平成14年版 情報通信白書

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第1章 特集 IT活用型社会の胎動

5 日米欧の技術開発戦略

−各国のIT政策と技術開発動向

(1)欧米におけるIT分野の研究開発
 IT分野の研究開発については、米国や欧州等の先進国も積極的な取組を行っている。
 米国は、1990年代のクリントン・ゴア政権における一連のIT政策によって産業競争力の強化を推進してきている。1999年に「21世紀に向けた情報技術:IT2」報告書が発表され、1)長期的な視点にたった情報通信技術研究開発の強化(特にソフトウェア、機能拡張の容易な情報通信インフラ)、2)科学・工学・国家のための先進コンピューティング、3)IT革命の社会・経済・労働市場への影響に対する研究の強化が提言されている。2001年度のIT研究開発費をみると、先進コンピューティング分野に予算の50%弱を投入しており、長期的なコンピューティング環境への投資を強化している(図表1))。
 EUにおける研究開発政策は、フレームワークプログラムとして実施されており、現在は1998年に始まった第5次フレームワークプログラムが実施されている。IT関連のプログラムについては、「ユーザフレンドリーな情報社会(IST:User-friendly Information Society)」として36億ユーロが充てられている(図表2))。

(2)我が国の研究開発水準
 「我が国の研究活動の実態に関する調査報告(平成13年9月)」(文部科学省)によれば、情報・通信分野の研究者が今後同分野の研究水準でリードすると思う国・地域について、基礎研究で85%以上、応用研究で70%以上の人が米国と回答している(図表3))。
 また、総合科学技術会議資料によれば、日米の研究開発水準を比較すると、日本が米国よりも優れている技術は、移動体端末、情報家電、スーパーコンピュータ、音声合成、言語情報処理、電子・光学材料となっている(図表4))。ネットワーク分野やヒューマン・インターフェース分野においては米国に対する優位性があるが、逆にソフトウェア工学などのソフト分野は米国に比べ研究開発水準が低い状態にある。
 さらに、我が国と米国の特許数について比較すると、2001年度における全分野の特許数は米国が日本の2.0倍となっているが、インターネット関連の特許数は米国の方が圧倒的に多く、4.6倍となっている(図表5))。しかしながら、その推移をみると、全分野の特許数はほぼ横ばいであるのに対して、インターネット関連特許数は、1999年度の6.8倍から2001年度の4.6倍へと減少してきており、その格差は縮小の傾向に向かっている。

(3)今後の我が国の研究開発
 従来のインターネットの技術開発は、コンピューティングやソフトウエア技術に強い米国が先導してきたが、今後、インターネットの利用の方向性がユビキタスネットワーク化の方向にあり、ユーザー層が一層拡大していくことを考えると、我が国の強みである移動体通信、情報家電、ヒューマンインターフェース技術などの研究を一層進め、世界へ貢献していくことが有意義であると考えられる。また、ユビキタス環境を実現するために、サービスの発見及び構成技術、アクセス制御技術などについても研究開発を進め、豊かなサービスを安全に利用できる環境の実現を図る必要がある(図表6))。さらに、今後のIT環境の開発のために、長期的な技術開発が重要になる。我が国では、2010年までに、ネットワーク関連技術、高度コンピューティング関連技術、ヒューマンインターフェース技術、及びこれらの共通基盤技術の開発を進める方針である(図表7))。

 
図表1) 米国のIT政策
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図表2) EUの第5次フレームワーク研究開発プログラム
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図表3) 情報・通信分野全体において今後研究水準でリードすると思われる国・地域
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図表4) 情報通信分野の技術開発における日米比較
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図表5) 米国における日米の特許数の割合(米国/日本)
図表5) 米国における日米の特許数の割合(米国/日本)
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図表6) インターネットの高度利用を可能にするための技術課題と対応
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図表7) 我が国で2010年までに求められる情報通信分野の技術開発水準
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