4 利用者本位の電子自治体の実現へ向けて (1)概況 −住民は住民記録関係事務の電子化を最優先に期待  本項では、「電子自治体の動向に関する調査」における住民・企業へのアンケート調査を基に、電子自治体に対する利用者のニーズ等に基づき、利用者本位の電子自治体の実現へ向けた今後の取組等の在り方について展望する。  まず、優先的な行政サービスの電子化の整備を期待する行政分野について住民に聞いたところ、生活と密接に関連した「医療・保健」(71.0%)、「高齢者・障害者福祉、年金」(60.2%)、また、すべての住民が何らかの関わりを持つと考えられる「住民記録関係」(60.8%)への期待が高くなっている。さらに、最も優先する分野について聞くと、「住民記録関係」(48.3%)では、その他の分野と比較して2倍以上の期待が示されており、住民にとって最優先での整備が求められている分野であることが分かる(図表1))。  他方、企業では、「雇用支援・失業対策」(68.9%)や「産業・企業活動支援」(68.5%)が優先順位の高いものとして挙げられているものの、住民と比較して行政分野間における優先順位の差異は小さなものにとどまっており、多岐の分野にわたった行政サービスの電子化の推進が望まれているものと考えられる(図表2))。  次に、電子自治体の実現によって期待される行政サービスの提供方法について行政分野別に聞いたところ、住民では、「文化財・観光・レク」、「生涯学習・芸術・スポーツ」、「都市計画・基盤・交通」において「行政情報等の電子的提供」が、「廃棄物・公害・環境」、「子育て支援・教育」、「医療・保健」、「高齢者・障害者福祉、年金」において「住民・企業との情報交流の電子化」が、「住民記録関係」において「申請・届出等手続の電子化」が重視されていることが分かる(図表3))。また、「住民・企業との情報交流の電子化」、「申請・届出等手続の電子化」を重視する行政分野の多くは、既にみた優先的な整備を期待する行政分野に該当していることから、今後これらの新しい電子化された行政サービスの提供方法について、住民が優先的な整備を求めていることがうかがえる。  他方、企業では、行政分野ごとの期待と同様、住民と比較して行政分野間における電子化された行政サービスの提供方法に関する期待の差異は小さなものにとどまっており、多岐にわたる分野において多様なサービス提供方法を選択できる総合的な行政サービスの電子化が志向されていることがうかがえる(図表4))。  以下では、「行政情報等の電子的提供」、「住民・企業との情報交流の電子化」、「申請・届出等手続の電子化」の3つの電子化された行政サービスの提供方法について、個別に検討することとする。 図表1) 優先的に行政サービスの電子化を期待する行政分野(住民) 図表2) 優先的に行政サービスの電子化を期待する行政分野(企業) 図表3) 行政分野別に期待する電子化された行政サービスの提供方法(住民) 図表4) 行政分野別に期待する電子化された行政サービスの提供方法(企業)