第7節 海外の動向 1 米国 −IT不況からの復調の兆しとブロードバンド時代における政策の推進 (1)IT市場  米国では、IT不況の影響を受け、通信事業者を含むIT関連企業のリストラや倒産等、中小企業を中心とした淘汰が進み、基本ビジネスへの回帰、一部優良企業、大企業への集中化が進展していると言われている。他方、IT不況については、2001年に底を打ち、徐々に復調の兆しがみえつつあるとの見方もある。2002年2月に商務省が発表した「Digital Economy 2002」によると、2001年の景気後退期においても、米国の生産性上昇率は1995年〜2000年平均と同程度であることから、ニューエコノミーは打撃を受けているものの存続していると指摘しており、景気後退局面においても米国産業界がIT投資を継続し、導入されたIT資本の基盤をより生産的にするために人的技能とITサービスを結集することによって、より力強い経済の持続的な基盤を創出し続けてきたと結論付けている。  また、電気通信市場について、2002年1月に発表された米国連邦通信委員会(FCC)報告書をみると、2000年の電気通信市場は2,928億ドル(約36兆円)となっている。内訳についてみると、地域通信市場が1,212億ドル(約15兆円)、長距離通信市場が1,096億ドル(約14兆円)、移動体通信市場が620億ドル(約8兆円)となっている。  地域通信市場では、規模のメリットに支えられたベル系地域電話会社の独占的状態が継続しており、新規通信事業者は一部を除いて不振から脱却しておらず、2002年2月に発表された地域電話市場における競争に関するFCC報告書によると、エンドユーザーへの提供アクセス回線総数に占める競争事業者(CLECs)のシェアは2001年6月末現在で9%にとどまっている。また、事例は少ないものの、ベル系地域電話会社による営業区域内(LATA間)の長距離通信市場への参入が行われつつある。  移動通信市場では、2001年7月に発表されたFCCの第6次報告書によると、2000年末において、携帯電話の加入数が1億950万人、普及率が約39%となっている。  インターネット市場では、2002年2月に発表された商務省の報告書によると、インターネット利用者数は毎月200万人ずつ増加しており、2001年9月現在で、人口の約54%に当たる1億4,300万人に達している。また、ブローバンド化の進展については、一般家庭に広く普及していたケーブル(CATV)網が先行しており、DSLが追いかける形となっている。回線敷設数は、2002年2月に発表された高速インターネットサービスへのアクセスに関するFCCの報告書によると、2001年6月末現在、高速ケーブルモデムサービスが518.4万回線、DSLでは269.4万回線となっている。そのほか、インターネット関連分野では、コンテンツ、コンテンツ配信、アクセス方式、ソフトウェア、端末等の支援ツールの多様化により、メディア・業界プレイヤーの多層化、競争が進展するとともに、通信、放送、エレクトロニクス、コンテンツ、SI等の関連業界の提携、再編、融合も進んでいる。 (2)IT政策  IT関連分野における主な国家プロジェクトとしては、次世代超高速インターネット・インフラの研究開発(IT2,Information Technology for the 21st Century)、電子政府の構築(E Government Project)、人材育成(人材投資法による21世紀人材委員会による戦略的提言)、国家、公安のセキュリティ強化(大統領命令「Infrastructure Protectionin the Information Age」に基づくサイバー・セキュリティ委員会の設置)等があり、国家的な観点からその推進に取り組んでいる。  また、2001年1月に就任したFCCのパウエル委員長は、2001年10月の記者会見において、ブロードバンド政策、1996年通信法に基づく競争政策、周波数分配政策、メディア規制の基盤の見直し、国家通信基盤の5分野を取り上げた。また、FCC自体の組織改革も進めている。このうち、ブロードバンド政策について、FCCでは、ブロードバンドの成長と投資への適切なインセンティブが生まれることを確保すること及びブロードバンドサービスのより活発な展開を促進することを目指して、種々の政策検討を行っている。