1 ネットワークサービスの変化と技術開発の方向性 −具体化するユビキタスネットワーク社会  インターネット利用者が急激に増加している現在、インターネットの利用環境も質的に変化してきており、ユビキタスネットワーク社会(注)の実現に向けた新たなサービス・技術が実用化されつつある。この背景には、1)インターネットが職場や日常生活に深く浸透し必要不可欠なものとなってきたこと、2)「誰でも、時や場所を選ばず」利用したいというニーズが高まってきたこと、3)コンピュータの性能や記憶装置の容量、通信帯域等の価格性能比が飛躍的に向上していること、4) 1)〜3)と呼応して情報通信関連企業のビジネスモデルに変化が現れたこと、等が挙げられる。  インターネット利用環境の変化は、通信ネットワーク環境の高速化・多様化、インターネット接続端末の多様化、データやアクセス権管理の高度化等に見ることができる(図表1))。通信ネットワーク環境については、ブロードバンドの普及により、高速・超高速な常時接続環境が普及してきているが、今後はいわゆる「ホットスポット」における無線アクセスサービスの普及拡大や、あらゆる「モノ」をネットワーク化する非接触型ICカードの応用等シームレスな通信ネットワーク環境が整備されていくものと期待されている(1-7-2参照)。また、通信端末環境に関しては、現在主流であるパソコンや携帯電話端末といった情報通信機器のみではなく、これまで通信ネットワークとは独立した機能を有すると考えられていたテレビや電話、家電、車等のネットワーク化についても実用化が進んできており、インターネットを利用する端末にも変化が起こり始めている(1-7-3参照)。さらに、これらの動向を受け、情報通信関連企業においても新たなサービスの提供が計画されているところであり、ネットワーク上にアウトソーシングする形でデータを管理するサービス(データセンタ)が拡大しつつあり、クライアント・サーバー型のデータ管理ではなく個々の端末においてデータを管理・転送するもの(PtoP)、さらに様々なサーバーに格納されたデータやサービスを適宜ネットワーク上で参照するもの(ウェブサービス)等といったデータ管理が実現されつつある(1-7-4参照)。  このようなインターネット利用環境の変化により実現が期待されている「いつでも、どこでも」活用が可能なネットワークサービス(ユビキタスネットワークサービス)の実現について、個人利用者及び企業利用者に対して、どのような利用シーンを最も期待しているかを尋ねた(図表2))。  この結果によると、個人利用者の場合、自宅等の家電を外出時等どこからでも操作できることへの期待が最も高く、ホットスポットにおける無線アクセスサービスやユーザー間のコミュニケーションなどに対するニーズがこれに続いている。また、企業においては、営業、保守管理、ミーティング等様々な企業活動のシーンにおいて利用したいニーズが高く、ネットワーク範囲を拡大することへの期待は高い。  そこで、本節においては、このような利用者の期待を実現化する技術開発と具体的なサービスの動向について、概観することとする。 図表1) インターネット利用環境の変化 図表2) ユビキタスネットワークに期待する利用形態 (注)ユビキタスとは「いたるところに偏在する」という意味で、ユビキタスネットワークとは「いつでも、どこでも、誰でもアクセスが可能」なネットワーク環境のことを指す