2 情報化投資と企業行動 (1)企業における情報化投資の現状 −企業における情報化は着実に進展  我が国における企業の情報化は着実に進展しており、情報通信ネットワーク等の活用を通じた企業活動の効率化・活性化が期待されているところである。しかし、企業における情報通信ネットワーク等の活用については、単に情報化投資を拡大させるだけでなく、その効果を発揮させるに当たって、業務や組織の見直し、人材の育成等の取組が必要であるとの指摘もなされている。  そこで、本項では、パソコンの配備やシステム構築等といった企業の情報化投資の現状を具体的な投資目的ごとにみるとともに、情報化投資の効果発揮のために必要な取組の企業の実施状況や、その結果生じた情報化投資に対する効果について概観する。  企業における情報化投資は、パソコンの配備やLANの整備等、企業活動における基盤整備を目的としたものから、コスト削減を目的としたもの及び顧客サービス向上等付加価値創造を目的としたものまで、その投資対象や目的は多岐にわたっている。ここでは、まず企業における情報化投資について、利用目的に応じ、1)主に社内における情報通信インフラの基盤整備を目的とする「基盤整備型」、2)経理・人事等の基幹業務における業務効率の向上等を目的とする「コスト削減型」、3)新規市場の開拓、顧客へのサービスや顧客満足度の向上等を目的とする「付加価値創造型」の3つに分類し、情報化投資の現状についてみることとする。具体的には、「基盤整備型」として、「ハードインフラの整備」、「ソフトインフラの整備」、「コスト削減型」として、「基幹業務システム」、「経営・管理業務システム」、「付加価値創造型」として、「営業・販売支援システム」、「販売業務向けシステム」を分類した(図表1))。  以上の分類に基づき、全国の上場企業における情報化の状況をみると、「ITと企業行動に関する調査」によれば、おおむね「基盤整備型」、「コスト削減型」、「付加価値創造型」の順で取組が進められていることがうかがえる。個別にみると、「基盤整備型」では「ハードインフラの整備」(95.1%)、「ソフトインフラの整備」(90.8%)ともに90%以上の上場企業が既に取組を行っており、最も取組が進んでいる。また、「コスト削減型」では、「基幹業務向けシステム」(73.8%)が70%を上回る上場企業が取組を行っている一方、「経営・管理業務向けシステム」(40.1%)では4割程度にとどまっている。さらに、「付加価値創造型」では、「営業・販売支援システム」(36.8%)、「販売業務向けシステム」(23.2%)ともに、比較的低い割合となっている(図表2))。  次に、企業の情報化への取組のうち、既に最も整備が進んでいる「基盤整備型」について、具体的な整備状況をみることとする。「基盤整備型」の情報化はパソコン等の情報通信機器の配備やLANの整備等、企業によって多様な取組が行われているところであるが、ここでは情報通信機器の整備とネットワークの整備に分類して現状を概観する。  情報通信機器の整備状況として、上場企業における従業員1人当たりのパソコン台数をみると、従業員1人当たりのパソコン台数は、1人当たり「1.0台〜1.2台」が29.7%と最も多く、次いで「0.7台〜1.0台」が24.8%となっており、大企業ではおおむね1人に1台のパソコン配備という環境が整いつつあることが分かる(図表3))。  他方、ネットワークの整備状況について企業内通信網、企業間通信網の構築状況をみると、総務省「通信利用動向調査(企業編)」によれば、企業内通信網は既に半数以上の企業が「全社的に構築」(57.4%)しており、「部分的に構築」(28.1%)している企業を含め、全体の85%以上が何らかの取組を行っていることが分かる。また、企業間通信網では、「全社的に構築」(18.3%)している企業よりも、「部分的に構築」(22.1%)している企業の割合が高く、段階的に取組が進みつつある状況であることがうかがえる(図表4))。さらに、パソコン、携帯電話や携帯情報端末(PDA)を利用した社外からのLANやイントラネットへの接続状況についてみると、平成13年には「接続できる」企業が42.8%(対前年比16.7ポイント増)と、平成12年から大幅に増加しており、企業がモバイル通信環境の整備を急速に進めていることが分かる(図表5))。 図表1) 利用目的に応じた情報化投資の分類 図表2) 企業における情報化の状況(複数回答) 図表3) 従業員1人当たりのパソコン台数 図表4) 企業におけるネットワークの構築状況 図表5) 社外からのLAN、イントラネットへの接続状況