9 情報通信ベンチャー ベンチャーキャピタルの投資がネットワーク系企業にシフト  米国における情報通信ベンチャーの活躍は、技術進歩の促進を通じて産業を活性化させるのみならず、ITを活用した新たなサービスを開始するなどIT革命推進の大きな原動力となっている。我が国においても電気通信業をはじめとする情報通信ベンチャーが数多く設立されており、今後一層の成長が期待されている。   1)企業増加・倒産  平成8年から11年の我が国における企業増加率(注1)を主な産業(注2)についてみると、図表1)のとおりである。電気通信業の企業増加率は79.1%と、他の産業の増加率がおおむね横ばいであるのに対し、大幅な伸びを示しており、ISPなど電気通信業における企業の増加が著しいことが分かる。また、平成8年から12年の倒産率(注3)をみると、電気通信業は3.5%と主な産業において最も低くなっており、卸売業(9.2%)、建設業(8.7%)、運輸業(7.1%)の半分以下となっている(図表3))。 2)資金調達  ベンチャー企業における資金調達環境をベンチャーキャピタルの投資状況からみると、平成11年7月から12年6月にかけて、スタートアップ・ステージ(設立当初〜設立5年未満)、アーリーステージ(設立5年〜10年未満)の企業に対する投資が77.1%と前年(59.1%)との比較で急速に上昇しており、設立から早い段階における企業の資金調達環境が改善されていることがうかがえる(図表3))。  また、ベンチャーキャピタルの投資先を産業別にみると、IT関連分野の構成比が平成10年度から11年度にかけてやや増加したものの、平成12年4月から6月にかけては、減少に転じていることが分かる。しかし、IT関連産業について詳細にみると、半導体/その他電子製品やコンピュータ関連の構成比が低下する一方、インターネット関連や通信においては、平成12年度に入っても引き続き投資の構成比が上昇しており、IT関連企業の中で製造企業からネットワーク系企業へ投資対象が移行していることが分かる(図表4))。 図表1) 主な産業における企業数増加率(平成8年〜平成11年) 図表2) 主な産業における倒産率(平成8年〜平成12年) 図表3) ベンチャーキャピタルのステージ別投資状況(金額) 図表4) ベンチャーキャピタルの産業別投資状況(金額)   (注1)産業別企業増加率の算出方法について 「事業所・企業統計」(総務庁(現総務省))をもとに、産業別に下式により算出した。 (平成11年の企業数−平成8年の企業数)÷平成8年の企業数 (注2)運輸業は、「運輸・通信業」から「郵便業」「電気通信業」を除いたものとしている。 (注3)産業別倒産率の算出方法について 「事業所・企業統計」(総務庁(現総務省))、帝国データバンク社資料をもとに、産業別に下式により算出した。 平成8年から12年の累積倒産件数÷平成8年の企業数