平成14年版 情報通信白書

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第1章 特集 IT活用型社会の胎動

1 ネットワークコンテンツの現状

−ブロードバンドの普及によりコンテンツ量は今後も増加の可能性

 第1節でみたとおり、我が国におけるインターネットの普及は引き続き堅調に推移しており、また、DSLやケーブルインターネット等のブロードバンド回線の利用は飛躍的に拡大している。今後、これらの情報通信基盤を活用しつつ、インターネット利用の高度化・多様化を実現するため、魅力あるコンテンツ流通を促進することが期待されている。

(1)インターネットコンテンツ量の推移
 インターネット上におけるコンテンツの利用動向に関するデータとして、総務省郵政研究所が平成10年度より行っている「WWWコンテンツ統計調査」が挙げられる。同調査によれば、我が国のJPドメインにおけるインターネット上のコンテンツの総データ量は平成10年8月からの3年間で6.7倍になるなど急激な増加を示している(図表1))。
 これをファイルタイプ別(HTML、画像、動画、音声ファイル等)に分けて分析してみる(図表2))。ファイル数でみると、HTMLファイルと画像ファイルが圧倒的に多く、他方、動画ファイルと音声ファイルの総ファイル数に占める構成比は全体の0.1〜0.2%となっている。この比率は平成13年8月までの3年間において大きな変化はない。しかしながら、同期間における総データ量をみると、HTMLファイルが5.5倍、画像ファイルが4.7倍の増加率であったのに対し、動画ファイルは約6.5倍、音声ファイルは約7倍の増加とHTMLファイルや画像ファイルを上回り(図表3))、平成13年8月時点における動画ファイルと音声ファイルの総データ量に占める構成比は全体の約15%となっている。また、1ファイル当たりのデータ量を算出すると、HTMLファイル(7.2KB/ファイル)や画像ファイル(14.8KB/ファイル)と比較して、動画ファイル(4,472.9KB/ファイル)や音声ファイル(556.1KB/ファイル)のデータ量は圧倒的に大きくなっており、平成13年8月までの3年間に、動画ファイルは約2.1倍、音声ファイルは約2.0倍と大きく伸びている。
 以上のことから、動画ファイル・音声ファイルにおける単位当たりのデータ量が増加することによって、高度なコンテンツが現れつつあるものの、総ファイル数に占める動画ファイル・音声ファイルの割合はおおむね横ばいにとどまっており、その利用が十分には進んでいないことがうかがえる。今後、ブロードバンドの普及進展に伴い、これらの高度なコンテンツの利用が進み、インターネットの更なる活用を図ることが期待される。

(2)メディア・ソフトの市場規模
 また、郵政研究所では「メディア・ソフトの制作および流通実態に関する調査研究」を実施し、平成12年度における我が国の各種メディア・ソフト(注1)(コンテンツ)の流通市場規模を推計している。これによれば、メディア・ソフトの流通市場は約10兆9,000億円となっており、テキストソフトの市場が48.9%と最も大きく、次いで映像系ソフト市場の41.9%となっている(図表4))。これを一次利用市場と二次利用(注2)市場に分けて、メディア別にみると、一次利用市場では最大の28.9%のシェアを占める「地上波テレビ番組」が、二次利用市場ではわずか6.5%のシェアにとどまっている。これは、テレビ番組に係る権利関係が複雑であること等に起因するものと推測されるが(1-5-5参照)、地上波テレビ番組は国民に極めて身近なメディアであり、この再利用の価値は高いものと考えられる。今後ブロードバンド普及により映像コンテンツに対するニーズが高まる中で、映像系コンテンツ、とりわけ地上波テレビ番組の流通市場の発展が期待される(詳細な市場規模については、資料1-5-1)。

(3)具体的なコンテンツビジネスの現状
 ブロードバンドの普及が急速に進展する中、動画配信や音楽配信等の一部で有料化も進められているなど、大容量コンテンツ配信ビジネスが既に立ち上がっている。

1)ネットワークゲーム
 我が国では、パソコン向けのゲームソフトが米国や韓国ほど一般的に利用されていないため、インターネット接続端末がパソコン主体である現状では、ネットワークゲームの利用は一部にとどまっている。ところが、ブロードバンドの普及により、平成13年以降、主な家庭用ゲーム機は軒並みネットワーク接続への対応を発表しており、今後の普及が期待されるところである(図表5))。
 しかし、我が国に特徴的な傾向として、携帯インターネットでのゲームコンテンツ利用が挙げられる。これは、通勤時間や待ち合わせ時間等の短時間に手軽に楽しめるものとして人気を集めており、特にJAVA対応の携帯電話端末の登場により、ダウンロードしたアプリケーションを携帯電話のメモリに蓄積することにより、通信料の負担を軽減できることなどから利用が広まってきている。携帯電話によるコンテンツ流通においては、課金システムが整備されていることに加え、コンテンツのコピーが困難であることから、コンテンツ提供者側からも高い期待が寄せられているところである。

2)映像配信
 映像配信については、ストリーミング技術を用いた「インターネット放送」と呼ばれるサービスを提供するサイトが既に存在しているが、ブロードバンドが急速に普及し始めた平成13年頃を境に、高品質のサービス提供に目途がついたことなどから、これらをビジネスとして有料で提供する事業者の参入が目立っており、映画配信、音楽/スポーツライブ中継など、様々なコンテンツが提供されている。平成13年7月には、コンサートのライブ中継がインターネット経由で行われ、我が国で過去最大規模の有料ライブ中継となった。このイベントでは、ライブ中継を視聴するためのID及びパスワードを有料で販売し、これを用いて中継サイトにアクセスするという方法がとられ、ブロードバンドユーザー向け「S席」(384Kbpsで配信)が1,600円で9,000アカウント、ナローバンドユーザー向け「A席」(56Kbpsで配信)が800円で15,000アカウントが発売され、ほぼ完売となった。なお、利用者への課金は、ISPの接続料金に上乗せする形で行われた。

3)音楽配信
 インターネットによる音楽配信ビジネスについては、MP3の普及により早くから複数の事業者が参入しており、そのうちいくつかは有料ビジネスとして軌道に乗りつつある段階である。しかし、デジタルコンテンツは複製が容易であることや、ダウンロード時間の長さや高い料金設定等の理由により大きな市場を形成するまでには至っていないのが実情である。今後、複製防止等の課題が解決し、音楽業界の本格的な参入・競争が始まれば、急激に普及する素地はできているものと考えられる。

 
図表1) インターネットコンテンツ量の推移
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図表2) ファイルタイプ別のファイル数とデータ量
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図表3) ファイルタイプ別の総データ量の推移(平成10年8月を100とした場合)
図表3) ファイルタイプ別の総データ量の推移(平成10年8月を100とした場合)
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図表4) メディア・ソフトの流通市場規模(平成12年度)
図表4) メディア・ソフトの流通市場規模(平成12年度)
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図表5) ネットワークゲームの事例
図表5) ネットワークゲームの事例



(注1) ここでは、メディア・ソフトは「各種メディアを通じて広く人々に利用されることを目的として制作・流通する情報ソフト(コンテンツ)で市場を形成しているもの」のこととする
(注2) 素材利用や三次利用等の複次利用を含む。なお、テレビ番組の一次利用とは「テレビによる放送」のことであり、二次利用とは「ビデオ化」、「映画化」など有償で他のメディアに利用されているものを指す

 

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