これが単位数に直結する仕組みになっている。このほか、生徒間の交流にもインターネットを利用している。ホームページに設けられた専用サイトでは、希望者がプロフィール等を公開することが可能で、自由に書き込める掲示板も用意されている。電子メールの交換により「知り合い」になり、スクーリングで対面する例も珍しくはないという。インターネット・ハイスクール「風」で学ぶ生徒は、11年度の新入生を加え150人で、居住地は海外1か国、国内28都道府県となっている。

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