1 情報化投資とマクロ経済 (2)情報通信資本ストックの動向と経済への影響 −情報通信資本ストックが我が国経済成長を牽引、下支え (1)情報通信資本ストックの動向  我が国における平成12年の民間情報通信資本ストック(注1)は、約44.0兆円(対前年比13.3.%増)となり、10年間で約2倍と大きく増加している。また、平成12年における民間資本ストックに占める情報通信資本ストックの割合は、4.0%(対前年比0.3ポイント増)と、平成7年からの5年間で1ポイント以上の増加がみられる。これは、平成7年以降、企業が設備投資を抑制する一方、情報化投資については積極的に取り組んでいたことにより、対民間資本ストック比が向上したものと考えられる(図表1))。  また、情報通信資本ストックの推移を日米で比較すると、情報化投資と同様、米国では情報通信資本ストックが指数関数的に伸びているのに対し、我が国では情報通信資本ストックは堅調に伸びているものの、米国と比べその伸びは低いものになっている(図表2))。 (2)情報通信資本ストックの経済への影響  既にみたように、我が国における民間部門の情報通信資本ストックは着実に増加している。これらの情報通信資本ストックの増加は、企業における情報共有を促進させるなど、効率的な経営に寄与するとともに、顧客への高付加価値なサービスの提供を実現することによって、経済成長に資するものであると考えられる。そこで、情報通信資本、一般資本(情報通信を除く資本)、労働を生産要素とする生産関数を用いて、昭和60年以降、各生産要素がどの程度経済成長の押上げに寄与しているか、いわゆる寄与度を推計(注2)したところ、結果は図表3)のとおりとなった。  まず、我が国全体の経済成長率は、昭和60年〜平成2年における我が国経済が、バブル期にあったことから4.9%と高い伸びを示していたが、バブル崩壊後である平成2年以降は、1%台前半にとどまっている。そのような中、各期間における経済成長率に対する情報通信資本等の各生産要素の寄与度についてみると、昭和60年〜平成2年における経済成長率4.9%のうち2.4%が情報通信資本によるものであり、以降、情報通信資本の寄与度は平成2〜7年における経済成長率1.4%のうち0.7%、平成7〜12年における経済成長率1.4%のうち1.1%と、経済が成長していく上で情報通信資本が大きな役割を担っていることが分かる。  これは、例えば、企業内LANの導入に伴い社内の情報共有化・効率化が進むことで、既存の生産設備や人員でより多くの生産を実現し、企業・産業における付加価値の総和である我が国全体のGDPの増加に貢献していることなどが考えられる。  また、これを経済成長率に対する情報通信資本の寄与の割合、いわゆる寄与率でみると、平成7〜12年の我が国における情報通信資本の寄与率は79.0%と、情報通信資本が同期間における経済成長を牽引、下支えしていることが分かる(図表4))。 図表1) 情報通信資本ストックの推移 図表2) 日米における情報通信資本ストックの推移の比較(平成2年の情報通信資本ストックを100として指数化) 図表3) 我が国における経済成長の要因分解 図表4) 平成7〜12年における経済成長率に対する情報通信資本の寄与率 (注1)情報通信資本ストックの推計方法については、資料1-2-4、内訳については1-2-5参照 (注2)推計方法については、資料1-2-6参照