3 電子自治体の実現に必要な条件 (1)地方公共団体の電子化に当たって必要と思われる条件 −コスト削減に向けて地方公共団体が取組を推進  地方公共団体の電子化に当たって必要と思われる条件として、地方公共団体が回答した主なものは、「全庁的な財源の確保」(71.6%)、「専門知識を有する人材の確保」(57.7%)、「職員の情報リテラシー向上」(34.3%)となっている(図表1))。 (1)財源の確保  まず、地方公共団体の電子化に当たって必要と思われる条件として、最も多数の回答があった「全庁的な財源の確保」について、近年の地方公共団体の財政状況をみると、バブル経済崩壊後の景気低迷の長期化に伴う地方税収等の落ち込み、恒久的減税の実施、景気対策の一環としての公共事業の実施等により、財源の不足額は拡大しており、総務省の調べでは、平成14年度における財源不足額は約14兆円に達するものと見込まれている。  このような財政状況の中、地方公共団体においては、電子化による行政事務の効率化のための取組が進められている。具体的な取組についてみると、整備・構築時では、「汎用パッケージの活用」(34.0%)の割合が最も高く、「他団体との共同開発」(13.2%)、「全庁的な計画的開発」(13.1%)、「類似システムの統合開発」(11.8%)が続いている。また、運用・管理時では、「民間企業へのアウトソーシング活用」(33.4%)の割合が最も高く、「他団体とのシステムの共同利用」(13.7%)、「ASPの活用」(6.6%)等が続いている(図表2))。  地方公共団体においては、歳入の確保に努めるとともに歳出の見直し等を行うなど財政状況の改善に積極的に取り組んでいるところであるが、早期に電子自治体を実現するためには、併せて汎用システムやASPの活用、民間企業へのアウトソーシング等のコスト削減の取組を一層推進することが期待される。 (2)人材育成  次に、全庁的な財源の不足に次いで回答の多い人材の育成についてみると、特に回答の多かったIT専門家人材の育成について、地方公共団体では主に「外部講習会への職員の派遣」(58.7%)や「庁内IT講習会の実施」(33.2%)による職員の専門能力養成に努めていることが分かる(図表3))。  また、中長期的な人材育成の課題として、地方公共団体の電子化に伴い、庁内における情報の共有化が進み、必要な情報を必要な時に自由に収集・加工することが容易になるなど単純な業務が減少する反面、それらの情報を活用した政策の企画・立案等、より高度な業務の割合が高まることが予想され、仕事の変化に対応した職員の能力形成が求められるものと考えられる。そこで、地方公共団体の職員に求められる能力の変化についてみると、今後求められる能力として「文書作成能力」や「事務遂行能力」の割合が低下する一方、「プロジェクトマネジメント能力」、「課題設定・仮説形成能力」、「企画立案能力」、「情報収集能力」の割合が高まっており、地方公共団体の電子化に対応した新たな職員の能力育成プログラムの必要性が示唆されている(図表4))。 図表1) 地方公共団体の電子化に当たって必要な条件 図表2) 電子自治体の実現へ向けた地方公共団体におけるコスト削減への取組 図表3) 庁内の情報化推進部門の人材育成へ向けた地方公共団体の主な取組 図表4) 地方公共団体職員に求められる能力の変化