第二章 着信課金サービスの番号ポータビリティの実現方式 第二章 着信課金サービスの番号ポータビリティの実現方式 1 実現方式を特徴付ける要素 1.1 着信課金サービスの処理手順 (1)処理手順の概要 高度サービスの識別番号として事業者共通で使用することとされている0AB0系 番号 により提供される着信課金サービスのための処理手順は、次のとおりであ る。(図2−1)
図2−1 着信課金サービスの処理手順 [1]利用者が0120番号をダイヤルする。 [2]交換機が着信課金サービスへの呼であることを認識し、共通線信号網へ 問い合わせメッセージを送出する。 [3]STPがダイヤルされた0120番号に対応するデータが格納されてい るSCPへ問い合わせメッセージを転送する。 [4]SCPが、ダイヤルされた0120番号に対応するデータに基づき、接 続先となる電話番号を応答メッセージとしてSTPへ送出する。 [5]STPがSCPからの応答メッセージを交換機へ転送する。 [6]交換機が、SCPから指示された電話番号により着信先へ回線接続を行 う。
現在、着信課金サービス用0AB0系番号としては0120番号が使用さ れている。また、「電気通信の高度化のための番号の在り方に関する研究会 報告書」(平成7年5月)においては、新たな着信課金用0AB0系番号と して0800番号(0800から始まる番号)を使用することが望ましい旨 が提言されている。ここでは、着信課金サービスの番号を0120番号とし て表記するが、検討結果は0120番号以外の0AB0系番号を使用する場 合にも適用できる。
(2)発信事業者と着信課金サービスを提供する事業者が異なる場合の処理手順 (1)の処理手順は、1の事業者に閉じて着信課金サービスが提供される場合 のものであるが、発信事業者とSCPを有して着信課金サービスを提供する事業 者が異なる場合の処理手順としては、図2−2に示すように2つの方法が考えら れる。
図2−2 発信事業者と着信課金サービスを提供する事業者が異なる場合の処理 手順 【方法1】は、共通線信号網を介して発信事業者の交換機から着信課金サービス を提供する事業者のSCPへ直接問い合わせを行う方法であり、次の手順で処理 が行われる。 [1]利用者が0120番号をダイヤルする。 [2]交換機が、ダイヤルされた番号(先頭の0120に続く3桁の数字)に より着信課金サービスを提供している事業者を識別し、その事業者のSC Pへ問い合わせメッセージを送出する。 [3]サービス提供事業者のSCPが、ダイヤルされた番号に対応するデータ に基づき、着信先となる電話番号を応答メッセージとして発信事業者の交 換機へ送出する。 [4]交換機が、SCPから指示された情報により回線接続を行う。
【方法1】の拡張として、発信事業者が共通線信号網を介して他事業者の SCPへ問い合わせを行う機能を有する交換機を持たない場合に、共通線信 号網を介して他事業者のSCPへ問い合わせを行う機能を有する交換機を持 つ事業者に回線を接続し、この事業者が着信課金サービスを提供する事業者 のSCPへ問い合わせを行う方法が考えられる。
【方法2】は、発信事業者から着信課金サービスのためのSCPを持つ事業者へ POIを介して回線を接続し、その事業者の交換機からSCPへ問い合わせを行 う方法であり、次の手順で接続が行われる。 [1]利用者が0120番号をダイヤルする。 [2]交換機が、ダイヤルされた番号(先頭の0120に続く3桁の数字)に より着信課金サービスを提供する事業者を識別し、その事業者へ回線接続 を行う。 [3]着信課金サービス提供事業者の交換機からSCPへ問い合わせを行う。 [4]SCPから指示された情報に基づき、着信課金サービス提供事業者の交 換機が回線接続を行う。 【方法1】では、交換機とSCPの間で直接処理を行うため、回線を効率的に設 定することが可能となる利点がある。 【方法2】では、例えば、着信課金サービスの着信先が発信事業者の同一料金区 画内である場合に折返し回線が設定されることになるなど、回線設定が非効率と なる可能性がある。(図2−3)
図2−3 折返し回線が設定される例
この番号には、中継事業者識別番号00XYが付加されている場合がある。
1.2 着信課金サービスにおける番号ポータビリティの基本的な処理手順と実 現方式を特徴付ける要素 着信課金サービスにおける番号ポータビリティは、0120番号による呼の着 信先となる契約者が契約している事業者を変更する際にこれまでと同じ0120 番号を使用できるようにすることである。 着信課金サービスにおける番号ポータビリティを実施するためには、これまで と同じ0120番号がダイヤルされた場合に着信課金サービスを提供するために 必要なデータを収容している変更後の事業者のSCPに問い合わせを行う必要が あり、このための処理手順は次のようになる。
図2−4 着信課金サービスの番号ポータビリティ [1]利用者によりダイヤルされた0120番号により識別される事業者のS CPへ問い合わせを行う。 [2]ダイヤルされた番号の契約者が番号ポータビリティにより事業者を変更 していることを確認し、移転先を示す情報を取得する。 [3]移転先事業者の着信課金サービス制御用のSCPへ問い合わせを行う。 [4]着信先を示す情報を取得する。 この処理手順から、着信課金サービスの番号ポータビリティを特徴付ける要素 として次の2点が考えられる。 ア)移転先を示す情報を持つSCPに問い合わせを行い、移転先を示す情報を取 得する事業者 イ)移転先の着信課金サービス用SCPに問い合わせを行い、着信先を示す情報 を取得する事業者 2 移転先を示す情報及び着信先を示す情報の取得の方法 2.1 検討対象となる方式案 着信課金サービスの番号ポータビリティの実現方式を特徴付ける2つの要素に ついて次のように考えられる。 ア)移転先を示す情報を持つSCPに問い合わせを行い、移転先を示す情報を取 得する事業者 移転先を示す情報を持つSCPに問い合わせを行い、移転先を示す情報を取得 する事業者としては、 ・ 発信事業者 ・ 移転元事業者 が考えられる。1.1の【方法1】により着信課金サービスの処理を行う場合は 発信事業者であり、【方法2】により処理を行う場合は移転元事業者である。 イ)移転先の着信課金サービス制御用SCPへ問い合わせを行い、着信先を示す 情報を取得する事業者 移転先の着信課金サービス制御用SCPへ問い合わせを行い、着信先を示す情 報を取得する事業者としては、次に示すように、発信事業者、移転元事業者又は 移転先事業者が考えられる。 移転先を示す情報を持つSCPに問い合わせを行う事業者が発信事業者である 場合、 ・ 発信事業者(【方法1】による場合) ・ 移転先事業者(【方法2】による場合) が考えられる。 移転先を示す情報を持つSCPに問い合わせを行う事業者が移転元事業者であ る場合、 次が考えられる。 ・ 移転元事業者から発信事業者へ回線を切り戻し、発信事業者から【方法 1】により問い合わせを行う。 ・ 移転元事業者から【方法1】により問い合わせを行う。 ・ 移転元事業者から発信事業者へ回線を切り戻し、発信事業者から【方法 2】により問い合わせを行う。 ・ 移転元事業者から【方法2】により問い合わせを行う。 2.1,1 情報を取得する手順を特定する場合の方式案 移転先を示す情報を持つSCPに問い合わせを行う手順及び着信先を示す情報 を持つSCPに問い合わせを行う手順を特定することとすれば、次の5つの方式 案が検討対象になるものと考えられる。 【案3−1】 [1]発信事業者が、共通線信号網により移転先を示す情報を持つ移転元事業 者のSCPへ問い合わせを行う。 [2][1]で取得した情報に基づき、発信事業者が、共通線信号網により着 信先を示す情報を持つ移転先事業者のSCPへ問い合わせを行う。 [3][2]で取得した情報に基づき、発信事業者の交換機から回線設定を行 う。
図2−5 【案3−1】の概要 この案では、発信事業者と移転元事業者との間の接続及び発信事業者と移転先 事業者との間の接続がともに【方法1】の接続によることが必要である。発信事 業者の交換機と移転先事業者のSCPとが直接処理を行い、発信事業者の交換機 から回線設定を起動することとなるので、効率的な回線設定が可能となる。 【案3−2】 [1]発信事業者が、共通線信号網により移転先を示す情報を持つSCPへ問 い合わせを行う。 [2][1]で取得した情報に基づき、発信事業者が移転先事業者まで回線接 続を行う。 [3]移転先事業者が着信先を示す情報を持つ自身のSCPへ問い合わせを行 う。 [4][2]で取得した情報に基づき、移転先事業者の交換機から回線設定を 行う。
図2−6 【案3−2】の概要 この案では、発信事業者と移転元事業者との間は【方法1】による接続に、発 信事業者と移転先事業者との間は【方法2】による接続になる。着信課金サービ スを提供する事業者が回線設定を起動することになるが、1.1(2)に示すよ うに効率的な回線設定にはならない可能性がある。 【案3−3】 [1]発信事業者が移転元事業者まで回線接続を行う。 [2]移転元事業者が移転先を示す情報を持つ自身のSCPに問い合わせを行 う。 [3][2]で取得した情報を発信事業者へ転送し、発信事業者と移転元事業 者との間の回線を開放する。 [4][2]で取得した情報に基づき、発信事業者が共通線信号網により着信 先を示す情報を持つ移転先事業者のSCPへ問い合わせを行う。 [5][4]で取得した情報に基づき、発信事業者の交換機から回線設定を行 う。
図2−7 【案3−3】の概要 この案では、発信事業者と移転元事業者との間は【方法2】による接続に、発 信事業者と移転先事業者との間は【方法1】による接続になる。発信事業者と移 転元事業者との間に設定された回線を開放することが必要となる。 【案3−4】 [1]発信事業者が移転元事業者まで回線接続を行う。 [2]移転元事業者が移転先を示す情報を持つ自身のSCPに問い合わせを行 う。 [3][2]で取得した情報に基づき、移転元事業者が、共通線信号網により、 着信先を示す情報を持つ移転先事業者のSCPへ問い合わせを行う。 [4][3]で取得した情報に基づき、移転元事業者の交換機から回線設定を 行う。
図2−8 【案3−4】の概要 この案では、発信事業者と移転元事業者との間は【方法2】による接続に、移 転元事業者と移転先事業者との間は【方法1】による接続になる。 回線設定を起動するのが移転元事業者となるので、1.1(2)に示すように 効率的な回線設定にはならない可能性がある。 【案3−5】 [1]発信事業者が移転元事業者まで回線接続を行う。 [2]移転元事業者が移転先を示す情報を持つ自身のSCPに問い合わせを行 う。 [3][2]で取得した情報に基づき、移転元事業者が移転先事業者まで回線 接続を行う。 あるいは、 [3]’[2]で取得した情報を発信事業者へ転送し、発信事業者と移転元事 業者との間の回線を開放して、発信事業者が移転先事業者まで回線接続を 行う。 [4]移転先事業者が着信先を示す情報を持つ自身のSCPに問い合わせを行 う。 [5][4]で取得した情報に基づき、移転先事業者の交換機から回線設定を 行う。
図2−9 【案3−5】の概要 この案では、発信事業者と移転元事業者との間が【方法2】による接続になる。 着信課金サービスを提供する事業者が回線設定を起動することになるが、1.1 (2)に示すように効率的な回線設定にはならない可能性がある。 2.1.2 情報を取得する手順を事業者間の接続方式に基づき設定する場合の 方式案 2.1.1では、SCPに問い合わせを行い情報を取得する手順を特定する方 法により5つの案を考えたが、着信課金サービスを提供する際に他の事業者に収 容される利用者からの発呼をも対象とする場合に、この事業者との合意により、 【方法1】による接続又は【方法2】による接続のいずれかが選択されることに 着目すれば、次の【案3−6】が考えられる。 【案3−6】 [1]移転先を示す情報を取得する方法を【方法1】による接続又は【方法2】 による接続のうちから発信事業者と移転元事業者との間での合意により選択 し、SCPへ問い合わせを行う。(【方法2】による場合、発信事業者と移 転元事業者との間の回線を開放する。) [2]着信先を示す情報を取得する方法を【方法1】による接続又は【方法2】 による接続のうちから発信事業者と移転先事業者との間での合意により選択 し、[1]で取得した情報に基づきSCPへ問い合わせを行い、着信先への 回線設定を起動する。
図2−10 【案3−6】の概要 この案は、発信事業者と移転元事業者との間の接続及び発信事業者と移転先事 業者との間の接続が、それぞれ【方法1】、【方法2】のいずれによるものであ っても実現可能となるものである。回線設定の効率性を考慮すれば、ともに【方 法1】による接続であることが望ましいが、【方法2】による接続を行っている 場合であっても他の事業者間の接続と独立にこれを変更することが可能である。 2.2 望ましい方式の選定 着信課金サービスの番号ポータビリティの実現方式としては、2.1より【案 3−1】〜【案3−6】の6つの案が考えられる。 このうち、【案3−1】〜【案3−5】の5つの案を比較すると、回線の効率 的利用の観点から【案3−1】が最適の方式と考えられるが、【方法1】による 接続が全ての事業者により早期に行われることを想定することは現実的ではない ものと考えられる。 一方、【案3−6】は、各事業者間の接続が【方法1】、【方法2】のいずれ によるものであっても導入可能であり、番号ポータビリティの導入前に他の事業 者に収容される利用者をも対象とした着信課金サービスが実施されている場合に は、比較的小規模な機能追加(【方法2】による接続が行われている場合、取得 した情報を発信事業者に転送する機能の追加等)により実現可能と考えられる。 また、他の事業者間の接続方法にかかわらず、任意の事業者間の接続を【方法2】 によるものから【方法1】によるものへ移行することにより、回線設定の効率性 に優れた【案3−1】への円滑な移行が可能となる。 以上より、着信課金サービスの番号ポータビリティの実現方式としては、回線 の効率的利用の観点から最適な【案3−1】に円滑に移行可能な【案3−6】を 採用することが適当である。 (13)
【案3−6】を情報取得方法選択方式と呼ぶこととする。
3 移転先を示す情報の形式及び内容 0120番号による着信課金サービスにおいては、0120に続く3桁の数字 により事業者が特定される。番号ポータビリティが導入され契約する事業者が変 更されると、ダイヤルされた番号の「0120」に続く3桁の数字により特定さ れる事業者と着信課金サービスを提供する事業者が異なるため、一旦この3桁の 数字に基づいて移転元事業者のSCPに問い合わせを行い、移転先を示す情報を 取得することが必要になる。番号ポータビリティにより移転した契約者に対する 呼への回線設定を事業者間で確保するためには、この移転先を示す情報の形式及 び内容を事業者間で共通化しておくことが必要である。 3.1 検討対象となる案 移転先を示す情報の形式及び内容について検討すべき要素としては、次の3つ が考えられる。 ・ 移転先事業者のサービス制御用SCPへ問い合わせを行うために、012 0から始まる別の番号を利用するか否か ・ SCPへ問い合わせを行うためにネットワーク内の既存の機能が利用可能 となる形式の情報とするか否か ・ 情報が示す内容を何にするか(SCP内での移転した契約者の着信先デー タが格納される位置か、移転した契約者の着信先データが格納されるSCP か、移転先事業者か) これら3つの要素から、検討対象となる案としては図2−11に示すものが考え られる。 図2−11 着信課金サービスの番号ポータビリティの移転先を示す情報の形式 及び内容に関して検討対象となる案 3.2 望ましい案の選定 図2−11に示す5つの案について、評価を行った結果は次のとおりである。 [1]【案4−1】は、番号ポータビリティにより移転した契約者の着信先デー タを持つSCP内でのデータの格納位置を示すための情報として、0120 から始まる番号を新たに利用するものである。この場合、0120番号の使 用が非効率的となり、望ましい案とは言えない。 [2]【案4−5】は、0120番号によりSCPへ問い合わせを行うためにネ ットワーク内の既存の機能を利用しない方式であるが、この場合、移転先事 業者のSCPに問い合わせを行う機能を新たに各事業者において具備するた めに大規模なネットワーク改修が必要となる。したがって、現実的な案とは 言えない。 [3]【案4−2】、【案4−3】及び【案4−4】は、0120番号によりS CPへ問い合わせを行うためにネットワーク内の既存の機能を利用すること として、「0120+DEF」又は「0120+DEF+GHJ」という形 式の情報(ただし、利用者がダイヤルする0120番号そのものではない。) を用いるものである。この情報により移転先事業者のSCPへ問い合わせを 行う場合とダイヤルされた0120番号によりSCPへ問い合わせを行う場 合とを区別して処理を行うために、また、【案4−2】及び【案4−3】で は移転先事業者のネットワーク内でSCP内の着信先データの格納位置を特 定できるように、ネットワークの改修が必要となるが、【案4−5】に比べ て改修の規模を小さくすることが可能である。 【案4−2】、【案4−3】及び【案4−4】の3つの案の特徴は、表2−1の とおりである。 表2−1 移転先を示す情報の形式及び内容
情報の形式 |
情報が示す内容 |
|
【案4-2】 |
「0120+DEF」の形式(移転先事業者が 指定を受けた代表的な「DEF」を使用) |
移転先事業者 |
【案4-3】 |
「0120+DEF」の形式 |
移転した契約者の着信先デ ータが格納されるSCP |
【案4-4】 |
「0120+DEF+GHJ」の形式 |
SCP内での移転した契約者 の着信先データの格納位置 |
【案4−2】は、「0120+DEF」の形式を持ち、移転先事業者を特定で きる代表的な「DEF」を使用する案である。この場合、移転先事業者内で、利 用者がダイヤルした0120番号を基にして移転した契約者の着信先データが格 納されているSCPを特定し、このSCP内での着信先データの格納位置を特定 するための処理を行うことが必要となる。 【案4−3】は、「0120+DEF」の形式を持ち、番号ポータビリティに より移転した契約者の着信先データが格納されているSCPを特定する「DEF」 を使用する案である。この場合、移転先事業者内で、利用者がダイヤルした01 20番号を基にして移転した契約者の着信先データのSCP内での格納位置を特 定するための処理を行うことが必要となる。 【案4−4】は、「0120+DEF+GHJ」の形式を持ち、番号ポータビ リティにより移転した契約者の着信先データが格納されているSCPを特定する 「DEF」及びこのSCP内での着信先データの格納位置を特定する「GHJ」 を使用する案である。この場合、この情報のみにより移転した契約者の着信先デ ータを取得することが可能となる。 これらの3つの案では、移転先事業者以外の事業者においてはいずれであって も移転先を示す情報を移転先事業者に転送する機能を具備すればよい。 一方、移転先事業者にとっては案によってネットワーク改修の内容等が異なる が、ネットワークの改修規模が大きくなっても移転元事業者に通知しておくべき 情報を必要最小限にしたいとの考え方があり得る。このため、移転先事業者がこ の3案の中から望ましい案を選択し、これによって移転先を示す情報を移転元事 業者に通知することが適当と考えられる。 以上をまとめると、移転先を示す情報については、【案4−2】(「0120 +DEF」の形式を持ち、移転先事業者を特定する代表的な「DEF」を使用す る案)、【案4−3】(「0120+DEF」の形式を持ち、移転した契約者の 着信先データが格納されるSCPを特定する「DEF」を使用する案)及び【案 4−4】(「0120+DEF+GHJ」の形式を持ち、移転した契約者の着信 先データが格納されるSCPを特定する「DEF」及びこのSCP内の移転した 契約者の着信先データの格納位置を特定する「GHJ」を使用する案)から移転 先事業者が選択する方法とすることが適当と考えられる。 なお、【案4−4】については、移転先事業者において番号ポータビリティに より移転してくる契約者が多くなった場合にも対応し得るようにすることが適当 であり、SCP内での着信先データの格納位置を特定する「GHJ」の部分を3 桁より最低1桁多くすることができるような措置を予め採っておくことが望まし い。 4 移転先を示す情報を格納するデータベースの設置形態 着信課金サービスの番号ポータビリティに関連するSCPには、移転先を示す 情報を持つSCPと着信先を示す情報を持つSCPがあるが、後者については事 業者が提供する着信課金サービスの内容により多様な情報が格納されることが考 えられ、通常、事業者毎に設置されるものと考えられる。 前者については、これまでの検討においては事業者が個別に設置することを前 提としてきたが、着信課金サービスの現行の処理手順を変更することを許容すれ ば、事業者共通で設置することも考えられる。すなわち、移転先を示す情報を持 つSCPを事業者共通で設置し、着信課金サービスの発呼全てについてこのSC Pに問い合わせを行い、契約者が事業者を移転していなければ0120に続く3 桁の数字で特定される事業者のSCPに、事業者を移転していれば移転先を示す 情報を得て移転先事業者のSCPに、それぞれ着信先データについて問い合わせ を行うことが考えられる。 移転先を示す情報を持つSCPを事業者個別に設置する場合と事業者共通で設 置する場合の特徴は、それぞれ次のとおりである。 [1]事業者個別で設置する場合 ・ 番号ポータビリティにより移転していない契約者の着信課金サービスへの 発呼については、既存の設備・手順による処理が可能となる。 ・ 番号ポータビリティにより移転した契約者の着信課金サービスへの発呼を 処理するための手順を既存の着信課金サービスの処理手順に追加することと なるが、比較的小規模なネットワーク改修で対応可能であり、速やかな導入 を図ることが可能である。 ・ 番号ポータビリティにより移転した契約者へのサービス提供状況が移転元 事業者に明らかになるおそれがある。 [2]事業者共通で設置する場合 ・ 番号ポータビリティにより移転した契約者へのサービス提供状況が移転元 事業者に明らかになるおそれがなく、公平な競争環境が期待できる。 ・ 番号ポータビリティにより移転していない契約者の着信課金サービスへの 発呼についても事業者共用SCPへ問い合わせを行い、移転されていないこ とを確認することが必要となる。 ・ 大規模なデータベースを構築し、更新、維持、管理を行うことが必要とな る。 ・ 事業者共通のSCPへの各事業者からの問い合わせは共通線信号網を介す ることが前提となる。 [1]及び[2]を比較すると、観点により優劣が異なるが、各事業者から共 通線信号網を介して事業者共通SCPへの問い合わせが可能となるまでに相当の 時間が必要と考えられること及び着信課金サービスの番号ポータビリティが可能 な限り早期に導入されることが期待されることから、当初は、事業者個別のSC Pにより番号ポータビリティを実現し、各事業者からの共通線信号網を介した問 い合わせが可能となる段階で事業者共通のSCPの設置の適否について検討を行 うこととすることが適当であると考えられる。 5 実現方式がサービス品質等に及ぼす影響 番号ポータビリティを導入した場合に、既存の網サービス、機能、能力への悪 影響、並びに、サービス品質及びネットワークの信頼性への悪影響が現れないこ とが必要である。 着信課金サービスの番号ポータビリティの実現方式として【案3−1】又は 【案3−6】を採用する場合にこれらについて検討した結果は次のとおりである。 (1)既存の網サービス、機能、能力への影響 番号ポータビリティを導入する際に新たに必要となる処理としては、次が考え られる。 [1]移転先を示す情報を取得し、これにより着信先を示す情報を持つSCPへ 問い合わせ(いずれの方式においても必要) 番号ポータビリティにより移転した着信先への呼を処理するためには、移 転先を示す情報を取得し、着信先を示す情報を持つSCPへの問い合わせを 行う必要があるが、移転先を示す情報はダイヤルされた番号と同様の形式を 持つ。 [2]回線を遡って開放(【案3−6】において発信事業者と移転元事業者との 間で【方法2】を採用する場合に必要) 移転先を示す情報を持つSCPへ問い合わせを行う交換機及び発信事業者 の交換機への機能追加により回線が開放されるが、開放後に着信先の事業者 へ転送される情報に影響を及ぼさない。 これらの処理を行うことにより着信先の事業者に転送される情報に影響が及ぶ ことはなく、既存の網サービス、機能、能力に大きな影響を与えることはないも のと考えられる。 (2)サービス品質、ネットワークの信頼性への影響 【案3−6】において【方法2】による接続を行う場合に必要となる処理は自 網内でのSCPへの問い合わせ(2回)及び回線の開放であり、いずれも既に実 現されている処理であることから、これらの処理を組み合わせることによりサー ビス品質及びネットワークの信頼性に大きな影響を及ぼすことはないものと考え られる。 【案3−6】において【方法1】により接続を行う場合又は【案3−1】を採 用する場合、現在事業者間において実現されていない【方法1】による処理を行 うこととなるが、番号ポータビリティが実現される前段階において【方法1】に よる着信課金サービスの接続が実現されれば、【方法1】による処理と自網内で のSCPへの問合せ及び回線の開放を組み合わせることにより、又は、【方法1】 による処理を二度行うことにより、番号ポータビリティの処理を行うとしても、 サービス品質及びネットワークの信頼性に大きな影響を及ぼすことはないものと 考えられる。 なお、番号ポータビリティの提供を受けている契約者への呼については、通常 の着信課金サービスの呼に比べて接続のための処理が余分に必要となるが、一般 加入電話・ISDNの番号ポータビリティにおいて検討した際と同様の考え方か ら、不合理な遅延を生じるものとはならないものと考えられる。 6 ネットワークにおいて具備すべき機能 望ましい方式として【案3−1】又は【案3−6】、その際の移転先を示す情 報に関する案として【案4−2】、【案4−3】又は【案4−4】を採用し、S CPを事業者個別に設置する場合に、発信事業者、移転元事業者及び移転先事業 者のネットワークに具備すべき主な機能は次のとおりである。 【案3−1】の実現に必要な機能 発信事業者、移転元事業者及び移転先事業者において、共通線信号網を介して 移転元事業者及び移転先事業者のSCPへ問い合わせを行う機能が必要となる。 移転先事業者においては、【案4−2】又は【案4−3】を採用する場合、移 転先を示す情報及びダイヤルされた0120番号により自身のSCP内の着信先 を示す情報の格納位置を特定する機能が必要となる。 【案3−6】の実現に必要な機能 発信事業者及び移転元事業者において、両者の合意により【方法1】により処 理を行う場合、共通線信号網を介して発信事業者から移転元事業者のSCPへ問 い合わせを行う機能が必要となる。また、【方法2】により処理を行う場合、移 転先を示す情報を取得後発信事業者と移転元事業者の間の回線を開放する機能が 必要となる。 発信事業者及び移転先事業者において、両者の合意により【方法1】により処 理を行う場合、共通線信号網を介して発信事業者から移転先事業者のSCPへ問 い合わせを行う機能が必要となる。 移転先事業者においては、【案4−2】又は【案4−3】を採用する場合、移 転先を示す情報及びダイヤルされた0120番号により自身のSCP内の着信先 を示す情報の格納位置を特定する機能が必要となる。 なお、以上の機能の他に、事業者間精算等のために必要な情報を転送する機能 が必要になるものと考えられる。