2 ネットワーク社会に対応した通信サービス・技術 −ユビキタスネットワーク環境の実現に向けて (1)ホットスポットにおける無線アクセスサービス  従来、個人のインターネット利用者がインターネットへ接続する回線としては、アナログ回線やISDN回線が主流であったが、近年急激に料金の低廉化が進んだブロードバンド回線の利用者が急増していることは、第1節においてみてきたところである(1-1-3参照)。現在さらに、無線LAN技術やBluetoothなどの無線通信技術(通信プロトコル)を搭載した各種端末の開発・販売が開始されており、これらを応用した無線アクセスシステムの導入により、「誰でも、いつでも、どこでも、どんな端末でも」利用できるユビキタスネットワーク環境が実現する兆しをみせている。  現在、無線通信技術を用いユビキタスネットワーク環境を実現するものとして注目されているサービスとして、ホテル・レストラン等の店舗や、空港・駅などの公共空間に無線LAN技術やBluetooth等に対応した無線機器を設置し、高速インターネット接続を提供するサービスがある。このサービスを利用した場合、このような無線機器を設置した空間(いわゆる「ホットスポット」)に、無線LAN技術等に対応したパソコンや携帯情報端末(PDA)を持ち込むだけで、最大で数十Mbpsの高速な通信を行うことが可能となる(図表1))。無線LAN技術等の電波が届く範囲は数十〜数百メートル程度であるが、このようなホットスポットが街中に多数設置されれば、街中のどこでもユビキタスネットワーク環境が実現されるものと期待されている。  このような無線アクセスサービスは既に一部で商用サービスが開始されており、ユビキタスネットワーク環境の実現に向けて、今後、ホットスポットの増加が期待されるとともに、無線LANカードを内蔵した情報端末の普及、課金システムやビジネスモデルの確立、シームレスなアクセス権管理技術の開発等が求められている(図表2))。 (2)非接触型ICカードの応用  非接触型ICカードなどに利用されるICチップは、近年技術革新が進み、急激に小型化されてきている。そこで、非接触型ICカードを応用してあらゆる「モノ」にIDタグ(注)を添付し、ここから情報を取得・識別することで、「モノ」と関連付けられたネットサービスを提供する方法等が検討されている。これにより、1)製品に付けられたIDタグの情報を読み取ることでその製品の情報の収集や電子商取引が実現、2)広告物などにつけられたIDタグの情報を読み取ることで、より詳しい情報や音楽・映像などのコンテンツを楽しむことが可能、など全く新しいサービスが可能になる(図表3))。  このように、今後は従来の情報通信機器に限らず、あらゆる「モノ」がネットワークにつながることで、様々な生活場面において無意識にネットワークと接する社会が実現するものと考えられる。 図表1) ホットスポットにおける無線アクセスサービスの実現イメージ 図表2) ホットスポットにおける無線アクセスサービスの主な実用化への動き 図表3) あらゆるモノ(製品)にIDタグを添付することによるサービス例 (注)非接触型ICカードに利用されるICチップを内蔵したタグ。この中に個別の識別情報等を格納しておくことで、電波を利用し、接触することなく近接した距離において格納されたデータを読み書きすることが可能となるため、例えば、空港内での航空手荷物の自動仕分けシステムなどへの応用が検討されている