平成13年版 情報通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く目次の階層をすべて閉じる

第2章 情報通信の現況

3 アジア

ITによる社会経済構造改革を推進

 アジア諸国・地域においても、ITによる社会経済構造改革を競って実施しており、電気通信市場の自由化や通信網の整備計画等環境整備を集中的に進めようとしている。

1)中国
 中国の電気通信市場の成長は著しく、1999年末に1億840万だった固定電話の加入者数が、2000年末には1億4,400万(普及率約11%)に、同じく4,329万だった移動電話の加入者数が2000年末には8,526万(普及率約6%)に増加した。固定・移動電話ともに米国に次いで世界第2位の加入者数である。
 また、市場の改革、法整備等も進んでいる。中国電信の独占体制を打破し、市場競争を促進するため、1999年3月に中国電信の分割が決定され、2000年4月には固定、移動、衛星、ページャーの4事業体への分割が完了した(このうち、ページャーについては1999年6月に聯合通信に移管されている)。
 1999年4月には、鉄道部、中国科学院、広播電影電視総局及び上海市が出資して、中国網路通信有限公司(網通)が設立された。網通はIP電話及びインターネットサービスを提供している。
 2000年9月には、電気通信分野の基本法ともいうべき「電信条例」が制定された。同条例では、電気通信事業は「基礎通信業務」と「付加価値通信業務」に分類され、前者については49%までの外資が認められるとともに、後者については外資制限に関する規定はない。これを受け、2000年12月には、上海において、AT&Tが合弁会社を設立し、初の外資参入が行われた。
 さらに、2001年2月には、鉄道省が「鉄道通信集団公司」を設立、市内網・長距離網をはじめとした幅広い電気通信業務に参入した。

2)香港
 香港の域内(香港内)固定通信については、従来は香港テレコム(後のC&WHKT)の独占であったが、1995年から新規参入したハチソン・コミュニケーションズ、ニューワールド・テレフォン及びニューT&Tの3社が参入し、2000年1月には、香港ケーブルテレビも免許を獲得した。有線による域内固定通信は、これら5社による競争体制が2002年末まで維持され、2003年1月から完全自由化される。2000年1月には無線による域内固定通信の免許が5社に交付され、有線の5社と合わせ、一層の競争導入が図られている。
 域外(国際)通信については、当初2006年9月まで香港テレコムインターナショナル(後のC&WHKTI)の独占が認められていたが、1998年1月に自由化前倒しが決定、1999年1月から事業ベース(回線設備はC&WHKTI)での自由化が、また、2000年1月からは設備ベースについての自由化が図られた(衛星利用の場合は完全自由化。海底ケーブル利用の場合は、2003年1月まで、香港へのケーブル敷設に直接投資する者にのみ免許交付)。
 香港は電気通信市場の自由化を促進する施策をとるとともに、電気通信の急速な発展に対応する免許手続の合理化のため、2000年6月、「電気通信(修正)条例」を成立させた。これに基づき、2001年4月から、これまで11あった免許を「固定伝送者免許」「移動伝送者免許」「衛星基地伝送者免許」の3つに整理した「キャリア・ライセンス制」が導入された。放送の中継・伝送に係る免許についてもキャリア・ライセンス(固定)の対象とされているが、番組等のサービス提供については、新放送条例(2000年7月発効)による「テレビ番組サービス免許」が必要となる。
 香港におけるIT戦略としては、1998年11月、「デジタル21」が発表された。香港を21世紀における先導的なデジタル・シティとすることを目的としており、「大容量通信システム」「安全な電子商取引のための共通ソフトウェア・インターフェイス」「ITを活用できる人材」「創造性を刺激し、ITの進歩を歓迎する文化環境」の4つのイニシアチブを掲げている。
 なお、2000年8月には、地元の新興インターネット・ベンチャー企業であるパシフィック・センチュリー・サイバーワークス社(PCCW)によるC&WHKTの買収手続が終了し、合併新会社であるパシフィック・センチュリー・サイバーワークス(PCCW)が発足した。

3)韓国
 韓国政府は1999年9月、次世代インターネットや光通信等の研究開発を含む情報通信技術開発5か年計画(2000年から2004年まで)を発表した。本計画では電気通信分野での技術開発費として4兆1,400億ウォン(約4,074億円)を投入するとしており、この技術開発の成果によって電気通信関連輸出額は、1998年末の300億ドル(約3兆4,400億円)から、2004年末までに1,000億ドル(約11兆5千億円)に達すると予測している。
 また、政府は1999年4月、「CYBER KOREA 21」を発表した。これは創造的地域基盤国家の建設を目標に、知識情報の創出、蓄積、活用能力の先進化を行うもので、2002年には世界で10位圏の情報化先進国になることを目標とする国家計画である。2000年1月には、その一部である「国家情報化計画」を前倒しすることを発表した。本計画では、2005年までほぼ全世帯がマルチメディア・データをいつでもどこでも送信できる国内高速インターネット・インフラの建設に40兆ウォン(約3兆9,360億円)を投入するとしており、当初2010年までの完了を予定していたが、近年のインターネット需要の高まりに対応するため前倒しすることとしたものである。
 なお、2001年3月、政府は、韓国を世界IT生産基地として発展させるため、「IT基本法」を年内に制定すると発表した。

4)シンガポール
 シンガポール政府は、国土、人口の制約を踏まえ、高付加価値産業への集積が不可欠であるとして1980年代より、他国に先駆けて政府主導によるIT施策に取り組んできた。この結果、インターネットの普及率が人口の45%を占めるとともに道路料金システムのIT化を実現するなどアジアにおいてもっともIT化が進んだ国の一つとなっている。
 2000年には、IT分野における2001年からの10年間の国家計画であるICT21マスタープランを発表。同計画は主に1)通信の自由化を含む情報通信関連産業の振興(注)、2)企業のIT化、3)生活のIT化、4)公共分野のIT化、5)人材育成から構成されており、シンガポールをダイナミックで活力のある世界的な情報通信の中心地とすること、そのためにネットエコノミーと情報通信社会を構築することを目標としている。

5)マレイシア
 マレイシア政府は、多様な民族構成を踏まえ、従来から調和のとれた安定した複合国家構築のため人造りを重視した政策を推進してきている。1991年発表の「ビジョン2020(2020年までに先進国入りを目指すという長期計画)」では、科学技術立国という構想を国家開発の目標の一つに掲げ、これに基づき、ITの推進を国家開発の重点分野として政府主導によるIT施策に取り組んでいる。
 1996年に首都クアラルンプル、新行政都市プトラジャヤ、新国際空港を含む地域を「マルチメディアスーパーコリドー(MSC)」として、IT産業の集積地とする国家プロジェクトを発表。IT時代のテストベッドとして企業集積、フラッグシップ・アプリケーションの開発・実用化など多彩なプロジェクトに取り組んでいるところである。
 また、MSC開発の推進母体であるマルチメディア開発公社(MDC)を中心に公共分野におけるIT活用についてフラッグシップ・アプリケーションとして、「電子政府」、「多目的カード」、「スマート・スクール」、「遠隔医療」等の開発・実用化が行われており、MSCにおけるパイロットプロジェクトを起点として全国展開が期待されている。



(注)通信の自由化
シンガポール政府は、電気通信の自由化の時期を当初の2002年4月から2年早め、2000年4月より外資規制、免許数の制限を撤廃した。この結果、従来シンガポールテレコムが独占していた固定通信市場を含め電気通信市場全体の競争促進が図られることが期待されている。

 


2 欧州 に戻る 4 グローバルアライアンス に進む