6 放送のデジタル化の推進 −全家庭における身近で簡便なIT基盤の形成 (1)デジタル放送の現状  デジタル放送は、アナログ放送と比較して、1)高品質な映像・音声サービスやチャンネルの多様化、2)データ放送など放送サービスの高度化やインターネット等の通信網との連携サービスの実現、3)安定した移動受信、4)話速変換等の障害者・高齢者にやさしいサービスの充実などのメリットが挙げられる。また、放送のデジタル化を契機に、通信ネットワークとの接続機能や大容量のコンテンツ蓄積機能を有するデジタル放送用受信機(サーバー型受信機)を活用した新たな放送の形態である、いわゆる「サーバー型放送」を実現することも可能となっている(3-3-2-(1)参照)。  我が国初のデジタル放送としては、平成8年6月の通信衛星(CS:CommunicationSatellite)を用いたCSデジタル放送のサービス開始に始まり、平成10年7月にはケーブルテレビでも一部の地域においてデジタル放送が開始されている。  また、平成12年12月に、放送衛星(BS:Broadcasting Satellite)によるBSデジタル放送のサービスが開始され、平成14年3月には東経110度CSデジタル放送が開始された。  国民に広く親しまれている基幹放送である地上テレビジョン放送に関しては、関東・近畿・中京の三大広域圏では平成15(2003)年末までに、その他の地域では平成18(2006)年末までにデジタル放送を開始し、平成23(2011)年にはアナログ波による放送が停止される計画になっている。地上放送のデジタル化は我が国のほぼ全世帯に普及しているテレビを家庭における簡便な高度情報通信端末とするものであり、高度情報通信ネットワーク社会のゲートウェイとしての意義を有している。また、地上デジタル音声放送については、当面、東京・大阪において、需要の把握、放送サービスの開発を目的とした実用化試験局による試験放送の実施を予定している。  ケーブルテレビについては、地上放送、BS・CS放送等全放送メディアのデジタル化が進展する中で、平成22(2010)年にはほぼすべてがフルデジタル化されていることを目標としている。また、ケーブルテレビの世帯普及率が20%を超える中で、そのデジタル化は、ケーブルテレビを経由してテレビジョン放送を視聴している受信者にとってもデジタル化のメリットを十分に享受できるようにするものとして期待される(図表1))。 (2)地上デジタル放送  我が国の地上放送のデジタル化については、現在、これを円滑に推進していくためにデジタル放送の実施主体となるNHK、民放と総務省の3者が中心となり、全国及び各地域に「地上デジタル放送推進協議会」を設置して、準備を行っているところである。  一方、諸外国の動向をみると、地上放送のデジタル化は、世界の潮流となっており、既に英国、米国等の欧米諸国のほか、アジアでもシンガポール、韓国で2001年から開始されている。また、中国においても2000年から試験放送を実施している(図表2))。  英国では、全世帯の約72%で地上デジタル放送が受信可能となっており、直接の受信世帯は2001年末で約135万世帯となっている。  また、米国では、全世帯の約75%で地上デジタル放送が受信可能となっており、デジタル受信機の出荷台数は、平成2001年末で約222万台となっている。 (3)BSデジタル放送  平成12年12月から放送サービスが開始されたBSデジタル放送は1年を経過したが、現在20の事業者により、テレビ放送が10チャンネル、ラジオ放送が23チャンネル、データ放送が9チャンネル提供されている。  BSデジタル放送では、鮮明で迫力のあるデジタルハイビジョン放送を中心として、CD並の高音質なデジタル音声放送やデータ放送による最新ニュース、天気予報、交通情報、株式情報など多種多様な情報とともに、双方向機能を活用した番組への参加やショッピングサービス等、従来のアナログ放送にはない多彩なサービスが行われている。また、1放送局による多チャンネル編成も可能であることから、デジタルハイビジョンで放送されているチャンネルを最大3つに分割して、それぞれ別の番組を標準画質で同時放送する「マルチチャンネル」や、野球中継等が延長になった場合に次に放送予定の番組と平行して放送する「臨時編成チャンネル」等、これまでにない柔軟な番組作りなどが可能となっている。  平成14年3月末時点では、BSデジタルチューナー及びBSデジタルテレビの出荷台数累計は、約114万台に達しており、これにケーブルテレビ経由の受信(約152万世帯)を加えると、約266万世帯が視聴可能となっている(図表3)、4))。今後は、関係事業者により2002FIFAワールドカップサッカー等の世界的なビッグスポーツが開催される期間に合わせて、ハイビジョンで見るスポーツの迫力を体感できる会場を全国に設けるなど様々な取組が展開される予定であり、また、受信機の価格についても着実に低廉化が進んでいることから、コンテンツの充実等とともに、一層の普及拡大が期待されるところである。 (4)CSデジタル放送  CSデジタル放送は、これまで3機の通信衛星(東経124度、128度及び144度の静止軌道上)を利用してサービスが提供されてきたが、平成14年3月からBSデジタル放送で利用しているBSと同じ東経110度の軌道上に打ち上げられたCSを利用した東経110度CSデジタル放送が開始された。本サービスは、BSデジタル放送と共用の受信機とアンテナで視聴できることから、BS・CS両デジタル放送があいまって普及が促進されるものと期待されている。  東経110度CSデジタル放送では、18の委託放送事業者によりプラット・ワンとスカイパーフェクト・コミュニケーションズのプラットフォームを利用したサービスが提供され、プラット・ワン系の7の委託放送事業者については、平成14年4月までに順次放送が開始され、スカイパーフェクト・コミュニケーションズ系の11の委託放送事業者については、同年7月から本放送が開始される予定である(3-3-2-(3)参照)。  特に注目されるサービスとしては、放送とインターネットを連携させ、ハードディスクを専用受信機に内蔵した蓄積型双方向サービスがある(図表5))。  このサービスの場合、専用受信機に搭載されているハードディスクには、専用チャンネルを使って毎日送られてくる放送を自動的に蓄積されるエリアとユーザーのニーズに合わせてBSデジタル/110度CS放送番組をビデオ感覚で記録できるユーザーエリアがあり、これらに保存されたものは好きなときに利用することができる。また、受信機には56kbpsのモデムも内蔵されており、ショッピングなどインターネットを利用した双方向サービスやメール送信等も利用可能となる。平成14年7月からサービスが開始される予定となっている。 図表1) 放送のデジタル化のスケジュール 図表2) 世界各国における地上デジタル放送の動向 図表3) BSデジタル放送受信機の出荷台数(累計) 図表4) ケーブルテレビ経由の受信世帯数 図表5) 蓄積型双方向サービスの仕組