平成14年版 情報通信白書

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第3章 情報通信政策の動向

(7)ITS(高度道路交通システム)

−ITS関連の情報通信システムの研究開発・標準化を推進

 ITS(高度道路交通システム:Intelligent Transport Systems)は、道路交通に関する総合的な情報通信システムであり、交通渋滞の軽減、交通事故の減少、輸送の効率化、地球環境との調和等の国民生活に身近な道路交通問題解決の切り札として考えられている。
 我が国では、平成8年7月、当時のITS関係5省庁(郵政省、警察庁、通商産業省、運輸省及び建設省)において「高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想」を策定、ITSが目標とする機能、開発・展開計画について、20年先までのビジョンを示し取り組んできたところであり、平成13年3月にIT戦略本部において決定された「e-Japan重点計画」においても、2005年までにおける方向性が示されている。
 現在、既にITSの一部のシステムは実用化されており、交通渋滞情報等をドライバーにリアルタイムで提供する「道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Informationand Communication System)」については、本格的なサービスが平成8年4月から開始されている。VICSは平成14年3月末現在、37都道府県の一般道及び全国の高速道路において提供されており、VICSユニットの出荷累計は448.9万台となっている。また、平成13年5月までに光ビーコン及び電波ビーコンが全国に整備され、平成14年度中にFM多重放送を加えたVICSサービスがおおむね全国で提供される予定である。有料道路の料金所を停車することなく無線通信を用いて通行料金の支払を可能とする「ノンストップ自動料金支払いシステム(ETC:Electronic Toll Collection System)」については、平成13年3月より一般運用が開始され、同年11月末には全国616か所の料金所にサービスが拡大された。平成14年度中には、約900か所の料金所にまでサービスが拡大される予定である。また、平成13年11月末から期間限定特別割引が実施されており、ETC車載器の普及台数は平成14年3月末現在で23万台を超えている。
 総務省では、ITSの更なる普及を目指し、関係省庁と連携しつつ、現在以下の施策に取り組んでいる。

(1)DSRCシステムの実用化の推進
 ETCに係る無線通信技術を応用して駐車場管理や物流管理、ガソリンスタンド代金支払等の様々な分野において利用可能となるDSRC(狭域通信:Dedicated ShortRange Communications)システムの実用化に向けて、平成12年10月の電気通信技術審議会答申「DSRCシステムの無線設備等における技術的条件」を踏まえ、平成13年4月に関係する改正省令を施行した(図表1))。また、同答申では、技術的条件のほかに、標準化機関による業界規格の早期策定、DSRCシステムの国際標準化への積極的な対応、地域DSRCシステムのアプリケーション開発等、DSRCシステムの早期普及に向けた今後の取組についても提言を受けている。

(2)インターネットITS実現のための情報通信技術の研究開発
 「e-Japan重点計画」において、「ITS関連情報を有機的に統合するとともに、最先端の高速無線ネットワーク環境と連携し、ITSにおける高速インターネットを実現する」ことが目標とされており、平成17(2005)年までにこれを可能とする技術開発を行うこととされている。そこで、総務省では、経済産業省と連携し、場所やアプリケーションにより複数のメディアを効率的に活用し、移動する自動車を最適にインターネットにつなぐ、インターネットITSプラットフォームの研究開発を、平成11年度より16年度まで行うこととしている(図表2))。

(3)スマートゲートウェイ技術の研究開発
 「e-Japan重点計画」では、ドライバーへの情報提供、危険警告や操作支援を行う走行支援システムの技術について、研究開発を推進し、平成15(2003)年を目途に第2東名・名神道路等での実現を目指すこととされている。そこで、総務省では、国土交通省と連携し、高速走行下においても道路(スマートウェイ)と自動車(スマートカー)の間の通信を円滑かつ確実に行うことを可能とする情報通信技術(スマートゲートウェイ)の研究開発を平成11年度より14年度まで実施することとしている。

(4)ITSの地域展開の推進
 郵政省(現総務省)では、ITSの地域展開を図るため、平成12年度に、通商産業省(現経済産業省)と共同で、「ITSスマートタウン研究会」を開催し、地域ITSシステムの早期開発等を提言した。これを踏まえ、総務省では、地域においてITSに取り組む際の環境整備を行うため、平成13年度より、新潟県、豊田市、高知県、福岡市の4地方公共団体その他関係機関等の協力を得て、地域のITS情報通信システムの相互接続性の確保等を図るためのモデルシステムの調査開発を行っている。

(5)ITS情報通信技術の国際展開の推進
 「e-Japan重点計画」においては、ITSの本格的な発展が予想される今後5年間に、我が国のITS関連産業の国際競争力強化の観点も踏まえつつ、車両の走行を支援するシステムや広域通信(DSRC)システム等を国際標準化機構(ISO)及び国際電気通信連合(ITU)に提案するなどにより各種ITS技術の国際標準化を目指すこととされている。このため、総務省においては、平成13年度より、ITS情報通信技術の国際展開に関する調査研究を行っている。

 
図表1) DSRCシステムのイメージ
図表1) DSRCシステムのイメージ

 
図表2) インターネットITS実現のための情報通信技術の研究開発(イメージ)
図表2) インターネットITS実現のための情報通信技術の研究開発(イメージ)

 

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