(3)障害者のインターネット活用に向けて −ソフトによる障害克服の進展とボランティアの活躍 (1)障害者専用ソフトの活用の進展  障害者や高齢者がインターネットを活用するに当たっては、その障害を軽減することが不可欠であるが、そのための方法としては、高齢者や障害者専用の1)パソコン等ハード関連機器の開発・実用化による方法と2)ソフトの開発・実用化による方法がある。ただし、現状では、1)の方法は一部で進められているものの、利用者が限定されているため、価格が高くなり、結果的に普及が進んでいない。むしろ、2)の方法である視覚・聴覚障害等障害者がインターネットを利用する際、パソコンは健常者が使用するのと同じ汎用パソコンを用い、障害を補うための障害者専用ソフトを活用している事例が増加している(図表1))。公共機関による障害者への行政サービスの提供でもソフトによる対応も行われている(図表2))。  兵庫県が実施した障害者向けインターネット技能講習会において、インターネット活用に当たっての障害者の要望に関するアンケート調査及びヒアリング調査を行ったが、ソフトによる支援に関する要望がより多く出された(図表3))。 (2)ボランティアの活動状況  従来より、障害者がパソコンやインターネットを活用できるように手助けするサポート活動、いわゆるパソコンボランティア活動はあったが、「インターネットに接続できない」、「キーボードやマウスの使用が困難」といった障害者の声に応えるべく、講習会の開催、家庭訪問等の活動が全国各地で活発化している。  ここでは、新たな活動として、「全国視覚障害者インターネット接続支援連絡会(asv)」、「声の花束(こえたば)」、「音声図書館」、「ないーぶネット」を以下で紹介する。 1)全国視覚障害者インターネット接続支援連絡会(asv) http://asv.jp.org/  視覚障害者の自宅を訪問し、パソコン画面上の文字及びホームページを音声化するためのソフト等をパソコンにインストールするなどの支援を実施している。また、地方公共団体等からの委託を受け、視覚障害者のためのIT講習会を行うとともに、月1回の頻度でオープンサポートという視覚障害者のための「よろず相談」も実施している。 2)声の花束(こえたば) http://www.koetaba.net/  当該インターネットサイトは、インターネットを通じて、週刊誌、小説等の活字情報やNPOの活動情報を声(音声)で届けるサイトで、(社)日本フィランソロピー協会が運営している(図表4))。毎週1.3万を超えるアクセスがある。ボランティアが録音した音声ファイルがサイト上に登録されており、利用者は無料で入手できる再生ソフトを使って、その内容を聞くことができる。  主なメニューとしては、 1)週刊誌の最新号を音訳した「こえたばマガジン」 2)NPO、行政機関などが提供する防犯、防災等の生活情報を音訳した「こえたばインフォ」 3)小説を音訳した「こえたばブック」 4)利用者が自由に意見や質問を書き込める「こえたばカフェ」 等がある。音訳に協力しているボランティアは全国約100人で、構成メンバーはアナウンサー、バスガイドから、学生・主婦までと多様な人々からなっており、発売された週刊誌を各メンバーが購入し、自宅で音訳したデータを電子メールで事務局に送信し、事務局が編集して、数日後に提供されるという仕組となっている。 3)全国紙の音声図書館サービス http://www.onseitosyokan.gr.jp/  音声図書館サービスは、視力障害者、高齢者等に対し、朝日新聞・読売新聞・産経新聞の主要記事をコンピュータで音声化し提供するサービスとして、平成12年10月に開始された。現在、同サービスは毎日無料で提供され、新聞を選択し項目をクリックすると記事が自動的に読み上げられる。読み上げソフトは音声図書館が新聞専用として独自に開発した「マスコミ用語辞書」等を使用している。また、全国紙・地方紙・自治体・官庁等へのリンクも可能である。また、視力障害者や高齢者のみでなく、日本語を読むことができないが、音声では理解することができる外国人の利用者も増加しており、海外からのヒット数は月に1万数千件あり、アクセスはのべで30か国を超えている。 4)ないーぶネット(全国点字図書館ネットワークシステム) http://www.naiiv.gr.jp/  視覚障害者に対して点字図書等の情報提供サービスを行う視覚障害者情報ネットワークであり、全国の点字図書館などで構成される「全国視覚障害者情報提供施設協会」が運営している。当該ネットワークには、視覚障害者への情報提供サービスを行っている全国の点字図書館、ボランティア団体、公共図書館、大学図書館など約150の施設や団体が加盟しているが、視覚障害者個人も加入することもでき、現在、約1,800人の個人会員も利用している。  当該ネットワークの特徴は、音声による説明があるホームページから、膨大な点字・録音図書情報の検索サービスや点字データをダウンロードでき、様々な情報が得られることであり、28万件に及ぶ点字・録音図書の全国最大の書誌データベースとして活用されている。 図表1) 障害者のインターネット利用のためのソフト等 図表2) 岡山市役所 市民課・家庭児童課・障害福祉課のホームページで導入されている手話アニメーションソフト 図表3) 障害者のインターネット活用に当たっての要望 図表4) 声の花束(こえたば)の概要