4 データを分散的にネットワーク管理する新サービスの開発 −人やサービスのID管理と新たなマーケティング機会の創造  ユビキタスネットワークが真価を発揮するためには、いつ、いかなる場所においても、必要とするデータに即座にアクセスできることが必要である。現在、企業利用者等においては、インターネット上でデータの管理を行うデータセンタの利用が増加しつつあり、また、定額で常時接続可能なブロードバンドの普及に伴い、個人利用者にとっても自宅のパソコン等から必要なデータを適宜呼び出すことが可能となってきている。  最近では、一元的に管理されているネットワーク上の個人情報を、各社がそれぞれ提供しているインターネット上でのサービスと連携することで、ユーザーが使いやすい高度なサービスを提供するウェブサービスが注目されてきている。ウェブサービスとは、インターネットを使ったアプリケーション連携技術の一つで、あるウェブアプリケーションから、他のウェブサイト上のアプリケーションを自動的に呼び出して利用することを可能とするものである(図表1))。現在、このようなアプリケーション間の連携を行う通信プロトコルであるSOAPや、サービスを公開するための登録・記述技術(UDDI)、ウェブサービスを記述する言語であるWSDLなどが開発されており、これらのウェブサービスが一部で実用化も進められている。  これにより、例えばBtoCの電子商取引を行うサイトで、決済サービスや認証サービス、物流サービス等のウェブアプリケーションの連携が容易に行えるようになり、購入者は、クレジットカード番号や個人認証ID、住所等をその都度入力する手間をかけずに発注が可能となり、同時に、発注の度に個人情報を入力する必要がなくなることから、第三者に情報を盗み見される危険性を回避できる。このようにウェブ上で個人情報を一元的に管理するサービスは、既に一部で実用化もなされてきている(図表2))。このように、ユビキタス環境では多様なサービスを多様な端末にシームレスに提供することを可能とするため、ユーザーの個人情報とサービスの両方をネットワーク側で管理することが期待されており、さらに一元管理される個人情報と、多様なサービスを切り離すことで、ネットワークサービスは新たな局面を迎えている。  しかし、ネットワーク上に個人情報を登録するためには、高い安全性が確保されなくてはならない。このようなID管理型サービスに関し、個人インターネット利用者に対して、そのサービス要件を尋ねたところ、プライバシー保護とネットワーク料金の安さとともに、半数以上の人が情報セキュリティの確保を挙げており、安全性については、このようなサービスの普及に向けた今後の課題となると考えられる(図表3))。 図表1) ウェブサービスの概要 図表2) ユーザ情報管理型サービスの主な事例 図表3) インターネット利用者がID管理型サービスに必要と考えるサービス要件