平成11年版 通信白書

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第1章 特集 インターネット

コラム4 暗号の利用

通信内容の保護と通信相手の本人性の確認に利用されている暗号技術

 暗号は従来より主に通信内容を秘匿するために一般的に利用されてきたが、最近のインターネット及びインターネットコマースの急速な普及に伴い、通信内容の秘匿に加えて、通信相手の本人性の確認及び通信内容が改ざんされていないことを確認するために広く利用されるようになってきた。インターネットを通じた通信において用いられている暗号技術は、大別して「共通鍵暗号方式」と呼ばれるものと「公開鍵暗号方式」と呼ばれるものに分類される。
 暗号技術において用いられている「暗号鍵」とは、暗号化・復号の際に用いられる特定のデータのことであり、共通鍵暗号方式においては、暗号化・復号の過程で、同じ鍵が用いられる。
 他方、公開鍵暗号方式においては、一対の異なる暗号鍵ペア(本人しか所有しない「秘密鍵」と一般に誰でも入手可能な「公開鍵」)が用いられており、一方の鍵で暗号化したものについては、それに対応するもう一方の鍵でしか復号できないという仕組みになっている。例えば、送信者が相手方の公開鍵で暗号化した場合は、相手方本人の秘密鍵でのみ復号可能であり、これにより、相手方の秘密鍵が厳格に管理されていれば、通信途上で他者が暗号文を解読することは著しく困難となる。また、送信者が自らの秘密鍵で暗号化したものは、送信者の公開鍵でのみ復号可能であり、これにより、受信者側からみれば、送信者の公開鍵で復号できたことにより、当該暗号文が送信者により真正に暗号化されたものであることが推定される。
 これら2つの暗号方式はそれぞれに長所・短所を有している。共通鍵暗号方式は、暗号化・復号処理を短時間で行うことが可能であるという長所がある反面、通信の相手方ごとに異なる暗号鍵を作成しなければならない、共通の暗号鍵を安全に相手方に配送しなければならないという短所もある。他方、公開鍵暗号方式は、自らの秘密鍵に対応する公開鍵を一般に広く利用可能な状態においておけば、複数の暗号鍵ペアを作成する必要も鍵を相手方に配送する必要もないという長所があるが、逆に暗号化・復号処理に時間がかかるという短所もある。このため、最近では、両方式の長所を組み合わせた方式が主流になりつつある。すなわち、通信内容の暗号化及び復号には共通鍵を用い、その共通鍵の相手方への配送において公開鍵暗号方式を用いるという方式である。
 暗号技術は、インターネット上での安全・信頼性を確保するために不可欠な基盤技術となりつつあるが、既存の暗号技術は、常に解読の危機にさらされている。このため、世界各国で新たな暗号技術の研究開発が積極的に行われており、量子暗号等の新たな暗号技術も開発されている。また、国際的な暗号政策の在り方に関しても、OECDやワッセナー・アレンジメントといった国際機関等において検討が進められているところである。
(参考)
ワッセナ−・アレンジメントとは、通常兵器や暗号技術を含む関連汎用品・技術の国際的な輸出管理を実施するために1996年から設けられている国際的枠組みであり、現在、米国、欧州諸国、日本等を含む33か国から構成されている。

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