(3)インターネットガバナンス −IPアドレスやドメイン名の適切な管理  世界中の人々がインターネットを安心して利用できるためには、インターネットを利用する上で必要不可欠となっているIPアドレスやドメイン名等の適切な管理が極めて重要であり、現在、民間の国際非営利組織であるICANN(Internet Corporationfor Assigned Namesand Numbers)において、これらインターネット資源の適切な管理が図られているところである。このようにインターネットを安定的に運用するための体制を整備する活動をインターネットガバナンスという。  ICANNは最高意思決定機関である理事会を頂点にして、IPアドレス、ドメイン名及びプロトコルについて検討するサポーティング組織、3つの諮問委員会、各種検討委員会及び一般会員(At-Large)から構成されており(図表1))、技術者、ビジネス関係者及び一般会員をはじめとするインターネット利用者等によるグローバルなコンセンサスに基づき活動している。また、3つの諮問委員会のうち各国政府及び国際機関の代表者から構成される政府諮問委員会には、総務省が我が国唯一の正式登録メンバーとして参加し、我が国のインターネット利用者の意志を国際的な議論に反映させつつ、アジア・太平洋地区をはじめとする国際的な協力体制の確立に取り組んでいる。 (1)IPアドレスの適切な管理  現在、インターネットで利用されているIPv4(Internet Protocol version4)は、232個(約43億個)のIPアドレスを付与することが可能であるが、世界的なインターネットの普及や常時接続によるインターネット利用の増加(図表2))等に伴い、IPアドレスが近い将来に不足するのではないかという予測も発表されているところである。IPv6(Internet Protocol version6)は、このIPv4アドレス空間の問題を解決しつつ、セキュリティやQoS(Qualityof Service)等の機能が付加されている。我が国では、平成13年3月に発表された「e-Japan重点計画」において、IPv6を備えたインターネット網への移行の必要性が指摘されており、現在、IPv6対応機器の開発やIPv6アドレス割当ポリシーの策定等、産学官によるIPv6への移行に向けた技術開発や制度整備が積極的に進められている。  総務省においては、電気通信基盤充実臨時措置法に基づき、税制優遇措置、無利子・低利融資の支援策を平成14年度から導入し、IPv6対応ネットワークへの移行を促すとともに、「21世紀におけるインターネット政策の在り方」(平成13年3月諮問)の審議を行っている情報通信審議会において、IPv6への移行に向けたロードマップの検討を行うなど、IPv6普及促進に向けた取組を実施している。さらに、ICANN政府諮問委員会においても、ICANNが早急にIPv6への移行への対応を進めていくことの必要性を確認しており、IPv6への移行に向け、国際的に連携した取組が図られている。  総務省としても、これら国内や海外のIPv6に関する議論に積極的に参加しつつ、IPv6への安定的かつ速やかな移行に向けた更なる取組を行っているところであるが、引き続き高度情報通信ネットワーク社会の構築に積極的に貢献していくことが重要であると考えている。 (2)ドメイン名の適切な管理  ドメイン名は、数字の羅列であるIPアドレスを分かりやすい文字列に置き換えた、いわば「インターネット上の住所」であり、IPアドレスとともにインターネット基盤を支える重要な資源として国際的な管理が図られている。  ドメイン名は、「.com」や「.net」のような国の区別なく世界中で自由に取得可能な一般ドメイン名(gTLD:generic Top Level Domain Name)と、「.jp」のような国別ドメイン名(ccTLD:country-code Top Level Domain)の大きく2種類に分けることができる。一般ドメイン名は米国VGRS社をはじめとする登録管理組織、またJPドメイン名は日本レジストリサービス(JPRS)社によって管理されており、ともにISP等の登録事業者を通じて取得することができる。JPドメイン名については、これまで(社)日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が一元的に登録管理業務を行ってきたが、近年のドメイン名を巡る競争や登録件数の急増(図表3))等に柔軟に対応するため、2002年4月にJPRS社に移管している。この業務移管に先立ち、JPRS社は同年2月にICANNとの間で「ccTLDスポンサ契約」を締結しており(オーストラリアに続いて世界で2番目)、この契約により、JPドメイン名におけるICANN、JPNIC、JPRS、日本国政府の役割が明確化されるなど、公共性を有するJPドメイン名の適切かつ安定的な管理に向けた取組が進められている。  また、日本語をはじめとする多言語ドメイン名の安定的な導入、ドメイン名における地理的名称(国名等)の保護等、我が国のインターネット利用者にとって分かりやすく使いやすいドメイン名の利用環境整備において、国際的な議論への反映が極めて重要であり、総務省としても、ICANN政府諮問委員会等を通じて積極的に働きかけていくことが必要不可欠であると考えている。 (3)国際的なインターネットの安定性の確保  平成13年9月に発生した米国同時多発テロを受けて、国際的な広がりを持つインターネットの安定性の確保は極めて重要な課題となっている。平成13年11月に急遽開催されたICANNセキュリティ特別会合では、小坂総務副大臣(当時)が各国政府を代表し、社会的・経済的基盤に成長したインターネットにおける安定性確保の重要性について基調講演を行った。総務省としても、ルートネームサーバーをはじめとするインターネット基盤が安定的に機能するよう(図表4))、ICANN等の国際的なインターネットの運営体制を支援しているが、引き続きこれらと連携し、必要な措置を講じていくことが重要であると考えている。 図表1) ICANNの構成 図表2) 我が国のIPv4アドレスの利用状況と将来予測 図表3) ドメイン名の登録件数の推移 図表4) ルートネームサーバーの分散