平成11年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く目次の階層をすべて閉じる

平成11年版通信白書のポイント

第1章 特集 インターネット

序 節 インターネットの普及
●10年における我が国のインターネット人口は約1,700万人と推計。商用利用開始後わずか5年間でインターネットの世帯普及率は10%を突破。
●我が国のウェブ上の情報量はこの1年間で3.4倍に増加。
●11年3月現在、世界のインターネット人口は約1億6,000万人。
●11年1月現在、世界のインターネットホスト数は約4,300万台(この5年間で約20倍)。

第1節 インターネットを巡る国際潮流
●ドメインネームの国際的な管理体制は、非営利法人ICANNを中心とした運営への移行が決定。
●APECやOECDの会合等において電子商取引の国際的枠組みづくりが進展。
●米国においては次世代インターネット開発法が成立。次世代インターネット計画のために、1999年度には6,700万ドル、2000年度には7,500万ドルの予算を新たに計上。
●欧州委員会は、EU域内の電子商取引に原則として企業の所在地の法律を適用する指令案を採択。

第2節 成長を続けるインターネットビジネス
B1000001.gif

●インターネットを利用して最終消費財やサービスの取引を行うインターネットコマースの最終消費財市場は、前年の約2倍に拡大。
●インターネットを活用して企業間で原材料取引を行うインターネットコマース原材料取引市場は、自動車、電機が大きなウェイトを占める。
●インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)等によるインターネット接続ビジネスは前年の約2.6倍に成長。
●インターネット接続端末、関連ソフトウェア、決済サービス、インターネット広告等のインターネット関連ビジネスは前年の約1.4倍に成長。

第3節 生活に広がるインターネット
●女性のインターネット利用が増加。最近利用を開始した人は、自宅での利用や趣味娯楽のための利用が中心。
●若者は出会いの場としてインターネットを活用。シニアは趣味や自己啓発の機会として期待。
●主婦はインターネットによる生活情報の提供や在宅勤務の機会・可能性の拡大に期待。
●フルタイムで働く女性の約4分の3(73.5%)がインターネットを利用。
●就職・採用活動にインターネットが定着。10年に就職活動を経験したインターネット利用者の約9割(93.7%)が活用。

第4節 公共分野におけるインターネット
●国の機関においてホームページの開設等が進み、情報の提供、意見募集への利用が本格化。
●地方公共団体のホームページ開設は10年度末には61.5%、11年度末には70%を超える見込み。
●地方公共団体のホームページ上での情報発信は、「観光・物産」が94.5%とトップ。「報道発表資料・記者会見」を発信しているのは全体の3.8%で、そのうちの17.0%が「記者会見とほぼ同時の公開」と回答。
●授業、学校と家庭との連絡、在宅学習など教育分野でのインターネット利用が拡大。大学では市民講座が開講。

第5節 課題と展望
1 利用環境整備
●72.8%が個人情報保護を強化すべきとの意見。電気通信サービスにおけるプライバシー保護の在り方等について、郵政省では「電気通信サービスにおけるプライバシー保護に関するガイドライン」を告示。
●インターネット、パソコン通信利用者のうち約4割(38.1%)が違法・有害情報に遭遇。
●10年にJPCERT/CCが受け付けた不正アクセスその他関連行為の報告件数は923件(対前年比87.6%増)に。「不正アクセス行為の禁止等に関する法律案」を第145回国会に提出。11年度からは不正アクセス発信源の追跡を可能とする技術に関する研究開発を実施。
●インターネット利用上の不満点として「ウィルスの感染が心配である」と回答した企業が48.9%。ウィルス感染経路のうち、電子メールやダウンロードなどによるネットワーク経由の割合が増加。10年6月からウィルスコンサルティングセンターが始動。

2 普及に向けて
●東京の通信料金はニューヨークの約3倍。通信料金の多様化・低廉化が必要。
●諸外国では、電子認証に関する制度の整備が。郵政省では認証業務の在り方について技術、制度両面から検討。
●インターネットショッピングの利用者の約7割が個人情報に関し不安。現金と同様の機能を持って流通するインターネットキャッシュ等が登場。
●諸外国では学校へのインターネット接続を計画的に推進。我が国では13年度にすべての公立学校をインターネットに接続予定。また、郵政大臣の要請により、インターネット接続に係る通信料金・接続料金に学校向け特別料金が実現。
●高齢者の8割、障害者の7割がインターネット、パソコン通信のいずれも利用していない。利用しやすい機器の開発や、情報リテラシー向上のための取組を推進。

3 インターネットの高度化
●トラヒックの急増に伴い、インターネット用回線の増強が急務。
●移動通信環境の高度化に対応した効率的なインターネットアクセスの実現が課題。移動端末や移動通信網の制約を可能な限り意識させない柔軟な情報アクセス実現のための研究開発を実施。
●インターネット上での高度なアプリケーションを実現させるため、超高速・大容量通信等が可能な次世代インターネットに関する研究開発を実施。

第2章 情報通信の現況

第1節 情報通信産業

B1000002.gif

●情報通信産業は成長を持続。情報通信産業の実質国内生産額は、昭和60年に卸売を、7年に建設を上回り、9年の推計では111兆円に達し、全産業に占めるシェアは11.8%となった。
●9年の推計において、情報通信産業の粗付加価値額は47兆円に達し、建設業を上回る。
●情報通信産業の昭和55年から9年における労働生産性の年平均成長率は5.2%と高い伸び。
●情報通信産業の就業者数も微増。

第2節 通信・放送事業
●電気通信事業は総じて堅調。
  ・10年度の第一種電気通信事業者数は179社(対前年度比26社増)。
  ・ 9 年度の第一種電気通信事業者の営業収益は11兆3,784億円(対前年度比10.7%増)。
●通信業の株価はTOPIXを上回る伸び。
●電気通信業の企業数増加率は高く、通信業の廃業率は低い。
B1000003.gif
●放送事業は総じて堅調。
  ・10年度の放送事業者数は1,149社(対前年度比56社増)。
  ・ 9 年度の放送事業者の営業収益は2兆8,019億円(対前年度比4.6%増)。
●通信産業の設備投資額は高水準を維持。
●通信・放送事業者間の競争が激化する中、合併や提携が相次ぐ。

第3節 情報通信ネットワーク
●基幹網の増強が進行。また、IP網を基幹網として構築する動き。
●移動体通信等の無線利用や、データ通信の高速化等のニーズの高まりを受け、DSLやWLL等の新たなアクセス方法が続々登場し、加入者網の多様化が進行。
●9年度末現在の無線局数は3,948万局(対前年度比35.1%増)。
●9年度末現在のケーブルテレビ施設数は68,234局(対前年度比3.0%増)。

第4節 電気通信サービス
●加入電話は、契約数、トラヒックとも減少。ただし、新事業者の契約数等は順調に増加。
●ISDNの回線数及びトラヒックが急増。
●9年度末の公衆電話施設数は77万8,470個(対前年比2.1%減)。
●国際電話については、引き続き我が国からの発信が着信を上回る。米国への発信がトップ。
●10年9月末の携帯・自動車電話の契約数は、3,654万契約(対前年同期比40.1%増)。トラヒックも増加。
●10年9月末のPHSの契約数は626.7万契約(対前年同期比11.3%減)。ただし、トラヒックは増加。
●国内、国際専用サービスともに、比較的高速度の回線に需要がシフト。
●周回衛星を利用した移動電話サービスが開始。新サービスのほとんどが携帯電話やPHS関連で、データ通信機能を付加したものが中心。

第5節 放送サービス
●BS放送、CS放送とも契約数は順調に増加。
●9年度末のケーブルテレビの契約数は1,448.2万契約(対前年度比14.7%増)、このうち自主放送を行うものの契約数は、672.0万契約(同34.4%増)。通信サービスを提供する事業者も増え、ケーブルテレビのフルサービス化が進展。
●10年度第1学期における放送大学の学生数は67,990人に。
●映像国際放送の放送地域がアフリカ西部・南部を除く全世界に拡大。

第6節 郵便サービス
●10年度の総引受郵便物数は、対前年度比0.6%増。
●冊子小包の新設、翌朝10時郵便(モーニング10(テン))の取扱地域の拡大等サービスを充実。

第7節 料 金
●国内電気通信料金、国際電気通信料金とも低下基調を継続。
●加入電話の加入時一時金及び基本料金は、海外主要都市と比較して割高だが、市内通話料金は割安。
●国内専用料金のデジタル回線料(64kbps及び1.5Mbps)は海外主要都市と比較して割高。
●携帯・自動車電話の通話料金は、海外主要都市と比較して割安。
●公共放送の受信料は、英国、フランス、ドイツと比較すると平均的水準。
●郵便料金は、英国、フランス、ドイツと比較すると、手紙は割高、はがきは割安。

第8節 技 術
●情報通信分野における我が国の技術競争力は相対的に低下傾向。特に、米国との格差が増大。
●我が国の情報通信分野の研究開発費は9年度に初めて3兆円を突破。
B1000004.gif

● フォーラム標準やコンソーシアム標準の策定活動が活発化。情報通信分野の標準化活動では米国企業がリード。

第9節 情報化
●企業におけるインターネットの利用率は80.0%、LANの利用率は83.3%に。
●米国の情報化投資額は我が国の約3倍。情報化投資対GDP比率でみても我が国の1.7倍。
●携帯電話の世帯普及率は57.7%、インターネットの世帯普及率は11.0%に。消費不況にもかかわらず、6年以降の家計における情報通信支出は大幅に増加。
●携帯電話やパソコン等の情報機器のパーソナル化が進展。30代の自宅におけるパソコン利用者のうち81.4%が自分専用のパソコンを保有。15〜19歳の携帯電話保有者の60.7%が利用料金を全額自己負担。
●移動体通信利用者において、サービス種類変更(例:ポケベルからPHS、PHSから携帯電話)、携帯電話の事業者変更、携帯電話の機種買換えが頻発(チャーン現象)。携帯電話の機種買換え経験は半数近くに。
B1000005.gif

●中央省庁等の内部部局のパソコン配備は、ほぼ1人1台。地方公共団体でも着実に増加し、行政事務の情報化が一段と進展。
●情報通信を活用した大学における遠隔授業が本格化。10年度末現在、衛星通信大学間ネットワーク構築事業を利用した遠隔教育に83機関が参加。
●遠隔診療が普及。進行中または実験を完了した遠隔診療は210事例。

第10節 情報流通
●全国の情報流通量は実質GDPや総人口を上回るペースで増加。
●9年度の発信情報量の都道府県別のシェアは、東京都が20.1%と突出。

第11節 海外の動向
●米国では通信法改正や技術革新を契機とした新規参入による競争と業界再編が進行。
●欧州では1998年1月の電気通信市場の完全自由化により、事業者間の競争が進展。
●アジアでは一部の国々が通貨・経済危機の影響を受け、通信網整備計画に遅れ。
●米国及び英国で地上デジタル放送が開始。
●国際的な通信・放送事業者の再編が進展。

第3章 情報通信政策の動向

第1節 高度情報通信社会実現に向けた政府の取組
●高度情報通信社会推進本部では、電子商取引等検討部会において、10年6月「電子商取引等の推進に向けた日本の取組」を取りまとめ。10年9月には「コンピュータ西暦2000年問題に関する行動計画」を、10年11月には「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」の新方針を本部決定。
●10年4月の総合経済対策及び10年11月の緊急経済対策において、情報通信の高度化を重要な柱として位置づけ。
●11年1月に、「生活空間倍増戦略プラン」及び「産業再生計画」を閣議決定。郵政省では、高度道路交通システム(ITS)、放送のデジタル化、次世代情報通信基盤の整備等を推進。
●10年12月、内閣総理大臣直轄の省庁連携タスクフォースとして、バーチャル・エージェンシーが発足。電子政府の実現に向けた3プロジェクトと教育の情報化プロジェクトを設置。

第2節 情報通信改革の推進
●電気通信市場における競争の一層の進展を図るため、10年7月、国際電信電話株式会社法(KDD法)を廃止。10年11月、料金規制の見直しや第二種電気通信事業の区分の見直し等を実施。
●10年5月、より迅速かつ機動的な料金設定を可能とするため、第一種電気通信事業者の電気通信サービスに関する料金について、原則認可制から原則届出制へ変更。競争が十分に進展していない地域通信市場においては、上限価格方式(プライスキャップ規制)を導入。
●10年5月、情報通信ニュービジネスの振興のために、官民共同出資のテレコム・ベンチャー投資事業組合を設立。

第3節 ネットワークインフラの整備
●10年度末現在、約27%の地域において光ファイバ網が整備。17(2005)年の全国整備完了を目標に引き続き特別融資制度を継続。
●10年12月、準ミリ波・ミリ波帯を使用する新たな加入者系無線アクセスシステムの導入に向けた基本的方針を公表。
●11年3月、ITU-R TG8/1会合において、次世代移動通信システム(IMT-2000)の無線伝送方式の基本パラメータ勧告案が決定。
●コンピュータ西暦2000年問題への取組として、10年10月に「電気通信西暦2000年問題連絡会」、11年3月に「放送事業者西暦2000年問題連絡会」を設置し、対策の早期実施に向けた指導を強化。
●地上デジタルテレビジョン放送については、18(2006)年末までにアナログ放送からデジタル放送への親局レベルでの全国導入完了を目標。地上デジタル放送について、10年9月から12月にかけて、暫定放送方式の取りまとめや全国的なチャンネルプラン原案の策定を行ったほか、実用規模による実験を開始。
●12(2000)年開始予定のBSデジタル放送については、10年7月に受託放送事業者をBSATに決定し、同年10月には委託放送事業者10社を決定。

第4節 研究開発の推進
●10年度に、全国10か所のATM交換設備を結ぶ超高速光ファイバ回線と全国5か所の共同利用型研究開発施設から構成される研究開発用ギガビットネットワークを整備し、全国45か所にアクセスポイントを設置。
●成層圏プラットフォームについて、産学官共同で研究開発を推進。10年8月には、通信・放送機構により「成層圏プラットフォームプロジェクト」が発足。

第5節 情報通信高度化の環境整備
●10年7月から「情報通信の不適正利用と苦情対応の在り方に関する研究会」を開催。また、伝言サービスの不適正利用や国際情報提供サービスによる被害に対応して、利用者への注意喚起等を実施。
●高齢者・障害者を含むすべての人が電気通信設備を円滑に利用できるようにするため、10年10月、「障害者等電気通信設備アクセシビリティ指針」を告示。10年12月、厚生省と共同で「情報バリアフリー環境の整備の在り方に関する研究会」を設置。
●10年12月、インターネットをはじめとする電気通信サービスの高度化・多様化の進展に対応し、「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」を改訂し告示。
●電気通信サービスに関する9年度の苦情・相談等の受付件数は1,071件(8年度の3.4倍)。約4割が国内電話に関する事項。
●電波利用における人体防護のために、電波法施行規則を改正(10年10月公布、11年10月施行)。
●10年12月から、劇場やコンサートホール等における通信抑止に対する社会的ニーズに対応して、携帯電話等の通信抑制機能を有する実験用無線局の免許申請の受付を開始。
●いわゆる「ポケットモンスター問題」に対応して「放送と視聴覚機能に関する検討会」を開催し、10年4月の中間報告及び同年6月の最終報告において、放送番組の表示手法等について、放送事業者等による自主的なガイドラインの策定を提言。青少年の健全育成に資するため、10年5月から12月にかけて、「青少年と放送に関する調査研究会」を開催。

第6節 公共分野の情報化の推進
●「マルチメディア街中にぎわい創出事業」、「地域イントラネット基盤整備事業」等により、地域の情報化に取り組む地方公共団体等の支援を推進。
●10年11月「特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発の推進に関する法律」が施行。各省庁が共同・連携して公共分野の情報化を推進。
●11年2月、電気通信技術審議会答申において、ITS情報通信システムにおける2015年度までの市場規模は約60兆円、2005年までの雇用創出効果は約33万人と試算。

第7節 グローバル化への対応
●10年6月にAPEC電気通信・情報通信産業大臣会合が、10年10月にITU全権委員会議が開催。
●インテルサット、インマルサットにおいて機構改革が決定。
●9年度、通信分野において、約380億円(うち無償資金協力は69億円)の海外援助を実施。
●電気通信分野の国際化に対応して、11年3月より、携帯電話等の無線設備の技術基準適合証明制度を簡素合理化。

第8節 郵便局ネットワークの活用の推進
●11年2月から3月にかけて、郵便局を利用したワンストップ行政サービスの高度化実験を実施。11年3月から、同広域化実験を開始。
●郵便貯金のオープンネットワーク化により、11年3月末現在、386の金融機関とATM・CDのオンライン接続による提携を実施。
●11年1月より、デビットカードサービスを開始。11年3月末現在、923の金融機関と加盟店104社が「日本デビットカード推進協議会」に参加。

第9節 郵政行政の情報化
●10年4月、10年度から14年度にかけての郵政行政情報化の基本的な方向性・計画目標を示した新たな「郵政行政情報化5か年計画」を策定。
●行政手続の申請負担軽減に向けて、郵政省所管の申請・届出等に係る319手続のうち、10年度末までに219手続(68.7%)の電子化を実施。

第10節 その他の政策
●情報通信を活用した地球環境保全のための政策を推進。10年5月には、電気通信審議会が、テレワークや高度道路交通システム(ITS)等の主な情報通信システムのCO2削減効果を試算。
●10年度の豪雨災害における地上系情報通信ネットワーク被害への対応経験を踏まえて、11年3月より、各地方電気通信監理局等に貸出用通信機器として衛星携帯電話を配備。

 

凡例 に戻る 第1章序説1 急増するインターネット人口 に進む