平成14年版 情報通信白書

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第1章 特集 IT活用型社会の胎動

(6)インターネット活用の新たな動向

−消費者主導の商品開発・eラーニング・転職支援サイト

(1)消費者主導の商品開発
 電子商取引の利用が着実に進む中、消費者が商品やサービスの購入者という立場を超え、インターネットを通じて積極的に商品開発に参画するという動きが進みつつある。ここでは、消費者が欲しい商品を作り出すというコンセプトで、消費者主導の商品開発をあっ旋支援するウェブサイトの事例と多様化・高度化していく消費者の嗜好やニーズの収集・活用のため、メーカーが自社のサイト内に消費者の商品開発への参画や商品評価等を行える仕組を取り入れた事例を紹介する。

1)消費者主導商品開発支援サイト
 この種の先駆的サイトである「空想生活」では、図表1)のような仕組で消費者からの製品企画のアイデア提案を出発点とした製品開発支援を行っている。消費者はインターネット経由で投票や意見表明を行って商品開発に参加し、実際のデザイナーやメーカーの選定、生産発注、販売等の業務は、サイト側で行っている。元々このサイトの運営会社(エレファントデザイン)は雑誌経由で同様の事業を行っていたが、消費者意見の集計分析に手間取るため、平成11年1月からウェブサイトを開設しインターネットの利用を始めたという経緯がある。
 消費者は事前に会員登録し、自分の購入したい商品提案をしたり、電子掲示板や電子メール等で提示されたデザインや仕様等について意見や要望を発信し、商品化の賛否や仕様・価格についてインターネット上で投票を行う。最終的に商品化決定された製品については、共同購入方式により購入予約を行い購入する。製品を提供する企業側にとっては、受注生産であるため、在庫負担リスクが少ないことに加え、生産計画が立てやすいなどのメリットがある。サイト側からは、消費者に対して各商品化候補アイテム別に製品化ステップの進捗状況を表す「プロダクト指数」や、消費者からの人気度を表す「ユーザー指数」といった製品化への見込み度合いを伝えることにより、消費者の参加意識を高めている。

2)消費者意見を出発点とするメーカーの商品開発
 家電メーカー最大手の松下電器は、子会社である松下ネットワークマーケティングの運営するECサイト「パナセンス」の1コーナー「デザイン工房」で、消費者から商品デザインについてのアンケートや投票を通じて商品開発への参加を促している。このサイトでは、提案されたアイデアに基づく商品化を宣言して消費者からの意見や提案を求めており、単なる意見収集にとどまらない、実際の商品開発を前提とした取組となっている。平成13年からは、約2年間かけて消費者意見主導の扇風機の製品開発を行うプロジェクトを進行させている。

(2)eラーニング
 インターネットを活用してオンラインで教育を行うeラーニングが、様々な形態で開発・導入され、普及し始めている。eラーニングは、受講者にとって講師との双方向(インタラクティブ)のコミュニケーションを可能とし、受講者が自分の都合の合う場所・時間帯等に合わせていつでもどこでも自己学習が可能な点に特長がある(eラーニングの市場規模については、1-2-3参照)。例えば、ある小中高校生向けの学習塾・予備校では、インターネットの双方向性及び動画の画像情報等を活用した通信教育用ウェブサイトを開設している。また、一部の大学等高等教育機関においても、学生が自宅、大学等自己の都合のよい場所や時間帯でインターネットを経由して講義パッケージを呼び出し、講義を受講し、あるいは、担当教員とのディスカッションを行えるオンデマンド型授業が行われる例も現れている。さらに、インターネットを経由して、自宅での受講・学習を可能とする通信制大学や大学院自体も開設されつつある。ここでは、eラーニングを導入している語学学校・専門学校の事例を紹介する。

1)世界最大のオンライン英会話レッスンを展開するイングリッシュタウン(本社東京)の例
 授業は、深夜0時から1時間おきに1日24回開かれ、生徒は事前に受けた自己診断テストに応じて自分のレベルに合った授業に参加する。一つの授業の所要時間は45分間で、月最高30回まで受講することができる。授業は講師1人に生徒が最大8人程度で行われ、パソコン画面とマイク付ヘッドホンを使って音声と文字により、講師が生徒に順番に質問していく形で展開していく。参加者のネットワーク環境によって音が途切れたりした際には、講師が文章を送信する機能により、生徒を手助けしている。世界中に講師が点在し、24時間体制で担当教師がオンライン講座を担当しているので、いつでも授業を受けられる。これにより、日本の生徒が深夜地球の裏側にいる教師に「肉声」で英語のレッスンを受けることも可能になる(図表2))。

2)我が国最大手の専門学校の一つである大原学園グループの例
 税理士試験受験者を対象とする講座で、ブロードバンド時代に対応し、従来から行っている通信衛星(CS)でのビデオ教材を転用した講義ビデオのストリーミング配信を行っている。受講生には講師が説明する映像や黒板等の板書内容が配信されるため、教室で受講しているような臨場感を感じることができる。映像は24時間オンデマンドで配信され、いつでも停止・再生ができ何度でも見られるようになっており、受講者は納得できるまで学習できる。そのほか、24時間受け付ける電子メールでの質問、よくある質問項目(FAQ)、学習スケジュール設定機能等があり、受講者の理解を助けている。また、ナローバンド利用者に対してもダウンロード機能や画面サイズやレイアウト調整により、サービスを低下させないような工夫がなされている(図表3))。

(3)転職支援サイト
 我が国における産業・雇用構造が変化する中、労働者のキャリア形成意識や企業の人事制度等の変化に伴い、転職希望者が増加しつつある。従来、求職者が求人情報を入手するための手段としては、新聞や求人誌等の求人広告を利用することが一般的であったが、近年ではインターネットを活用した「転職支援サイト」が開設され、求職者に対して利便性の高いサービスを提供している。
 転職支援サイトの利用により、求職者はインターネット上で多くの求人情報を無料で閲覧することができる。また、インターネットの特性である検索利便性や即時性を活かし、職種や勤務地等から関心の高い求人情報の検索・絞込みを行うことができるほか、最新の求人情報の入手が可能となっている。さらに、付加サービスとして、業界動向、求人動向等の転職関連情報の提供、新着求人情報のメールマガジン配信、インターネット上での適職判断サービス等を行っているサイトもある。付加サービスとして近年特に注目を集めているものとしては、ウェブサイト上での履歴書保管機能や、求職者が不特定多数の求人企業に対して履歴書等を公開するスカウトサービスが挙げられる。履歴書保管機能の利用によって、求職者は、ウェブサイト上で保管している履歴書を利用して複数の企業に応募することができる。また、スカウトサービスでは、公開された履歴書に対して関心を持った企業から連絡を受けることができるほか、公開した履歴書が企業に検索された回数を見ることによって、自分の市場価値を把握することができる。
 政府では、平成13年8月に、「しごと情報ネット」()」を開設し、民間の職業紹介会社、求人情報提供会社、ハローワーク等の参加機関が保有する求人情報を検索し、それぞれの機関にアクセスしやすくすることによって、求職者の仕事探しを支援している。また、民間でも多数の転職支援サイトが開設されている(図表4))。就職情報誌の最大手であるリクルートでは、「リクルートナビキャリア」(平成14年6月5日に「リクナビNEXT(http://next.rikunabi.com/)」に名称変更予定)を開設し、情報誌の知名度と経験を活かしながら、図表5)のようなシステムを通じて、求職者に各種サービスを提供している。なお、同サイトでは、毎週1,000件の求人情報が更新されており、そのうち約半数は新規の求人情報となっている。

 
図表1) 「空想生活」の消費者参加型商品開発プロセス
図表1) 「空想生活」の消費者参加型商品開発プロセス
 (出典)空想生活ホームページ http://www.cuusoo.comを基に作成
 
図表2) イングリッシュタウンのウェブ授業
図表2) イングリッシュタウンのウェブ授業
 (出典)イングリッシュタウンホームページ http://www.englishtown.com/master
 
図表3) 大原合格ウェブ税理士講座画面イメージ
図表3) 大原合格ウェブ税理士講座画面イメージ
 (出典)大原学園グループホームページ 
 
図表4) 民間転職支援サイトの例
図表4) 民間転職支援サイトの例 転職・求人情報/リクナビNEXT[リクルートの求人情報・転職サイト] 転職・求人情報サイトのマイナビ転職 転職応援サイト イーキャリア
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図表5) 転職支援サイトのサービス(リクルートナビキャリアの例)
図表5) 転職支援サイトのサービス(リクルートナビキャリアの例)

 

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